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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

読み切り短編。少しだけ非日常に足突っ込んでる俺が、好きな悪魔と再会した件。

作者: 金髪幼女ロリ

もういっきに投稿する。

 10年前。


 夕方時。赤髪の少女と黒髪の少年が地面に座って語り合う。


 この場所は山奥にある最近廃墟になった場所。


 いや、廃墟にしたが正しい場所だ。


「嘘だよね……。実家に帰るって」


「……本当なんだ」


 そんな。いやだなあ……ここからいなくなるなんて。


 いや、でも、わかってたことだ。彼は人間。私は悪魔。覚悟していなかった私が悪い。


「でも、絶対に会えないわけじゃないから。ただ、引っ越すだから、だから……」


 夕方。ひぐらしのなく頃。


「おーい和也―」


 クラクションの音とともに、男性の声が聞こえた。


 嫌な男。


 とどめを刺された気分だ。


「神作さん。ちょっとまって!!! ……ごめんね。もっと……、もっと一緒にいたかったけど、でも、行かないとだから」


「あっ」


 行ってしまう。私とは違うところに。


 私は勇気を出して大声を出す。


「まって!!! カズヤ君……」


 私は大声を出して、呼び止めた。


「〇〇〇ちゃん……」


「これ」


 私は彼にあるものを渡す。


「これは……指輪?」


「受け取って。まだこんなものだけど、……おもちゃの指輪だけど……ちゃんと、ちゃんと渡すから。だから」


「……それまで大切にしてる」


「……うん」


 そういって。


「っ」


 バチバチと光る結界をみる。


「……絶対会いに行くから、待っててね」


 赤黒く傷ついた手を見てそう誓った。







































「はっ、はっ、はっ、はっ」


 走る。


 止まったら死ぬ。


「きりきりきりきり」


 鋏らしき物を持って追いかける化け物、


「くそ、くそ!!!」


 早すぎる。


 走らねえと。


 しかし、不幸にも俺の足が、


「がああっ」


 ここ毎日同じシチュエーションが続いたせいで動かなくなったようだ。


 でも、それと同時に、


「finis. Angeli inhabitare facit unius moris.〈大丈夫。天使は私たちを祝福してくれる

 〉」


 放たれた矢から光を放出し、化け物は粉々に消し飛んだ。


 自分のつかえなさを呪いながらつぶやく。


「ああ。俺は、助かったみたいだ」

















 ジリリリリりりりとうるさい音が鳴る。


 何だっけこの音? 


 ああ。携帯のアラームか……


 …………アラーム? 


 携帯を付ける。


 08:15


 HR開始08:45


 HR開始まであと30分


「……う、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 ダッシュダッシュ猛ダッシュ。急いで台所に向かう


「咲耶あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!! ……あ?」


 ……って? あれ? だれもいない……


 ふと、テーブルにぽつりと置いてある紙を見つける


 ? 


 置手紙か。どれどれ? 


『先に行くね。朝飯はフレンチトースト焼いといたから。PS.私は起こしたよ。咲耶』


「お、置いて行かれた……」


 そういって歯を磨く俺の名前は佐野和也普通で平穏を望む高校生だ。ってんなこったどうだっていい。


「がーっぺ」


 うがいをした俺は急いで二階に戻り、制服に着替え、急いで駆け降りる。


「行ってきまーすって誰もいねえか」


 そういって、スマホを見る。


「8時半!? 急がねえと」


 鍵を閉めてフレンチトーストを口にくわえる。


 後は走るだけ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 気合と根性!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 


 フレンチトーストを食べながらこころの中で思いっきり叫ぶ。


 根性うううううおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!! 


 って、


 走ったままの勢いで学校前の曲がり角を曲がると、綺麗で艶やかな赤黒色の短髪を靡かせた少女が目の前の立っていた。


「危ない!!!」


「ふぇ? びゃあっ!!!」


 ぶつかる。


「ちょ、ごめん。だいじょうぶか!?」


 転びかけてることに気づかず、急いで手を伸ばす俺。だが彼女は立っていたようだ。


「ええ。大丈夫ですよ。そっちは……大丈夫みたいですね」


 転びかけた俺の手をつかんでくれたようで、お互いが立っていた。


「ありがとうございます。いやーそっちも、怪我とかなさそうだしほんと、よかったあ……」


 ほんと、女の子怪我させたとか今のご時世問題だしな……ってあれ? 


 急いでスマホを取り出す。


 今は何j……


「っげ!? もうこんな時間!?」


 急いで手を離す。


「ちょ、ごめん。急いでるから」


「え!?」


 まずいまずいまずいまずいまずいまずい!!! 


