15.内なる心はそう思う、まるで親の言うこと聞きなさいねみたいな感じで
「ジョーさん、初依頼、依頼達成おめでとうございます。お疲れ様でした。マロンちゃんを探すのは大変だったでしょうけど、早かったですね」
「ありがとうございます。そうですね。時間かかるかなと思っていましたけど、なんとか。聞き込みして走り回りましたよ。えっと、マロンちゃんってひょっとして依頼される常習者だったりします?」
レイアの大変だったでしょうの言い方と表情には実感こもっているように見えてしまい、常連さんなのかなと思ってしまった。
「ええ、実はそうなんです。何回かプチ家出をするようです。そのたびに依頼されますので、受ける冒険者は完遂させるのですが、疲労困憊といった感じで。だから驚きました。早いご帰還に。だいぶかかるだろうと思っていましたから。ナノスさんは探しものは得意みたいですね。」
「ありがとうございますと言いたいところですが、先人のおかげですね。カイさんに前回までいたところを教えていただいて、そこにいたんですよ。こういうのは根気と忍耐は必要ですよね」
しみじみとここではない遠い場所であった出来事に思いふけるナノス。
「そうでしたか。なかなかに苦労されていらっしゃるようですね。そのような言葉は久しく聞いていませんでした。『自慢するばかりが能ではない、必ず何かの助けがあって今のわたしが生きている』自慢は誰でもできる。だが、誰かをリスペクトするのは、感謝の心がなければそうそう出てこないと、そう言っていた人がいましたけど。ようやく理解できましたよ。ナノスさんは素晴らしいですね」
含蓄ある言葉だ。言ったのはどういう人だろうか?きっと人生経験豊富なお人だろう。
しかし、思うにこのような含蓄ある言葉を聞いたとしても、聴く耳を持ち伝えたい気持ちに気づいて受け入れる純粋な心がなければ理解できないからレイアは素晴らしい心の持ち主だ。
それに、たとえ直近で理解できなかったとしても、焦る必要は全くない。理解できる時は必ず来る。他を理解しようとする心持ちであれば。
「ありがとうございます。うれしいですね、そう言ってもらえるのは。」
ナノスは笑顔でそう言った。
「んんっ、こちらが成功報酬です。お確かめ下さい。」
心なしかレイアの顔に照れが出ている気がする。
お金を受け取った。初めての成功報酬だ。ナノスにうれしさが込み上げた。
「他に何か気になることでもありますか」
預け入れできるか聞いたら、できると返ってきた。仕切り板が立っている場所に移動してじゃらじゃらとお金を受け渡す。トレイに山盛り。この大半が例の賭けで得たお金。銭貨が多かったが、無事預け入れできた。結構な数字を目にした。お金を預けたら少し肩の荷が降りた。そろそろ使い道を決めなければならないと思考がよぎった。
他に用もないので感謝して席を立つ。
(ふむ、どれにするか)
ナノスは掲示板を見てなにやら悩んでいる様子。
「ふむふむ、なるほど」
いくつかきな臭いクエストがあるぞ。薬品実験の協力だったり魔物の飼育とかあったり。藪をつついてヘビを出したくはないのでここは華麗にスルーだ。
いろんな依頼があるな。手伝いという形で依頼されているものが多い。ランクがランクだからかな。
その中でも自己主張しているクエストがある。
新人警邏
新人警邏とでかでかとこれ見よがしに赤インクで書いてある。新人冒険者の人…ナノスに向けた依頼ではないだろうか。
…帰ろう。明日また来てまだあったら受けよう。明日来てあったら、それは間違いなくナノスに向けてあるクエストだろうから。
そう決めたナノスはその場を後にした。
◇
複数人の人影が、過去有名墓所の今や使われていない古びた教会内部にいた。
広く高い室内は月光が降り注ぎ、ほこりが漂っている。奥に行くにつれて、辺りは暗くロウソクの灯火があるだけ。横長い椅子には人影がぽつんぽつんと、思い思いの場所に座っていた。
近々、世界の各所で、とあることを起こそうとする集団が、最終決定を今か今かと待っていた。今や事前に計画していたものの最終段階。この時を最後に、計画が終わるまでしばらくこうして集まることはなくなる。時間が来るまで思い思いに時間まで待っていた、、、。
そろそろかというところに、建物の中に一風の風が吹いた。
一際大きいスタンデントガラス、夫婦が愛を捧ぐ空間に一つの影が増えた。
「皆そろったな」
「ああ」「またくたびれた」「あはっ」
「…」「おめぇ待ちだよ」「うふふ」
「各々やることは事前に伝えたとおりだ。各地に散らばり、ことを起こせ。騒ぎ立てろ。」
