0色目 「今日から僕は何色ですか?」
ここは辺境、北部アイン地方。
しんしんと雪の降る夜の事だった。
「今よ!いきんで! 頑張りな!この子も頑張ってるよ!」
そこでは一つの命が生まれようとしていた。
ここは辺境のそのまた田舎、ろくな設備もないが、
人一倍経験を積んだ、村での治療を一身に受ける女医が
助産婦としてその場を取り仕切っていた。
「あんたは早く湯の用意をしな!それと布もね、はやく!」
「あ、あぁ、今行く!」
男はいかにも初めての経験といった風で、ばたばたと駆け回っていた。
そしてまもなくー
「おぎゃぁ!おぎゃぁ!」
小さな村に一つの命が生まれた。
その子は名前を「セシル」と名付けられ、村の人達に愛されて育った。
セシルはその村の他の子供たちよりも強い好奇心と正義感をもっており、
彼は祖母の語る様々なものがたりに目を輝かせ、胸を躍らせた。
その中でも彼が特に気に入ったのは、祖母が若い時に歩んだ冒険の数々だった。
祖母は優れた魔法使いであり、現役を退いた今でも有事の際には力をふるうほどであった。
それゆえに、こえた修羅場も多く語る話には息をのむ程の迫力があり、そして彼に夢を与えた。
15歳の成人になった春、人々は神殿に向かい神から「ギフト」と呼ばれる力を授かる。
例えばこの村にいる女医は「治療士」の「ギフト」を持っており、
回復系スキルも多く習得しているため、ろくな設備のないこの村で怪我による死者がほとんど
出ていないのも授けられたギフトの力が大きい。
そして彼自身も戦闘系「ギフト」を授かれば、祖母の語るような冒険がしたいと。
しかし「ギフト」は神から授かるものであり、自分で選べるものではない。
肉体がたくましければ近接戦闘系「ギフト」を授かりやすいと聞くと必死にトレーニングをした。
いくつもの季節は廻り、春。
僕は15歳になる。
僕の住む小さな村には神殿と呼べるほどの施設はなく「ギフト」を授かるには中央アイン地方の
大きな街に行かなければならない。
この国においてはさほど大きな街ではないが僕はこの村と近くにあるもう一つの村しか見たことがなく、
話に聞く「街」というものにも心惹かれていた。
そして今日は僕がギフトを授かる成人の儀式を受けに中央アイン地方の街「グリムニンド」に向かう日であり、
村人たちがセシルを祝い、総出で見送りに集まってくれていた。
「気を付けていってこいよ」
「どんなギフトを授かったのか、ちゃんと帰ってきておしえてね?」
「心配しなくても大丈夫だよ、狩人のおっちゃんもいるし」
「・・・やっぱりついていくわ、心配よ」
父さんと母さんが心配してくれている。
僕も冒険がしたいというと、それを聞いて「やめたほうがいい」とか「戦闘職でももっと安全な道もある」
と僕の体を心配してくれる大切な両親だ。
「心配するな俺がついてる、それにお前のカーちゃんも戦闘系のスキルも最低限しかもっていないだろ?
しかも俺は索敵系スキルも持ってるんだ、万が一敵に近づかれても気づけるしな」
おっちゃんは、狩人のギフトを持っていて、弓系スキルや索敵系スキルの習得が早く、その効果に影響を及ぼすことができる。
ギフトに適正がなくともスキルの習得は可能だが、ギフトがあったほうが習得が早くギフトに関係のないスキルは
あまり習得されないらしい。
しかしこの村の住人は「ギフト」に関係なく戦闘系スキルを最低限は習得している。
獣や魔獣といった獣害が多く、村人の人数が少なく、それ故に戦闘系ギフトの持ち主も少ないためだ。
ちなみに僕の父さんは農夫のギフトをもっていてこの村の作物に多く貢献していているが、根術のスキルを、
母さんは裁縫士のギフトを持っていて、服飾や靴に至るまでを父さんの作った素材やおっちゃんの捕ってきた皮なんかで作っているが、
攻撃系魔法もいくつか習得している。
しかしそれでも、戦闘系スキルをメインに習得しているおっちゃんには遠く及ばない。
それほどにギフトの影響は大きい・・・らしい。
そもそも、ギフトを授からなければスキルを得ることもできないから、スキルの習得さえできなかった。
この村で出来る仕事といえば大人たちの手伝いくらいで歯がゆい思いをしてきた。
でもこれでみんなに恩返しができるようになるかもしれないと思うとなんだかとてもワクワクする。
戦闘系のギフトを授かれば両親には反対されてるけど、やっぱり冒険がしたい。そうじゃなくても、村の周りの魔物を倒せるようになれる。
僕の成人をこんなに祝ってくれるみんなに少しでも恩返しするができる。
僕がそんな風にどこか上の空になっていると、
「よし、じゃあそろそろ行くかセシル!」
おっちゃんがもう出発するぞと、声をかけてきた。
「ちゃんとかえってくるのよ、セシル・・・」