 走る。気持ち弾丸より速く。


「遅刻しちまうううううううううううううううう!!!!!」

























 あの時


 手に触れたとき確信した


 あれは彼だと


 ああ


 長かったなあ


 この10年間


「やっと見つけたよ。カーズヤ」


























「ギリギリセ────────―フ!!!!!!!!!!」


 バーンと勢いよくドアを開ける。すると、目の前には


「ほんとにね。明日野先生来てたらアウトだったよ和也」


「ああ。そうだな」


 幼馴染がいた。こいつは、汐聖咲耶。茶色のセミショートがトレードマークのやつだ。


 こいつの家は教会で、父親がやってる悪魔祓いの仕事を手伝いながら、俺の面倒も見てくれてる。


 普段はいいやつだ。


 時間は8時47分。本来だったら遅刻だったが幸い先生がいないみたいだった。ほんとに危なかった……


「てか、咲耶。元はといえば、お前が置いていくのが悪いだろ」


「もう、人のせいにしないでよ。私はちゃんと起こしたよ」


「むう。納得いかない。俺はなあ、昨日の帰り道いつもながら変な悪魔に襲われて、死にかけたって言うのに……」


「悪魔は私が、殺したでしょ。言い訳しない」


 いや、まあそうだけどさ。


「ぶー。はーい俺が、悪かったよ」


「全く」


 そう、言い争っていると、ガラガラと扉の開く音がした。


「はいじゃあ、ホームルーム始めるよー。みんな席について―」


「っと不味い」


「和也席につこ」


「そうだな。咲耶」


「……よし、全員いるわね。遅刻も無し。満点花丸。それじゃあ、ホームルームを始めるわ」


 よかった遅刻したことはばれていないみたいだ。


「まずは最初に転校生だね。入ってきてー」


「はい」


 あれ? この声……昔どこかで……


「和也? どうしたんだい? 耳鳴り?」


「いやまさかな」


 気のせいだろ。


「?」


「じゃあ、入って」


 そういってこの教室に入ってきた、人は、


「私は、ティアラ―ペネロといいます。隣町から来ました。よろしくお願いします」


 さっき曲がり角でぶつかった少女だった。


「マジかあ……」


 頭を抱えた。


 なんか、どーりで聞き覚えのある声だと思ったよ。つい数分前にあってるんだったらそりゃ聞き覚えあるわ……


「和也ーほんとにどうしたの?」


「いやさっきちょっとね。あの事いろいろあってさ」


「は?」


「いやお前が考えているようなことじゃないって」


「いーや、お前はいっつもそうだ。いつも、知らない女にまとわりつかれていっつもよくないことが起こる。お前はいつも、「じゃあ、ペネロちゃんは、和也君の隣ね」


「はい」


「た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


「うるさ」


 そんな会話をしていると、


「さっきぶり、よろしくね。えーっと」


 いつの間にか隣の席に、彼女がいた。


 ? ……そうか名前がわからなくて困っているのか。


「自分は、佐野和也って言います。後ろのこいつは汐聖咲耶、俺の幼馴染です」


「ええ。よろしくお願いします。佐野くん。咲耶ちゃん。ペネロでいいよ」


「……」


「ちっ、よろしく」


 そういや、さっき一番大事なところを説明をするのを忘れていたが、


「……えーっと、あのー、咲耶「ちゃんでいい」


「お前はくんだろ」


 こいつは男だ。


「む」


 可愛らしくほっぺ膨らませるな。やたら様になるんだから。


「わかりました。咲耶さん」


「けっ、しらじらしい。悪魔め」


 なんか察したんだろう、すげー配慮した返したな。コイツただの女装癖なのにな。


「てか、初対面の人そんなこと人に言うな」


 ほら、またクラスから陰口言われているぞお前。


 そんなことを考えていたら、唐突に、


 そういやあの時のちゃんと謝っていなかったな。


 と思いだした。


「そういやさっきは、ごめん。遅刻しそうでさ、なんでもするからゆるして」


「え? 、ちょ、急に!?」


 俺も思った。けどタイミング逃してしまうよりかはましだ。


「えーっとさ、さっき、曲がり角であった時も言った通り私は別に、気にしては……」


「そうだそうだー。謝らなくていいぞ」


 後ろで、ガヤガヤ聞こえたが今は気にしない。それよりもこれ、許してもらえそうか? 