その言葉にさまざまな反応で答えていく。返事をするもの、腕を鳴らすもの、ケタケタ笑うもの、沈黙するもの、感情をたかぶらせるもの。
「これも次の段階へ行くための実験だ。好きなようにやれ」
そういって、一人暗闇へと消えていった。一人また一人とかき消える。
「お前は言ったな。平和は守らなければならないと。この悪人が多くなった世界を見てそう言い切るのだろう…見せてもらおう。防げよ」
そう言って、最後に来た人影も消えていった。
◇
次の日の朝。
ナノスは、宿屋"小鳥のやすらぎ亭"の一週間の宿泊延長することを女将のローザに伝えたあと朝食を食べて宿を出た。
これから冒険者ギルドに行くのだが、その道のりでやることを決める。
やることというのは人生設計についてだ。どういう生活をしていきたいかを決める。これからは脇目も降らずそれ一点に集中して望む。
やるにしても時間がかかったり、人生設計からそれてしまったりすると、心と身体のバランスがだんだんと崩れていってしまう。それに、覚悟があるものもあるだろうから。もう必要ではないものを手放すとか。だから、優先順位を決めなければならない。
人生目的は初日に言った通り生きること、働くこと、異世界謳歌だ。
忘れられない衝動がそこにあったんだ。生きる上で喜びが必要であろう。うん。
やることについて考えるといくつか出てくる。
<やることリスト>
能力把握。戦闘能力強化、技、魔法について造詣を深める
スキル、氣を知る
生活に必要な知識、常識を学ぶ
戦闘技術を実戦して学ぶ
冒険者知識、旅について実践して学ぶ
既存する媒体、本で魔物知識をつける
人とふれあう、相互理解に努める、他者を受け入れる!
心に従う!
魂の声に耳を傾ける!
突き動かされる衝動をただ感じる!
自分自身を信じる!
働く、衣食住を手に入れる
ファンタジーと出会う!!
!は熱量を表しているというか今ある関心ごととして思い浮かんだ。必要なことももちろん取り組む。なぜなら必要だから。
先日見た、あの戦闘のようなことができるだろうか。一朝一夕にはできないだろう。あそこに至るまで並々ならぬ経験を積んできたのは疑いようもない。
身に合わぬ強弓、世界の神秘を感じさせる不可思議な塊。
見せる剣舞ではなく、実践で磨かれた荒がなく勇猛な武。
弓と魔法を使う者。武とスキルを使う者。
二者に戦い方の違いはあれど、戦いと無縁の生活を送ってきた者にとって、ただただ強いと実感した者たちだ。
ナノスもロッツ・ドラグーンやドランの強さを目指す者。
魔物についても人の営みについても生きていく上で知り・学び・感じ・そして変わることを積み重ねる以上に勝るものはないんだから。
この世界において戦闘経験を積んでいないのは致命的だろう。戦闘を全くせずに生きていく選択肢があるのは知っている。だが、少なからず戦闘経験をした方が良いと感じたところにより力をつける。けして、他を排除するためではなくより良い選択肢を見つけるために。
旅をしたいのはナノスなのだ。護衛を雇うにも、どっしり構える覚悟?命を預ける覚悟?そういう強さはいるだろう。寛容とでもいうのか。
命のやり取りなら必要な覚悟、そんなところはない。必要なかったから。平和だった。それこそケンカをしてぶ○ころなんて思うことはなかった。
経験値が欲しいよな。欲しくば与えよ、さすれば与えられん。道理。
誇れるものは他人の仕事もやれる寛容な?忍耐力包容力に気配り、嘘つかない誠実であることそんなところだ。他には、スキル?まほう?なんのことかわからないよ状態だからここはお手上げ、教えを受ける必要がある。先日見た戦闘うんぬんかんぬん。
やはり世界を知らない点。目下重要課題よな。
氣についてはわからん。が、神道か、自然森羅万象のことか日月地星宇宙か。目に見えない何か。今はまだ見えない何かが見えることなのかどこうかすら定かでない。そんな特技なんてあったっけ?みたいな感じなのだ。
ただ、皆地球人というか日本人はパッシブ、任意で使っているのではないのか。今さら地球人と比べても意味ないけれど、創造神ラオ様から頂いた手紙によれば瞑想すれば良いと言っていたから、とりあえず保留。というか、瞑想してからだな。
人の営み関連は、人と触れ合いという名のキャッキャッウフフしたりヒソヒソして、書籍で知識をつけられるならばつけるって感じだな。このところは慣れの部分が多いが、外国に住んでみた的な感じだろう。
事実はもっとひどい。言葉は通じる、けど思いっきり理が異なる世界です。しかし、どこに行ったとしても真理は変わらないはず。私平和スキーの、世界を愛してるーの!
