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2色目 窮地を救ったギフトの色



「こ、このギフトって・・・!?」


『修羅』





『『あっ』』




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神殿には“特化系ギフト" という考え方がある。


例えばトモビスのギフト“狩人”は、弓を扱うスキルを中心に、罠の作成や、それらに活用できる毒物の調合に影響を及ぼすスキル、

他にも周囲に存在する生物に対する索敵系スキルと、極わずかではあるものの、採ったエモノを解体、調理するスキルまで。

狩人として必要な多種多様なスキルに対して習得速度と効果に対してボーナスが発生するギフトである。


対して“弓術士”のギフトは“狩人”と比べてボーナスが発生するスキルが少なく、弓術に必要なものに限定されている。


では“弓術士”は“狩人”の下位互換なのか。


実際、そうではない。


蓋を開けてみれば単純な話で、要は特化しているかどうかなのである。


“狩人”のギフトは狩人として必要なスキル全般に効果があるが、その弓で射貫くのは獣である。


しかし“弓術士”の放つ矢は、時に強大なドラゴンの鱗を貫くだろう。


その差を生むのが「ボーナス」である。


“狩人”は多種多様なスキルに、いわば分散してボーナスが発生しているのに対し、

“弓術士”のボーナスは、弓術に集中しているのだ。


そのため、たとえ両者が同じ弓の奥義を習得したとしても、効果に差がでる。


これは、“弓術士”と“狩人”だけの話ではない。

“コック”と“パティシエ”や“戦士”と“剣士”のように、多数存在する。


ギフトによって対象となるスキルや効果に差があれど、ギフトそのものに存在するボーナスの総量は一定であり、


それらにおいて、ボーナスの対象が少なく、より効果の特化している方を“特化系ギフト”と呼ぶ。




これは、各地にある神殿に務める神官たちに伝わるギフトの考え方。


「人それぞれ差があれど、神々が私たちに授けてくださるギフトは、その愛には差はないでしょう。


 もちろん、全く同じ名前のギフトであっても差が生まれますが、それはその人の努力や個性によるものです」


各地の神殿において多少の違いがあれど、成人の儀で神話に関する話の最後に伝えられる教会の思想である。


ギフトそのものに差はなく、だから皆平等であると。




しかし、この言葉には、それを授かったものにしか伝えられない続きがある。


「しかし、時折神々は偏愛を授けられます。だから偏愛を授かったものは、その愛に答えるように努めましょう。


 その期待に恥じぬように努めましょう」



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どこかで聞いたことのあるような、二人の声が聞こえたような気がしたけど、それどころじゃない。

「修羅」なんてギフト聞いたことがない。戦闘用のギフトかどうかもわからない。

けれど、そのギフトが僕に教えてくれる。体に力がみなぎってくる。


「ガキが何してんだ!オラッ!」


後ろから誰かが襲い掛かってくる。

しかし、その攻撃は僕には当たらない。

体を前に倒しただけで、それは空振りした。


さっきまで早鐘を鳴らしていた心臓の音がしない、妙に落ち着いた気分だ。


視線を後ろに動かす。


“加護無し”だ。


僕を、僕とおっちゃんと、馬車に乗っていた人たちを襲った人たちだ。


ふつふつと怒りが沸いてくる。


彼らさえいなければ、何事もなく村に帰れたのに。


目の前の男は攻撃を避けられたことに驚いているみたいだ。


僕はその顔面に拳を突き入れる。


剣の代わりの棒切れで素振りは何度もしたことがあるし、何度か取っ組み合いの喧嘩もしたことがあるけれど、

僕は戦闘に関して全くの素人だ。


なのに、男は吹っ飛び、気絶した。


体に力がほどばしる。


これがギフトの力なんだ!


今なら何でもできそうだ!


僕はおっちゃんの目前に迫っていた“加護無し”にむかって体当たりする。


それだけで彼らの持つ盾を吹き飛ばした。


驚いた彼らは持っていた武器を振り下ろしてきた。


それよりも僕の拳の方が早い。


それからは何人もの“加護無し”が襲い掛かってきたけれど、僕にはとても及ばなかった。


何人もの敵が一斉に来ようとも、ギフトが僕に力をくれた。


だから、ぼくは怒りにまかせてヤツらを殴り続けた。


後ろから腰に抱きつかれる。


こいつもさっきのやつと同じようにしてやる。




「・・・めろ!セシル、やめろ!」




聞きなれた声がする。





頭の中を支配していた怒りが、霧が晴れるように消えていく。


「・・・おっちゃん?」


「もういい!みんな気絶した!これ以上する必要はない!」


おっちゃんが、僕を抱き止めながら叫ぶ。


あたりを見渡す。


僕の周りには何人も“加護無し”が気絶していた。もう立っている“加護無し”はいない。


痺れ粉も漂っていない。風に吹かれたみたいだ。


馬車に乗っていた人たちも、何人か怪我をしていたりするけれど、大事には至ってないように見える。



「誰も死んじゃいない、でもこれ以上は死んじまう。いや、殺してしまう。だからもう十分だ、落ち着いてくれ」



足元をみれば、原型がわからないほど顔が歪んでしまった大柄の男が倒れていた。


そして僕の手は血にまみれていた。


痛くはない、僕の手には小さな傷はあるけれど、こんなに血が出るほどじゃない。


だからこれは返り血で、僕がこれをやった証拠で。


そこまで考えたところで、


目の前が真っ暗になった。



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