 そう考えているのに気づいたのか、彼女の顔はまるで悪魔の様に三日月上に、にやりと笑う。


「たしか言い分は「遅刻しそう」でしたね。でもどーしようかしら」


 ん? 空気が変わったな。ちょ、怖いんだけど。何でもとか言わなければよかった。


 今どきの女子のことだ。窓からワンチャンとか言われるかもしれない。


「なんでもするっていうのなら……」


 頼む。出来る範囲で、


「今日のお昼休み学校の案内お願いします。なんでこんなに心の底から安堵しているんですか?」


「命があって助かった……」


「今から変えましょうか?」


「いえ、このままでお願いします」


 後ろでアノオンナコロスとか呪詛が聞こえるけど、


 まあ、無茶ぶりじゃないからよし。




「というわけだ。なんでお前がいるんだ?」


「二人きりになんてさせるわけないだろ」


『別に二人いたほうが効率いいだろ』


「本音と建前が逆だぞ」


「二人は仲いいんだね」


「まあ、愛し合ってるしな」


 まあな。と言おうとしたら、コイツとんでもない爆弾落としやがった。


 言わないでよかった。


「は?」


「別に俺らそんなじゃないだろ。こいつとは、ただの親友ですよ親友」


 あれ? 今、は? って聞こえたような。


「それならいいけど……」


「ちっ」


 おい舌打ちしたな今。


 そういおうとしたら、


「おっ、着いたぞ。まずは最初にここだ」


 そういって俺たち二人が見る。


「ここが保健室だ」


 グーで殴る


「グーで殴るなんて痛いなあ」


 胸ぐらをつかむ


「そりゃそうだろ、しょっぱな行くとこかよ。ひいてるぞ」


「でも悪くないな」


「聞けよ。二発目行くか?」


「待て、保健室は覚えていたほうがいいだろ。怪我したときとかさ」


「確かにそうだが……「というわけで」


「ここが女子更衣室だ」


 グーで殴る。


「お前もう帰れ」


 咲耶離脱。




「というわけでここまでが主要の教室全部だ」


「ありがとう。だいたい把握できたよ」


「そりゃあよかったよ。じゃあ、教室に戻ろうか」


「わかった」


「……」


「……」


 カツカツと二人で静かに淡々と階段を上る。


「……」


「……」


 んー今日は、無理やり駆け上がったせいで太ももが痛いな。てか最近ずっと、走りっぱなしだったしな。


「……」


「……」


 やっぱり、教室が三階にあるのはつらいもんだ。


「……」


「……」


 ……


「……」


「……」


 ……やっべ。どうしよう。


『気まずい』


「「えっと」」


 嘘でしょ……


「……先どうぞ」


「じゃあ、お先に。咲耶さんのことなんだけど」


「ああ……。あいつはその……、いつもこんなだよ。俺が女子と話してると、いつも邪魔してくるんだ。まあ、その、滅茶苦茶苦労かけてしまうと思うけどこっちからは言っとくからさ」


「あ、いえ、そっちじゃなくて」


「?」


「お二人は付き合っているのですか?」


「ぶっ!!!」


 びっくりした。いや、はたから見たらそう見えるのか? とにかく、反論しないと。


「ちょ、いや、まだそんな関係じゃないよ」


「まだ?」


「それに俺は好きな人いるし」


「そうなんですか。ちなみにその人はどんな人ですか?」


「それはな……」


 続きを言おうとしたら、ふと、フード被った人間とすれ違う。


「!?」


 ただそいつは……


「ん? どうしたの?」


「いや、今窓の向こう側に人が!?」


 いない……


 どういうことか考えていたら、


 ガシャーン!!! 


 とでかい音と一緒にガラスが踊る。


「マズイ!!!」


 急いで、彼女をかばう。


「っ」


 いってえ。


「ちょ、大丈「和也!!! 大丈夫か」


「まあ、なんとかな。ちょっとかすった「ちょっと今の音、和也君!?」


 やっば……


「いや、ちょっと割れちゃって、あ、自分らは何もしてないからで!?」


 急に明日野先生が、腕をつかむ。


「こんなきれいにかすっちゃって……、血も出てるじゃない……。……それに、窓も割れて……。ああとで三人には話聞かせてもらうから」


「ちょ、ほんとに関係」


「いい?」


「「「……はーい」」」










 ……これは、


「黒い血……悪魔の血か」


 窓ガラスに付着する黒い血を見つける。


 カズヤのこと、誰かが狙っている? 


 72のうちのどいつだ? 


 拳を握り、ドスの効いた声でしゃべる。


「させるかよ」




































 放課後。


 一人歩く帰り道。


「クソ、あの二人逃げやがった」


『じゃ、調べることあるから』


『両親が迎えに来たそうで……ごめんなさい』


 そんなことを思い出しながら、とぼとぼと一人歩く帰り道。ほんわかなみんなに会いてえなあ。そんなやつはいねーけど。それにしても、キレられ損だな俺。帰ればよ、いや明日が怖いからいいや。


 まあ、あいつらは明日怒られるだろうからヨシと思っておこう。理不尽に俺だけ怒られるなんてそんなことは起こらないだろう。


 ? 


 気配を感じ急いで振り返る。だが、だれもいない。


 まあ、イライラして神経質になってるんだろう。


 漫画でも読んで気分紛らわせるかな。ん? 


「え? 空いてる?」


 あの時急いでいたとはいえ、……鍵かけて家出たよな……。


 ぞっとした。


 恐る恐るドアを開ける。


 誰か出てきたらどうしよう……


「あ、おかえりー」


 ────────────声するじゃん


 女の声、全く聞き覚えの無い。


 どたどたと足音が近づいてくる。


 ええい、ままよ。


 扉を全部開ける。


 しかし出てきたのは意外な人物だった。


「ごはんにする? おふろにする? それともわたし?」


 ??? 