「トモビス(おっちゃん)、セシルをたのんだぞ」
母さんをたしなめていた父さんも僕の心配をしてくれていた。
村で兄弟のように育ってきた子供たちや女医のおばちゃんも、どこか不安そうだ。
「そんなに心配しないでよ、大きい村からは寄合の馬車だし、馬車に乗ったらきっとすぐだよ」
実際、聞いた話では往復一週間くらいの予定だし、魔物もおっちゃんがいれば安心だ。
「荷物も、大丈夫だし、いってきます!」
「「「「いってらっしゃい!」」」」
皆の声を背に僕とおっちゃんは村を出た。
それからはとんとん拍子にすすんだ。
魔物にも遭わず、一日野営したけど、その後同じ街に行く人たちと合流して、近くの村で一泊してそこからまた一日進むと大きな村についた。
観たことのない景色にワクワクしたし、休憩の時にほかの村の人にいろんな話が聞けて楽しい時間がいっぱいだった。
遠くの大きなの村につくと、他の村からも何人か集まっており、様々な用で街に向かうために寄合馬車を利用するみたいだった。
馬車にのったら、街に近づくに従って多くなっていく人を見ていたらあっという間に街についた。
街についてからは、驚きの連続だった。まず、街の外壁の高さだ。遠くから街が見え始めたと聞いて馬車から顔を出したときはわからなかったけど、
近くでみると、僕の家を3つ縦に積んでも足りないくらい、どうやって積み上げたのかわからないほど高い石壁に圧倒された。
でもおっちゃん曰く稀にやってくるワイバーンを初めとする
強力な魔獣たちには崩されて中に侵入されることもあるらしい。僕が顔を青くしてると、
「あっちを見てみろ」というおっちゃんの指さす方をみてみると、石壁の上に大きな「バリスタ」という弓や話には聞いたことがある魔砲があったりと
ただの石壁ではなく街の警備の人たちが魔獣たちを撃退するための設備がそなえてあって、守るだけのものではないと知った。
次は外壁を超えた先の街の光景だ。馬車から降りて入ってすぐに目にしたのは街の警備の人たちの駐屯所だ。街でのルールの説明や、街の住民かどうかの確認をして
住民ではなかったときは、どこから来たのかの身分証明や、なぜ来たのか怪しい所はないかの調査をしていた。
僕たちの場合は、理由は15歳の成人の儀(なんか他になまえの案あったらそっちで)で来たのだけれど、身分証明にうちのおばあちゃんの推薦状だけだったのが
ちょっと不安だった。おばあちゃんは確かにすごい魔法使いだけど、とはいえ今ではただの(村の名前)村の一員のはずだ。
それなのに、推薦状の一つでさらっと入れてしまった。
・・・おばあちゃんは一体何者なんだ。
駐屯所を抜けるとすぐに大通りだった。様々なお店が所せましと並んでいた。村でのお祭りよりも何倍も人がいてとても活気づいている。
「今日は成人の儀の日だからな、ほんとにお祭り騒ぎなのさ。浮かれたやつらが金を落としてくれるからな」
「・・・無駄使いしないようにするよ」
「ハハハッ!そうは言っても、例えばお前が戦士のギフトを授かったら武器になるものがいるだろう?」
「それはそうだけど・・・」
「そういうもんなのさ。それにうちの村でも消耗品を買い込まなきゃだからな、塩とか鉄とか・・・。それこそ俺の使う矢じりなんかもいくら大事に使っても限界が
あるからな。人が多ければ金を落としてくれるやつも多くなる。無駄遣いもしすぎなけりゃ、ちょっとくらいいいってもんさ」
「だからって、お酒の買いすぎはダメだからね」
「・・・ハハハッ」
さっきとは違う、乾いた笑いでごまかされた。
「そうだ、言い忘れていたが街の中では俺とはぐれるなよ。警備の連中もいるが街の中にはそれをすり抜ける悪知恵が働くやつもいる。ほら、あっちをみてみろ」
目線で示す先には警備の人がいた。警備の人が汚れた服を着た男から何かを受け取っていた。
「あれって、なにを渡してるの?」
「金だろうな。ああやって見逃してもらうのさ。汚い人間もいるってことを覚えていたほうがいい。次は向こうだ」
今度は店と店の間、大通りからそれた小道にぽつぽつと小さな店が並んでいた。
「あの辺の店はよく言えば専門店ってやつだな。オーダーメイドの武具はちょっと癖のある職人の方が良いもの作れるからな。他にも一応獣用ってことになってる
毒物なんかを取り扱ってる店もあるから、覚えとくと役に立つこともある。めちゃくちゃ金かかるがな」
おっちゃんから自慢げな街の説明を受けながらあるいていくと、
「・・・そんでここが今回の目的地、神殿だな」
ついに、神殿についた。
実のところ、遠目から神殿は見えていた。なぜなら神殿はほかの建物より背の高い建物になっていたからだ。街並みから少しだけ浮いている建築物。
