12.
明朝。お日様が出てくる頃。ナノス・ジョーは窓から差し込んでくる朝日で目が覚めた。
すっかり熟睡したナノスは身を起こすとベッドから降り立ち、その足で窓に近づき窓を開けた。
「おはよう。良い朝だ」
ナノス・ジョーは笑っている。まぶしい太陽に当たる。日の出のお日様は暖かい。
ここから見える街並みは綺麗だ。
風景を堪能した後、こうしちゃいられないと軽快な足取りで下へ降りる。さぁ、おいしい朝ご飯食って張り切って行こう。きっと朝の宿のご飯もおいしいに違いないと確信して。
下へ降りて行くと、昨日の夜聞こえなかった喧騒が聞こえてきた。ナノスの他に宿泊客がいたらしい。大半の席が埋まっている。喧騒といっても朝のテンションでだが。仲間同士なのだろうか、囲んで朝食を食いながら話し声が聞こえる。
階段半ばで止まっていると、出来立ての料理を両手ずつ持って、女将ローザが通りかかる。
「おはようございます。ジョーさんよく眠れましたか?」
「おはようございます。ローザさん」
「もしかして、うるさくて起きて来ちゃいましたか?そうならば申し訳ないです。あの方たちは王都に立ち寄る際、うちの宿をご利用いただいている団体の方々で…と、ごめんなさい。ナノスさんも朝食召し上がりますか?」
「はい、お願いします」
「では、空いているところに座って少しの間ですが、待っていてくださいね」
そう言って、すたすたと歩いて、料理をテーブルで待つ図体でかい客たちに持っていった。
忙しそうだ。
女将ローザが言うには、ナノスが上に上がり、少しして来たという。
夜、団体客が来てたのか。こういうのってキャラバンって言うのだろうか?見れば確かにある程度武具、装備が揃っている。
図体でかい男ばかりがいて、昨日は広く見えた食事処が、今は狭く見える。
周りを眺めて、空いているところを見つけた。
最も、でかい男たちの相席しか空いていないのだが。
「相席いいですか?」
「ん?おう、いいぜ」
ナノスはそう確認をして席に座る。
相席にはとんがり頭のナイスガイと長髪で細身のイケメン。どちらも軽装だが戦を装った服を着ている。少し体が動いた際に見えた、腰のベルトに短剣がある。
ちらりとテーブルにある料理に目が行く。朝食は具たくさんのごろごろ野菜スープにこんがり焼けたウィンナーとパンらしい。とても美味しそうだ。見てるとお腹がますます空く。
「坊主、ほしいのか?」
ナノスを見てテーブルに座る。片方の図体でかいハンサムのとんがりナイスガイが言ってきた。もう片方は細身で寡黙のできる副官みたいな男だ。
ナノスは最初誰に言ったのかわからなかった。なので、ナノスはついと後ろを見てみた。だがいるのは、別のテーブルの図体でかい男の背中だけ。
(はて?坊主?)