「え?」


「さ、どれ選ぶの?」


 いや、これは、


 おもちゃの指輪がついたネックレス。そして、黒いシスター服に赤い髪の姿をし、






































 特徴的な角としっぽの生えた、どこからどう見ても、悪魔だった。




「なんで悪魔が!? てか、誰?」


 カバンの中の十字架を掲げながら、後ろのに下がる。


「もう、忘れたの?」


 ぐっと近づき、十字架をはじく。そして、俺のほっぺに手を触れてそっと耳元でつぶやく。


「私の名前は、ティアラ―ペネロ。さっき学校で一緒にいたでしょ」


 ティアっ


「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!」


「ちょ、うるさ」


「嘘でしょ!? え? おま、悪」


「ふふーん。驚いた? 驚いたよね。久しぶりに、あったもんね。10年たちゃあ成長するから変わるもんね」


 ほっぺに触れた指はだんだん下に下がっていく、


「ああ。ひさしぶりに、触れたよ……朝の時から10時間と16分。ずっと触りたかった」


 だんだんと下に下がって、これ以上は、


「ちょ、やめ、ろ」


 急いで手を振り払う。


「やん。激しいのね。嫌いじゃないわ」


「いや、「激しいのね」じゃなくてな。それに、久しぶりってなんだよ。俺らは、今日会ったばっかだろ」


 そういうと彼女は冷めた顔で、


「忘れたの? あんなに愛し合ったのに?」


 俺の顔を両手で力強くつかむ。


「あんなにって」


 ちょ、目が怖い。


「いや、やっぱりあいつに記憶消されてしまったかなあ。だって、忘れるはずないもん。あんなことしてさ」


「いや、あんなことってなんのこと?」


 力が強まる。


「いででででで」


 痛いって。


「なれそめから、別れまできれいに思い出させてあげる」


 だんだんと彼女の指が、


「頭が、割」


 入っていく感覚がした。


 周りの色素がすんとなくなる。


「だからじっとしてて。大丈夫、痛みは一瞬だから。それに、辛い思いなんてさせないから。過去も。今も! 未来も!!!」


 そういって、悪魔は、俺に、


「でたな悪魔め!!! おまえを殺す!!!」


「!?」


 勢いよくどこからともなくでかい十字架が飛んでくる。


 それを悪魔は、すんでのところでよける。


 でかい十字架……いや、十字架〈toy coffin box〉は投げた本人のほうにからからと音を立てて戻っていく。


「咲耶!!!」


 戻った方向に立っていたその男は、白いシスター服を着た俺の幼馴染だった。




 悪魔は急いで、指を抜き攻撃を発動しようとするが、


「攻撃なんざさせるか。よけろ和也!!!」


 十字架を銃〈バースト〉モードに変更する。


「Sit scriptor tenebris una virga est.〈さあ、一緒にこの闇を撃ち抜くよ〉」


 球体状にたまったエネルギーが、


「end」


 一気に放出する。


「は!? ちょ、あっぶな」


 轟音とともに、悪魔は、目の前にいた俺をかばうように後ろに下がる。そして、放たれたエネルギーを一気にまとめ上げ、消滅させる。


「っぶねえなあ、おい。うちの旦那傷物にするつもりか? なあ? 殺すぞ」


「っち、和也を離せカスが」


「いや、その前に家を破壊しようとしてんじゃねーよ!!!」


「大丈夫。壊れたときはまた同じ部屋の下で住めばいいじゃないか。私はウェルカムだよ」


「俺がウェルカムじゃねーんだよ」


 こいつは前科持ちだ。寝ている時に一緒にいたくはない。


「カズヤ、後ろに下がってて。コイツやばいよ。私たちの愛の巣を壊そうとするもの。狂ってる」


「いや、お前も十分やばいぞ。出て行けよ」


「そうだ、さっさと和也のことを離しやがれ悪魔め。出て行け」


「いやお前も帰れ」


 なんでここにいる3分の2いかれてんだよ。もう、平穏云々どっか行ったわ。


「そーだぞー。戦うときは人様に迷惑かけちゃいかんって俺は言ったぞー」


「!?」


 驚く俺。


「……」


 睨む悪魔


「げっ」


 いたずらっ子のような反応をする馬鹿。


「忘れたとは言わせねーぞー。さーくーやー」


 どこから現れたかもわからない、神父服を身につけた中年。


「親父」


 その名前は意外な奴から語られた。


「汐聖神作」


 え? 