でも決して悪い意味ではなく、景観を崩しているわけでもない。街の中心として、みんなの目につきやすいようにと目立っているかのような印象だ。
正面の大扉は完全に開放されており、中には人々がぞろぞろと集まっているのがよく見える。覗いてみれば僕と同い年くらいの子ばかりが集まっている。
そしてその最奥には巨大な石像がこちらを見つめているかのような、待っていたぞと歓迎しているような錯覚を感じた。
「よし、いってこい。」
「・・・凄く、緊張するよ」
「そりゃそうさ!なんたって人生かかってんだからな、お前が戦闘職なのか生産職なのか、それさえ決まっちまうんだからな。
だけどさ、セシルにとっても夢にまで見た日なんだろう?ワクワクはしても、ビクビクせずにいってこいよ」
「それもそうだね。よーし、いってくる!」
「おーう、ここで見ててやるから安心しろよな」
おっちゃんに見送られながら神殿に入る手前の扉で神官であろう二人が近づいてくる。
二人はほぼ同じ服装だけど、入っているラインの色が異なっていることによってかなり違う印象を受けた。
青いラインの入った服の女の人が、
「こんにちは、成人の儀を受ける子で間違いないかしら?」
「はい!成人の儀をうけにきました!」
「じゃあ、名前と出身をおしえてくれる?」
「えっと・・・」
僕は正直に答えた。
女の人は手元の用紙に何かを描き込むとその用紙を僕に渡して、
「じゃあ、これをもってちょっとだけまっててね?もうすぐはじまるから」
「わかりました!」
僕は言われるがままに神殿の中に進み儀式の参加者たちの中に混ざる。
人に隠れて見えずらかったが、石像の手前が一段高くなっており、そこにおおきな祭壇のようなものがあった。
祭壇の前では白黒のラインが入った神官が、祭壇に五つの色の玉を慎重に並べていた。
そして並べ終わると、こちらを向いて挨拶を始めた。
「本日、成人の儀を執り行う、アイン神殿の神官を勤めているアヤシと申します。
皆さんもすでにご存じでしょうが、我々にギフトを授けてくださる神々の話をします」
そういって、後ろの大きな石像を指し、
「こちらが、創造神さまです。創造神さまがこの世界そのものを創造されました。
そして、御自らの世界を導くものとして幾柱かの神々を生み出しました。そしてこちらが・・・」
祭壇に並べられた五つの玉を指し
「五色神様がたの力が宿る宝玉です。五色神様方はそれぞれ与えてくださるギフトがことなり、
赤神様は主に力のギフトをつかさどっており、戦闘職ギフトを授けてくださります。
青神様は主に精神のギフトをつかさどっており、魔法職ギフトを授けてくださります。
緑神様は主に自然のギフトをつかさどっており、生産職ギフトを授けてくださります。
黄神様は主に挑戦のギフトをつかさどっており、技術職ギフトを授けてくださります。
最後に白黒神様は決断や秩序、万物の終わりと始まりをつかさどっておられ、裁判官や執行官などのギフトを我々に授けてくださいます。
また、それぞれの神様方は~~~~」
と、神話に関するお話をつづけていた。
だけど僕は
創造神像が手にしている
透明な宝玉から目が離せなかった
成人の儀は順調に進んで行き、前の人から順番にギフトを授かっていった。
先程のアヤシさん曰く、稀に神様から直接のお言葉とともにギフトを授かることもあるらしく、
それをいただいた人は、後の世に名を残す人も多いらしい。
とはいえ本当に稀らしく、大勢いた参加者のなかで未だにお言葉をもらったと言う人はいなかった。
僕は結構ギリギリについたみたいで、最後の方に並んでいたのもあって、いろんな人がギフトを受け取る光景を緊張せずに見ることが出来た。
まず、渡された用紙を黄色のラインの神官さんに渡し、その後祭壇の前にひざまずき、祈る。
すると一つの宝玉が光りだし、その光がその人に宿る。
ギフトが宿ったとき、自身のギフトや習得したスキルなどが確認できるようになるらしく、そのギフトを黄色のラインの神官さんに言うと
用紙にギフトの名前をかいてもらって「そのギフトを活かすも殺すも君次第だ、君の人生に栄光あれ!」と送り出している。
そしていよいよ僕の番が回ってきた。
ドキドキが、いや、ワクワクが止まらない。
奇跡の時間が始まるんだ。
僕は前の人に習い、用紙を神官さんに渡し、そして祭壇の前にひざまずいた。
そして目を閉じて手を重ね、目を伏せ、祈った。
どの神様からギフトを授けられるのか、それを思う時間さえ惜しいとばかりに赤い光が視界に入る。
『早速で悪いがお前にはオレのギフトこそふさわしい!さぁ、受け取れ!』
大音量だった。
びっくりした僕は思わず目を開くと、赤の宝玉が輝いていた。
赤神様のギフトを授けられる?いや、この勝気な女性の声はは一体どこから?