「ってお前さんだよお前さん」
「俺ですか」
「おう」
俺が子供に見えるのか…?!とナノスは衝撃と困惑を経験した。
「…待っていれば、料理が来るので待っていますよ。そんなに物欲しそうに見えましたか?」
「見えた。何ならずっと見てたぞ」
「ごめんなさい」
「まあかまわんが」
口角が上がる笑いをして図体でかいナイスガイは食事を再開する。
「ボウズもメシか?」
ナノスはつい後ろを見るが、先程のやりとりが返ってくる。
「ボウズしかおらんぞ」
「25歳なんですけど?」
「は?」「…」
「…」
「あっ!そうか、エルフかドワーフかハーフか?そうなんだな?」
「違います。人です」
「「「…」」」
ナノスという大人は、屈強な男2人にじーっと見つめられる。
特に細身のイケメンは凝視してくる。無言でなお怖い。男に見つめられてもあんまり嬉しくは無いのだが。そんな年齢詐称してるか?スーツというこの王都でも見ない位の上質な服を着るナノス。
それに、日本人の顔は童顔に見られやすいから坊ちゃんに見えるらしい。
王都にいる人は服に年期が入っている。ナノスが昨日、市場を歩いていた際にも周りが少しよけていく行動をしていた。上質な服というのは王侯貴族で、民は補修して使い回しあるいは、古着を買う。今日見た限りではそうだった。そして、彩り美しい黒の髪はいない。
「ガハハ、そりゃ失礼した。先入観持っちゃいけないと誓ったばかりだってのに…これは貸しにしといてくれ」
「別にいいんですけど」
「そういうな。貸し貰ってくれ」
ナノスは強引な貸し押し?貸し売り?文句に、押しに押されてもらっておくことになった。
そんなことがあって、このテーブル付近の雰囲気がおかしなことになっている。声を抑えて笑っているもの、辟易している者など。ナノスが笑われているのではなく、ナイスガイの傭兵に対しての反応のようだが。
外見に似合わずきれいに食べているなと思っていると、少年に声をかけられた。
「ジョーさんですか?朝食をお持ちしました」
ローザに雰囲気が似ている少年が料理を持って立っていた。
少年が給仕している。ということは、この子がローザの言っていた息子さんか。十歳くらいの子どもはすでにお仕事をしているようだ。まったく、お勤めご苦労様です。
少年は声をかけてテーブルに置き、ナノスの反応を待っている。チラ見のつもりが長く見てしまっていたようだ。
「ぼくはカインです。両親の宿の手伝いをしています。よろしくお願いします」
これは返事を返さない大人とみなされる。それはいかんとカイン少年を見て自己紹介をした。
「ナノス・ジョーだ。よろしく」
「はい、ではごゆっくりどうぞ」
カイン少年は忙しいのかそれだけを聞いて、断って踵を返して奥へと戻って行った。
真面目な子だ。進んで家の手伝いをして滞りなく動いている。動線しっかりしているみたいだから、きっともっと小さい頃から手伝いをかっているのだろうと想像がついた。今先ほどの挨拶した時は緊張でか表情が固かったかと曖昧な思考が流れたくらいだ。もっとも、ぼっーとして返事が遅くなったナノスを見て失礼なことしたかなっと不審に思っていたようだから、うん、ナノス・ジョーが駄目な大人の見本になりました。これからも精進するでしょう。カイン少年を見倣って頑張ってください。
柏手を打って、おいしい朝食に充実感を出して食べているとナイスガイが話を振ってきた。
「オレは傭兵をやっている。傭兵だけじゃこいつらも食わせられないんで、商売しながらな、あちこち見て回ってんだ。商売のほうは最近始めたんだぜ。男どもばかりでむさ苦しいがな」とナイスガイはガハハと笑っている。
気になる一言。それにナノスは反応した。
"あちこち見て回っている"といっていたよな?
「どんな人種に会いましたか?」
男は話を聞いて欲しかったのか、嬉しそうな表情になり話し始めた。
獣人に会った。森のエルフがいる付近の街まで行ったが会えなかった。その際、王都にエルフがいることを話したらあとで会ってみるぜとわくわくした表情のナイスガイ。
それからドワーフにもあったらしい。ずんぐりむっくりのおっさんで怒鳴り声のような対応に笑っちゃったみたい。酒が好物で、酒を土産に友人になったようだ。そして今回武器を仕入れただの、ドワーフの道具は強いとか。売るのは主に武器を売っているようで、あとで見せてもらったがきれいだった。あとは兵力と護衛が売りだと言っていた。
そう饒舌に話していた傭兵のナイスガイは少年のような男の顔を見た。
(目がきらきらしてらぁ)
さっきまでキリッとしていた顔が好奇心に溢れていた。こいつも男だなと小さく笑う。傭兵は話を聞いてくれる男の顔を見て今世紀最大の遺跡の話をしていく。
それからというもの朝食をナノスが平らげるまでナイスガイは話続け、ナノスは世界を又聞きした。
私、マイルールがあるんです。
ありがとうございますって言うこと。