「……ティアラー。久しぶりだな」


「「え?」」




「はーい。じゃあ、おじさんのおごりだからジャンジャン食べてくれよー和也ー」


「いや、説明してくださいよ」


「ん? ファミレスじゃ不満か?」


「ああ……不満だよ親父……」


 机をたたきながら吠える。


「なぜこいつと一緒に!!!」


 そういって、悪魔の方向に指をさす。


「店で、でかい音立てるなようるせえな。ただでさえ、はたから見たら危ない集団なんだ。少しは大人しくしろ」


 まあ、確かに。世間から見て、修道服を着た男女が男子高校生を囲んでいるのは、見た目が悪い。


「まあ、その、何だ。うちにはこいつが入れねえし、「箸で人差すんじゃねーよ。行儀悪い」


「悪魔が、行儀云々言うのか?」


「ハイ悪魔差別うううううううう。お前ら聖職者共はそういうとこあるよなあ。だから無用な人間まで殺すんだよバーカ」


「だから静かにしろよまったく……。まあ、あの家じゃ狭いしな。ファミレスがちょうどいいだろ。こいつだって、下手に人も襲えないしな」


「そーゆー用意周到なところほんと嫌い」


「はは。そうゆーなって」


「で、話戻るんですが二人はどー言った関係なんです? ふつう、神父と悪魔がかかわるなんてそうそうないっすよ」


「コイツはーちと昔からの腐れ縁でな。まあ、その、なんだ。あんま詳しくは話せねーが。そんなもんだと思ってくれ」


「わかりました」


 中指立てるような関係か……どんな関係だよ。


「じゃあ、今度はこっちから質問だ」


「あ?」


「ここに来た目的はなんだ?」


「そんなの」


 そういってぐいっと、


「昔の約束があるからに決まってるからよ。別に今更あんたたちにどうこうするつもりなんてないわ」


 あいつのほうに引き寄せられる俺。


 騒ぐ咲耶。あっ、どつかれた。


「まあ、そいつはよかったが、かといってなあ……うちも、そこまでお人よしの組織じゃねえんだ。監視はつけるがいいか? なあ、和也」


「はあ?」


「いや、普通私でしょ!? なんで一般人巻き込んでんのさ!?」


「確かにこいつは教会に属していない一般人だが、普通の人よりは知識もあるし、何よりこの悪魔に好かれているだけってのがでかい」


「特定の悪魔に固執されていてなおかつ契約していない人間はその悪魔が守るからいいってあれ?」


「まあ、うちだって人間足りてないんだし、何よりお前は信用がない。だったらこうすることが都合がいいんだよ。契約したら俺が殺せばいいしな」


 そういいながらかれは、ガッハッハと笑う。


 悪魔しかいねえのかここは。


「納得いかない」


「納得しろ。教会の判断だ。それにまあ、俺としてもいいんじゃねえのとしかねえ」


「でも親父」


「たーだーし条件が一つ。和也、こいつに手は出すなよ」


「なっ」


「なんちゅうことぬかしとんじゃこのクソジジイいいいいいい」


「さっきから、いちいちうるせえなあこのクソガキいいいいいいおとなしくできねえのか。え?」


 そういって二人の親子喧嘩が始まった。もうはた迷惑レベルの。


「よし、出よう。こうなっちまったら、もう手は付けられん」


「……そうね」


 そういって、俺たち二人は金だけ払って店から出た。


 あとこれは、のちに聞いた話だが二人は出禁になったみたいだ。


 馬鹿である。




 そんなこんなで、ファミレスからの帰り道。


「心配になってきたなあ」


 俺ら二人は、二人が怒られているときに店から抜け出した。


「でも、あの馬鹿二人の面倒ごとに巻き込まれるなんて私はごめんよ。それに、払った分の鐘は利子付けて、払ってもらうんだから」


「ちなみに利子は?」


「10倍」


「あ、悪魔」


 暴利だろ。


「私は悪魔よ。それくらい造作ではないわ。


 それに午後のこともあって、咲耶のこともざまぁないと思ったでしょ」


「いや、あのことについてはお前も恨んでるぞ」


「……悪かったわよ」


 二人歩く。ちょうど、住宅街が見えてきたくらいだ。


「なあ、お前はほんとに家に住むのか?」


「まあね……約束……って言っても、忘れてるのよね。あの時は取り乱しちゃってさ。ごめん」


「……いいよ別に。気持ちはわからなくはないから」


「あはっ、滑稽に見えるよね。昔にすがっちゃってさ。だけど、私にとっては大切だからさ。だから、ね」


 記憶か。


「俺には昔の記憶がないからなあ。でもそうか……。……ちなみにその約束ってどんなのだ?」


「そんな、無理に合わせてもお互いがむなしいだけよ」


「単純な興味だよ。昔の俺は、どんなこと言ったのかって。そっちがそんなに大事に覚えているなんてどんな口説き文句か気になるだろ」


 そう聞くと悪魔は、もじもじと恥ずかしそうに答えた。


「指輪……おもちゃの指輪渡したときに、その、ここから出てきたらその時にちゃんとしたの渡すって、……それまで大切にしてるって」


「おもちゃの指輪か……」


 さ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っと、頭に音が鳴る。


「っ」


「ん? どうしたの。うずくまって」


 ビープ音。ノイズ音。不快な音ばかり。


 頭が痛くなる。


 うるさい。


「うるさい」


 そうつぶやくと、声が聞こえた。


『受け取って。まだこんなものだけど』


 これは……なんだ? 