今さらだが、言葉が通じるのは感謝しかあり得んな。ありがとうございます!創造神ラオ様。楽しく今生を生きていきますよ!
ファンタジーに関して言えば、心がうずうずしている。思うだけで幸せ。生き続ければ会える、以上。
とにかく戦う心得みたいなものが手に入ると良いな。どっかに落ちてないかな。秘伝の書みたいな感じで、ないか。念のためあたりを見渡したがない。
レイアさんになんか戦う心得みたいなものが手に入るクエストとかありませんかって聞いてみるか。あったら面白い。
そんなこんなと考え歩き、冒険者ギルドに到着。
ウエスタン扉を開けると、受付から離れているのだが視線が刺さる。
…心当たりないな。
へたな口笛をしてクエストボードへ。
人もまばらなGランククエストボード前。
そこへ行くと、子どもが三人で見合っていた。Gランククエストで小遣い稼ぎをしているのか。ふーん。ふんふんふんと、子どもたちの話し合いを大きい耳をして聞く。周囲に聞こえる声で話をしている子たちだ。隣のクエストボードにいる人だって微笑ましいような感じで見ている。どうやら家の仕事をほっぽり出してきたらしい。
(俺も昔やったなぁ。しこたま怒られたけども)
この今のことに集中しすぎて先が見えない感じ。少年らの行く末がわかる。わかるぞ。
こうやって叱られて先読みできる力を養っていくのか。懐かしむかのように遠い目をするナノス。
張り出されているクエストを見るに昨日からほぼ変わっていない。
いや、貼り位置が一つ変わっている。
この新人警邏クエスト。
角に張り出されていたこのクエストは、今やナノスのちょうど目線の高さまで張り直されており、大変読みやすい。
「昨日もあったよな、このクエスト」
「あーそれ、昨日の朝からあったよな。なんで受けないんだろうな」「こんなおいしい依頼」「依頼者がギルドで、仕事内容が王都の区画警邏。その際お金もらえて」「ノウハウ教えてって言っても教えてくれない大人が多いのに」
「「「良いなあ〜」」」
どうした少年たち、辛辣すぎやしないか。慎重だと言い給えよ。ちょっと変わるのに遅いだけだろう?
