買われて行った先(三)
ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべる男達。
ただ、蔑んだような目で見る女達。
どちらも一様に、ミルティアナに対する感情がその瞳から見てとれる。
歓迎されていない。その事実だけは確かだった。
「まったく、これはただの検査なのだから恥ずかしがられても困りますよ?」
どこまで辱しめれば気が済むのだろうか。
(気持ち悪い)
母の店で、どれだけ撫で回されても、頬にキスを迫られても、ここまでの屈辱を感じることはなかった。
見ずしらない、しかも会ったばかりの複で数の人の前で着ていたもの全てを脱ぐという行為は、どれだけ大丈夫だと言い聞かせても足りないほど、ミルティアナの心が悲鳴を上げていた。
(泣いて……しまいたい……)
「確認するので、手をどかしてください。出来ないのですか? それなら……」
ワンピースを脱いだミルティアナに残っているのは、薄い下着とショーツのみだ。
こんなモノの中に、なにが隠せるというのだろうか。
「出来ないとは言ってません。ただ驚いただけです。私のような小娘に、そこまで用心なさっているのですね」
おどおどすることも、隠すこともせず、ミルティアナは真っ直ぐ前を向く。
それが、ミルティアナに残るせめてものプライドだったから。
「……まったく、どういう躾をされてくればこんな子になるのだか」
男はやや呆れながら、ミルティアナの体を確認するようにぐるりと歩き出す。
親や躾のことを言われれば、ミルティアナが泣き出すとでも思っていたのだろう。
「……」
少しの動揺も見せないミルティアナに、男は舌打ちをした。
(親が、躾がなんて……この人はよほど幸せに生きてきたのね)
あの貧しい村で、しかも娘とも思われぬ仕打ちをされてきたミルティアナには、親や躾などという言葉など、響くわけもなかった。
「まぁ、いいでしょう。服と荷物を持って、部屋に移動しなさい」
男の言葉に、ミルティアナは手早く服を拾う。
そして自分の体を隠すように、それを抱き締めた。
(……辛い。でも)
ふと、張っていた気が緩みそうになるのを、ミルティアナは必死に押し止める。
せめて自分の部屋に着くまで。それまでは泣けない。
今ミルティアナの体を動かす感情は、それだけだった。
「ミルティアナ様、ではお部屋にご案内致します。こちらへ……」
外からこの中へ案内し、先ほどの全てを見ていた使用人の一人が声をかけてくる。
ミルティアナは、軽く頷くと、彼女の後に続いたのだった。