『……おもちゃの指輪だけど』


 知らない記憶。いや知っている記憶? 


『……ちゃんと、ちゃんと渡すから。だから』


 欠番した記憶。


「え? ちょ、ねぇ」


「なんか、荒れてる。ノイズがかかってる…………セピア色だ。ああっ」


「ねぇってば」


 がくんと肩を揺らされると同時に正気に戻る。


「え?」


「汗もすごいしいろいろ言ってたけど、だいじょうぶ?」


 俺は立ち上がりながら答える。


「大丈夫……だよ。早く帰ろう」


「わかった」


 そういって、家に向かおうとした。


「ちょっと、二人とも、何しているの?」


 この声、確か


「「あ、明日野先生?」」




 いま、俺はすごい焦っていた。


 うおおおおおお。なんで今ブッキングするんだああああ。


 時間はまだ9時半ば。でも、転校してきたばかりの女子生徒をコスプレさせて歩かせている変態にしか見えないこの状況どうすりゃいいんだよ。


「この時間に何してるの? そろそろ補導時間だよ。てか、何その格好? 咲耶もしていたけど、流行っているの?」


「あ、ごめんなさい。これ、私の私服なんです」


「……こっちこそごめん」


 さすが先生大人な対応ができる人だ。って、あれ? 手に、こんな包帯朝してたっけ? 


「って、そういうことじゃなくて、なんで二人しているのって」


「いやあ、すいませんちょっとコンビニにであって、そこから二人話しながら帰っていたんですよ」


「そう、ならいいけど……。あ、そういや近くに車あるから二人とも送るわ」


「大丈夫です。いえ、家が近くなので」


「私も……」


 そういって俺らは、急いでこの場を去ろうとする。


 でも、俺だけ急に肩をつかまれ


「送るからね。ね?」


 ぞっとした。


 雰囲気が変わったのを察して、怖くなった。


「目が怖いですよ……放してください。先生」


「大丈夫何もしないから。何もしないから!!!」


 だんだんと型をつかむ力が強くなっていく。うっ血までしていく感覚まである。


「いだだだだだっ。ちょ、ほんとに」


「ね?」


「あのーすいません。「悪魔がしゃべるなああああああああああああ!!!」


「「!?」」


 あまりにも衝撃の一言だった。痛みを忘れるくらい。


「私は狙ってたコイツ獲物」


 ろれつが回っていないくらい。いや、ちゃんと喋れているのかわからないくらい意味不明な言葉だった。


 獲物? 狙っている? そう考えていると、


「っぶねえ!!!」


 止まっていた体を無理やり動かすために急に腕をつかまれて、そして引っ張られる。


「ペネロさん」


 安心したのもつかの間、カチカチと音がした。


「呼び捨てでいいよ。それよりも体動く?」


 目の前にいる恐怖の象徴みたいなものから発生させられた、口の音が不快を与える。


「ああ。一応」


「悲報だけど、今の私には戦えない。いや言い方が悪いね。戦えるけど、ちょっとしかできない。そして今やったって、アスモデウスに勝てる未来が見えない」


「じゃあどんな感じで逃げるんだ」


「二人固まって気合と根性。守るくらいはほんとにぎりぎりできるから」


 気合と根性か。


「悪くはねぇな」




「右!!!」


「次は右だな!? っぶ、なあ!!!」


 よけた位置から地面が抉れていく。


 悪魔……いや、化け物の拳は、あんなに威力あるものなのかと思ってしまう。


「っ、ラァ!!!」


 逃げつつ瓦礫をつかみ、彼女は相手の顔に投げつける。


「!?」


 当たった瓦礫は、粉塵と化し


「やっぱりだめか」


 一瞬で空気のごみになった。


「でも、目はつぶれた。……ああクソが」


 つぶれたところの上から目が増える。


「絶望してないで急いで逃げるよ」


「ああ」


「パクパクパクパク」


「いちいち不快だな。あんにゃろー」


 そういいつつ近くにある砂岩を再び投げる。


「じゃま」


 手ではじかれた砂岩は、粉みじんになる。


 走りながら、目くらましにでもと思ったが、


「ふう。見つけた」


 息で吹き飛ばしたようだ。すぐに見つかってしまった。


「そろそろおわりいいいいいいいいいいい!!! よおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 そういって化け物は、