(俺がそう感じただけだけど)
実際、お兄さんもそう思っていたところだよ、ハハ。子どもたちのたくましさを耳にしながら、考え込む。
(時機が良すぎやしないか?この依頼…)
見計らったかのような、すでに昨日のうちにあった依頼。こうなるのを予期していたとでもいうのか。しなければならないと感じる…変わるために。世界を謳歌すると決めたのだから変わることに何を戸惑い悩むか。何も悩むことはない。すでに変わると決めているのだから。
であるならば乗るしかない…このビッグウェーブに。波に乗るか、降りるかは自分の心の持ちようにかかっているぞってなもんで。
受付に持って行くと決まれば少年たちが去って、張り出される依頼書をそっと取る。
いいじゃないか慎重に見定めてもと恥じらいを持ちつつも、でもでもと理屈の悪魔が邪魔してくる。
無料でお仕事を教えていただき、一週間区画警邏の仕事をしつつそれなりのお金がもらえる。社会人として善悪ごちゃ混ぜのごった煮の社会に、もまれた者からすれば怪しすぎる。身を切る必要がなく成長できるなんて…
(んなわけないだろ)
しまいには"この先な物語を進めるにはこの依頼を受けなければ進めません"って出てくるゲームシナリオだなどと考えるな。ゲームと現実をごっちゃにするなと言いたい。本当に理屈どうたらとうるさい。
考えてもよくわからないものにとらわれると凝り固まって身動き取れなくなるし、よくない結果にしかならない。それは固定観念だ。過去のシミ、過去に縛られるな。今の自分が過去を未来を決めることで現状が変わることができると信じるんだ。
やって失敗だったら知れてよかったねにしよう。そうしよう。どうせ死にはしない。経験になって生きる。次もあるさ。さあ歩け。
「ありますよ。この依頼がそうです。やっと受けられますか、ナノスさん」
レイアさんになんか戦う心得みたいなものが手に入る依頼とかありませんかって聞いてみたけども、あったよ。それっぽいの。
それにしても観念しましたかというような音色を聴いた気がする。
「ずいぶんと警戒されていましたね。良いと思いますよ。しっかり審神者することは。で、この依頼ですが、身元確かな初心者さんのための教練と言いますか。右も左もわからない方がいらっしゃいます。
冒険や旅には危険がつきものです。避けては通れない危険や事前に防ぐにはどうすれば良いか、または安全を確保できるようになっていただきたいのです。それらをギルドが指名した先輩冒険者が冒険者のいろはを教えてくれるというのがこの依頼の趣旨になります。
冒険者同士の相性もありますが、ジョーさんがよろしければこのまま控えている先輩冒険者にお会いしてさっそくやってもらっても構いません」
至れり尽くせりで大変ありがたい。こんなことされたことは今まであっただろうか。これまでいかに地獄的生き方だったか、生き地獄とはあのことだったんだなとナノスは思う。
先輩冒険者に教わるいろはには冒険者の息吹とも言える、そう言った知恵を学びながらお仕事しましょうと言った感じ。
(信じきれなくてごめんなさい。三人組の子どもがギルドぐるみで嵌めようとしてきたとは思ってごめんなさい。紹介状持ちにそんなことしないよな。ありがたいなあ、乗っかろう。頑張ろう。こんな親身になってくれるのだから信じよう)
「しないというのであれば、この依頼を破棄してもらってもかまいません。破棄したとしてもギルド評価に影響しません。以降、この依頼が出ることはありません。どうしますか?」
(そうか、ギルド評価に影響しないのか。考えが及ばなかった。この言葉の裏は関わった人には影響しますよと言うこと。つまり、初心者が上の冒険者、ギルドに依頼された実力冒険者との縁を結べる、人脈ができる。苦しかろうがのち楽なのでは…やろう)
「受けます。紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「ふふ、はい。では受理いたしまして、冒険者の方をお連れいたします。しばらくお待ちください」
受付嬢レイアはナノスが考えにいたったとわかった。
しかし、指名された冒険者とは、誰だろうか。
呼びに行ったレイアに気負いが見受けられなかった。ギルドと考えが一致しているのは間違いないだろう。たとえ誰が来ても初めまして、よろしくだろう。
ナノスには冒険者の知り合いは一人しかいない。だが、バーグマンはこないだろう。暇じゃなさそうだし、あんな豪快で気さくな人初めて見た。バーグマンには申し訳ないが新入りに何か教えているところは想像できない。戦っているところを想像するのは容易なんだがな。