「油断した!!! 逃げtグハッ!!!」


 彼女をつかみ、握り、投げ捨てる。


「ペネロ!!!」


 血だらけになった、彼女を横目に、


「やっと二人きりになったね」


 と不快な声で言われた。


 これ、まずいな。彼女を助けるにも、場所が遠い。


 でも、助けてくれたやつだ見捨てるわけには行けないしな。


 ㎝のところをよけながら考える。かすりながら。


 でも、


「隙がない」


 下手したらこっちが死ぬ。


 見捨てるしかないのか……


 いやだ。それだけは。


「隙が」


「あああああああああああああああああああああああ」


 叫ぶ化け物のでかい手が、俺を囲む。


「くっ」


 距離が円形で、一気に縮まっていく


 ダメだ。


 目をつぶってしまった。


 何もできなかった。


 約束が、


 あったのに、


 相馬戸の様に、流れていく過去の記憶。


 その時さっき見た光景が。


 ああ。


「思い……出した」


 彼女は正しかったんだと、直感的に理解した。


 俺は、約束を守るどころか、大事な記憶を忘れてしまっていた……。


 彼女の名前を。


 ティアラーペネロを。


「かんしゃをこめてええええええええええええええええええええええええええええ!!! 


 いただきいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい「十字架剣〈ソード〉モード!!!」


「え?」


 死んだ。


 そう思ったのに、急に倒れる。


「クソ。遅かった」


 俺の目の前に、武器を持った人影が見える。


「それにしてもあいつは……はっ、ざまあない。悪魔が私の和也にちょっかいかけたからこうなるんだよ」


 男の声にシスターのような恰好をしたやつ。


 そんなの、俺が知っている限り一人しか知らない。


「はあ、性格」


「遅くなったごめんね」


 コイツ……


「任せて大丈夫か?」


「私をなめないでほしいな」


「信頼してるぞ。親友」


「今はそれで許すよ」


 ムッとする彼を無視して、


「じゃあ、行ってくる」


「ちょ、なんで!? 家は反対側でしょ」


「あいつも一緒に連れて行くんだよ」


「いや見捨てなよ。盾は多いほうがいいし」


 盾って。


「まあ、いいわ行ってくる。適当に戦っててくれ」


「もう……」




 数分後。


「なんかあっさりいけたな。というかあれで起き上がらないとか逆に心配なんだけど。手ごたえなかったし。……バーストモード」


 手、足、胴体、顔、に向かって数発撃つ。


「追撃しても反応なしか。これは本格的に」


 ぐぐぐと音が鳴る。


「どこどこどこどこ? ごはんどこおおおおおおお」


「なわけないよなあ!!!」


 起き上がる化け物を見つめながら、十字架を鎌〈サイス〉モードに変更する。


「Semper unum sumus, quod materia non morietur.〈死ぬことなんざ関係ない私たちはずっと一緒だ。〉」




「案外あっさりいったな」


 血だらけの彼女を担ぎながら走る。


 とは言え、あの場所から距離を取る。


 あいつが勝つことを信じている。でも、戦闘範囲が拡大しないとも限らない。


 俺がいることがかえって邪魔になる。


 だから離れる。


「ん?」


「おっ、気が付いたか? ペネロさん」


「……さっきは呼び捨てだったじゃん」


「はは。ごめん。……俺、一部だけど思い出したよ」


「……ほんとに」


「うん。……出会ったときとかはまだだけど。でも、大事な約束は思い出したよ。なんでこんな大切なこと忘れていたんだろうって自分が嫌になった」


「そんな……自分を卑下しないでよ。10年も前の記憶なんてふつう覚えていないんだしさ」


「階段上っているとき、好きな人の話したよな」


「うん」


「あれはお前のことなんだ」


「ー嘘でしょ」


「嘘じゃないほんとのことさ、ペネロ。……いや」


「やめて。悪魔を知っているなら、私の真名を呼ぶことがどれほどイケないことかわかっているでしょ」


「俺はそれでいいよ」


「私は貴方とそういった関係になりたくない」


 俺らが、言い合いをしていると轟音が鳴る。


「「!?」」


 煙が立っている壁のところを見ると、


「咲耶!!!」


「がはっ、っ……3分の2は壊したけど」


「もういい立つな。しゃべるな。じっとしてろ」


「誰が戦うんだよ。……私が、お前を」


 そういってけれは気絶する。


「……なあ、ペネロ。立てるな?」


「カズヤ!!! お前……っああ」


 負ぶっていた彼女を立たせる。


「俺だってこんなこと不本意だ。お前に負い目を背負わせることになる」


 手が一本あとは胴体の化け物が近づく。


「でも、やらなきゃみんな死んでしまう。俺はそれが嫌なんだ」


「……クソ」


「受け入れてほしい。ほんとにごめんだけど」


「……お前の命にかかわることなんんだぞ」


「そこは信じているから大丈夫だ。お前が、調整してくれるってな」


「……信頼するとか間違えてるでしょ。私は悪魔だよ」


「好きな人を信じない男がいるわけないだろ」


「……(仮)だから」


「指輪に誓うよ」