本当、どんな人だろう。仲良くできるといいな。
逆に指名された冒険者の利点はなんだろうか。身元判明している人材、人脈、紹介状ありだが怪しい人物の見極め、指名冒険者も評価をもらってランクを上げる。あわよくば有能な新人の勧誘あたりか。あと、世界を旅する冒険者には新しい情報はありがいのかも。
指名冒険者が来るまでの待ち時間そんなことを考えていると、レイアと見たことある冒険者が向かってきた。
どこかで見たことある人…おとといだったか模擬戦の審判をしていた人だ。
「お待たせいたしました。ナノスさん、こちらが今回一緒にお仕事を教えてくれる、デヴォットさんです。デヴォットさん、こちらが一緒に依頼を行っていただくナノス・ジョーさんです。」
ナノスはそちらに向き直り会釈した。
「よろしくお願いします」
「うん、ナノスだったか。よろしく」
デヴォット。Bランク冒険者の人。腰に短剣二つとポーチ。
先日は模擬戦していた二人の間に入っていたためか圧していた雰囲気があったが、優しそうな人だ。戦闘になると変わるタイプ?かも。
「立ち話もなんだ、ちょっと腰を落ち着けて話そう。自己紹介も含めてな」
併設している酒場に移るとデヴォットは上質な水と適当に軽食を頼んだ。そして、視線をさりげなく流し目で見れば腰を落ち着ける。
なかなかに自然にやってのける。そういう動作が冒険者として生きていく上で必要なものだと読み取れた。この人は良いも悪いも経験してきたんだろうなとナノスは感じた。
「さて、さっきもさらっとだが挨拶させてもらったけどデヴォットだ、よろしく。普段はパーティーで活動している。一応はパーティーリーダーをしているBランク冒険者だ」
なるほど、控えめに言って強者の雰囲気を後出しする感じですね。わかります。
「よろしくお願いします。ナノス・ジョーです。先日Gランク冒険者になりました」
「…うん、さっそくだがナノスは世界情勢を知ってるか?」
効果がないようだ。
うまくいかなかった。それらしい強者の雰囲気を出してみたが。強者の雰囲気とはどうやって出すのか。変な空気出している気がする。まるで、どんよりしていてゾンビのような社畜戦士が纏う空気。
ん?世界情勢?なんで?
「いえ、よく知りませんね。俗世に疎いです。強いて言えば魔物の動向が怪しいくらいでしょうか」
「…そうか。(チグハグな新人だ。話の急所を押してくる。ゾンビ戦士のような目をしたかと思ったら平和そうな顔になったり)では少し聞いてくれるか」
頼んでいた上質な水と軽食が来たのを境に、デヴォットは話し始める。
いわく、ここ最近の人間から見れば長い期間、他から見れば短い間隔で世界情勢が少しずつ悪い方へ流れていっているらしい。百年とも十年とも見ようによっては見えるらしい。ものすごく遡り億万年かもしれないと。
悪い方へ流れているというのは人から見た場合の主な多数の研究者や老人の意見だと。色んな事件や災害が出てくるが、上記の者たちは活火山が盛んになっている、どこかの深海活火山がでたなどと不安を煽るような情報をどこからか出してくる。
実際に似たような災害があったり、事件が起きた時の騒ぎようは民衆からしたら異様だ。なんせ具体的に対抗策や論文、よくしようとする働きが見られず、他人の不幸を喜んでいる国の上層部までいるのだ。極端だがそういう国もある。どこぞの宗教属国とかなんとか。
中でも深刻なのが魔物被害。地域によって魔物の強さが違う。人が入っていないところは強いとみていい。
ここカルバーン王国は一部辺境地方と国境、中央をのぞき、農村部、小さな村、漁村は被害が顕著だ。日々の生活の中で戦える人がおらず、自衛するしかないのが現状だが、国のお偉いさんは末端の村まで視察しやしないし、対策を行なってくれないらしい。人心が国から離れるのも時間の問題だろうという。
しかし、健常な貴族が手を回しできるところをやっているのもあるが焼石に水。健常ではない貴族が納めている地域はお察しだ。
また、とある国では疫病が流行。昔からきな臭い国は政をする人たちの様子がおかしく、国が揺れている傾国。
定かでないが、歴史改ざんの形跡が散見されて、下手したら人類の歴史そのものが嘘だと考えられる。
だから、一部の真実を追究する者たちは密かに、改ざんを行っている巨大な闇に立ち向かうため、力をつけている。ーーーー
「ーーーといった感じかな。聞いていてどう思った?」
どうしろと?どう思えというんだ?
悲しいですね!協力しますよ!とか言ったらいいのだろうか。
しかし、そんなことの前に、今、言うべきことを言わねばならない。
「うーん、よくわからない。デヴォットさんの情報は正しいのでしょうがこちらも情報を鵜呑みにするわけにはいかない。頭の片隅に置いておくくらいしかできませんね。
…そもそも、大きな世情を知る前に目の前のことに一所懸命やるしかないから、デヴォットさん、あなたに教えを乞うています」
真剣な目をしたナノス。こちとら命懸けで生きている。今やるべきことをしなければ足元すくわれかねない。とてもじゃないが世情は今のナノスには大きすぎて飲み込まれるだけだ。
今を足場に一つ一つ積み上げていくしかない。
「それもそうだ。すまない。急ぎすぎたな。聞いてもらえただけでも御の字か。雑談だと思って気にしないでくれ。…よし、食べたら依頼に行こうか」
気にするなって…ほんとどうしてこうなった?
新人冒険者の警備依頼のはずが世界情勢、ひいてはそれを良い方へ人類を舵切ろうの仲間に入らなければならないと危うくなった。
仲間を集めたいのだろうが我、新人ぞ。世界の赤ちゃんぞ?
今できることを素直にやって、その時々によろこびを見い出す生き方が一番たのしいだろうに。過去のことに目をくらんで足につまずいたら恥ずかしいやつだろうがよ。
まだなんも冒険者のこと教えてもらってないけどな。大丈夫?ちゃんと教えてくれるよな。裏の世界情勢を知れたのは良いこと。
(そういえばこのことギルドも同じ考えなのか?)
冒険者ギルドは総意ではないだろう。十人十色だ、色々あるだろう。
とにかくデヴォットのおごりの出された軽食を食べて席を立ち、それから仕事へ向かった。
王都地区の一部をデヴォットと共に警備巡回する。
情報交換として露店のものとやり取り、冒険者のいろはに心構え情報収集の仕方、新人冒険者に陥りやすい失敗の話や死の危険。仕入れに手入れ装備は日夜暇さえあれば確認しとく。一人ではやはり限界が来る。臨時でも良いからパーティーを作れる仲間、繋がりを作っておけ。
初日無事完了。
一週間これらをよくよく学び仕事した。休日、戦い方を手ほどきしてもらった。
デヴォットは仕事を真面目に取り組んでいた。
最終日の依頼完了の去り際に「困ったときは頼ってこい」と言っていた。それと、この依頼には切っても切れないジンクスがあると言う。仲が続くジンクスが。
そして、デヴォットの真の目的は同士集めだった。
なかなかにぶっ飛んだ話だったが、あり得なくはないというのが正直なところ。人は見たいもの夢想している。きっとそれを望む者が世界規模で多くいるからだろう。
洗脳というが、誰がなんのためにやっているのかはおおよそはつかめているから言わないが。いや、すでに言ったか。
誰かが言っていた。そう、説得力だな。想いの強さで世界の舵切りが変わる。あっちにいったらこっちにいったり、まるで大河の船のように。良くも悪くも。悪くも良くも。良い方へ行くのがもちろん良いんだ。誰であってもこの世にいらない人はいない。持って生まれた役割、学びがある。望んで生まれているんだから。幸せを望まない人はいない。誰もが愛に満たされた世界を創れるとそう信じているナノス・ジョーであった。
最近の驚きなんだけど、オラウータンはオランウータンだったんだね。間違えて覚えていましたよ。
語源はマレー語で『森の人』を意味することばで、オラン(ヒト)・ウータン(森)、なので『オラウータン』という表記は誤りなんだと。で、ンを忘れずにって書いてあった。
まだ知らないことがいっぱいあって人生一生涯学習みたいだ。で、それを嫌いじゃない自分がいる。むしろ自分を更新している感あって楽しいまである。
無知は罪じゃない、恥でもない。一時の感情でそのままにするのか。それとも学べてよかったと思うのか。
どう思うのかは自分自身で決められるってこと、だね。
"だって無数の思考の中から私がこれを選び取っているのだから"
本当、意識するって大事だねぇ。
結局結構どころか、この先この差で格差が広がって行くかもねー。
私はどう変わりたいかと自問自答が良い。
無知は罪じゃない、恥でもないと言った。だが続きがある。食い物にされ骨抜きにされ私が何者なのかを分からなくさせられて、笑われていることを自覚した方が良い。ただそう思う。