「っ、私の名前を呼んで!!!」


「ああ。俺の魔力を使え!!! ラーペ!!!」




 俺は、捕まえられる。


「いただきまあああああああああああああっ、まりょくがへってる? いや、吸収されている!?」


 そういう化け物が殴り飛ばされる。


「!?」


 全体からジュージューあふれ出る赤黒い蒸気とともに、十字架のメリケンサックをみにつけたシスター姿の悪魔。


「ヒトの男に手を出してんじゃねえぞ。カスがアアア!!!」


 吠える彼女。ティアラ―ペネロ。俺の大好きな人。


 衝撃で吹き飛んだ俺を見事にキャッチした彼女


「ナイスキャッチ」


「当然」


 そういうととっさに俺のことを下ろして、


 殴りの構えに出た。


「悪魔がそんなのを使うなんていやあ物騒ねぇ」


 殴られたところからパキパキと割れていく化け物。その中からは第二形態と言わんばかりの、新しい姿が見えた。


「アスモデウス、お前を確実に殺すんだ。覚悟しな!!!」


「やれっるもんならやっぶべら」


「私は、早く終わらせたいの。短期決戦で行かせてもらうわ」


 そういって、思いっきり殴り飛ばす。


 ざっと10メートルくらいだろう。吹き飛んでいった悪魔に、彼女は狙いを定めるようなポーズをとる。


「はああああああああああああああああああああああああああああ」


 メリケンサックの付いた右こぶしに体から放たれる蒸気が集まっていく。その蒸気は十字架の形をしていき、


「ははっ、悪魔の血で、十字架を作るなんて。いかれてるわ貴方。それがどういったことか知ってるでしょ?」


 腕に纏われる。


「知っているから使うんでしょ」


「させる?」


 殴りかかっていく悪魔。


「いいや、受けて頂戴」


 カウンター気味に放たれていくその一撃は、


「血払魂十字〈爆裂〉」


 空を裂き、気を裂いた。


「あっ」


 拳を経由して血で作った十字架を悪魔の体内にぶち込む彼女。


「っ、あっ、がぁっ」


 完全に入れ終えると、回し蹴りで蹴り飛ばし距離を無理やり作る。


「じゃあ、な」


 親指を、下に向けると同時に、


「ああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 化け物が断末魔とともに爆裂した。




「カズヤ……大丈夫?」


 幼馴染を背負う俺に心配して彼女は問う。


 あたり一面は血の雨だ。


「ああ。大丈V」


 Vサインを掲げ、平気なことを彼女に伝える。


「ふう~。ああよかった~」


「それじゃあ、一緒に帰ろうか」




 エピローグ。いや、プロローグかな? 


 朝。


 学校。


 扉を開けて、つかつかと入ってくる副担任。


「えー担任の明日野紗良先生が今日は休みということなので、今日は私がホームルームしまーす」


 そんな、こえを横耳にしながら、昨日のことを思い出す。


 俺たちは手当てをした後咲耶を家に帰して、今後のことについて話し合った。


「なあ」


「ほんとによかった」


「?」


「(仮)契約は破棄されたよ」


「そうか。それは残念だよ」


「なっ、ほんとに命がかかってることわかってるの? 魔力を失うことは」


「命を失うことだろ。冗談だよ」


「もう、笑えないよ。次はこんなの勘弁だから」


「ま、気つけるよ」


「でも、あの時名前を呼んでくれてうれしかった」


「そっか……お前はこの後も家に?」


「そうね。最初からその予定だし」


 なんてことがあって。


 ちらっと、彼女のところを見ると、ニコッて笑顔を向けられた。


「なんで学校に来てんだよあいつ。こっちみんないてててて」


「いやそれこっちのセリフだから。咲耶」


 全身包帯にギプスという、病院にいろと言いたくなるような恰好で学校に来ていた。


 そういう彼のもとに彼女が来て、


「なんでって、そりゃ私は強靭だからなななななななななななななななななななな」


「あら? 苦しそうではありませんかwww。昨日、貴方が教えてくれた保健室に連れて行ってはどうでしょうかねえwww」


 笑いながら彼女は突っつく。と言うか肩パンする。


「このアマだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいっ!!!!!!!!!!!!!!!!」


 おもむろに立ち上がったと思ったら、そういってデカい音たてながぶっ倒れる。


「立つのもままならねえじゃねーか。お前ほんとになんで学校来た?」


「私は、こいつを、絶対、殴る」


「や↑wっ↑wて↑wみ↑wろ↑www」


 急いで二人の喧嘩を止めに入る。


「まったく、喧嘩していないで大人しくしろお前ら!!!」


 全く、普通の平穏を望んでいたはずなんだが、なんでこんなに騒がしいんだ。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


「おりゃあああああああああああああああああああああああ」


 でもまあ、こんなのも悪くないな。


 この日、いや人生で一番の


「いい加減にしろ」


 スパーンと気持ちい音が鳴った。


反応よければちゃんと書く

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