混乱する僕にさらに追い打ちをかけるかのように黄色の宝玉が光る。
今度は声だけでわかるほど、とても明るい青年の声がする。
『ちょーっとまったー!君には僕のギフトこそふさわしい!今なら君のためにオリジナルギフトを授けるよ!』
『んなっ、てめぇ!』
二つの宝玉が同時に争うように点滅していた。
僕の後ろからざわざわと声がする。
次は青い宝玉が光る。
『お前たち・・・、得体の知れないギフトを渡そうとするんじゃない。すまないな、彼らが迷惑をかけた。人生をかけたギフトだ私のギフトは人間界でも実績を
もつギフトだ。どうだろうか?』
芝居がかった若い男の声がする。
どうやら僕に話しかけているようだが、返事なんてとてもできない。
するとそれに黄色の宝玉が反対するように光りだす。
『得体の知れないとは失礼な!歴史的にはそうかもしれないが・・・!』
そして言い争いが始まった。
誰が言い争いをしているんだ?
誰と誰が?
いろんな考えがグルグルと頭の中を廻る。
『ほっほ、若い彼らはは喋るのに忙しそうじゃし、どうじゃ儂のギフトにせんか?』
しわがれ、聞き取りずらい老人の声がこっそりと語りかけてくる。
するとすかさず言い争いをしていた赤い宝玉から、
『抜け駆けすんじゃねぇよジジイ!』
と、緑の宝玉に対し声をあげる。
『お前がよく言えたな。お前こそ元凶だろう』
しかし青い宝玉がまさに正論といった風に言い放つ。
そしてさらに言い争いが激しくなっていく。
ここに来てやっと状況がつかめてきた。
印象が想像と違ったけれど、かれらはきっと神様達なんだろう。
威厳があって、もっと落ち着いていて、そんなヒトたちだとおもっていたけれど、
今、目の前にある宝玉から聞こえてくる声にはそういった物は感じられない。
なんなら親しみさえ感じてしまう。
『わかった、じゃあ君に勇者のギフトをさずけよう!』
黄色の宝玉・・・きっと黄神様が、奥の手と言わんばかりの、聞いたこともない、しかしどこか惹かれるギフトを勧めて来た。
しかし、ここで最後の宝玉、白と黒が互いの中に入ろうと渦巻いている白黒の宝玉が光る。
『それはルール違反だと"黒"は言っています』
『"白"はその行動に憤りを感じています』
抑揚のない少女達のこえが黄神様を咎める。
この声が白黒神様だろうか。
他の神様達もそれには賛同といった風で黄神様は『くっ・・・』と歯噛みしている様子だった。
『それよりも賢い選択があると"黒"はあなたに言っています』
『"白"はあなたにギフトを授けたがっています』
さらっと白黒神様はギフトを勧める。
これにはほかの神様も賛同できず、黙ってはいられないみたいでまた言い合いが激しくなった。
姿こそ見えないが、目の前で繰り広げられる論争に、僕は笑い出しそうになるのを必死でこらえていると
僕の後ろでは神官さんたちが「なんだあれは!」「こんなのみたことねぇ!」「五つ全部光ってるわよ!」
と大騒ぎになっていた。
僕の後ろで騒いでいる声に気を取られている間に、神様達の言い合いが終わっていた。
一体だれの、どんなギフトに決まったのかワクワクしていると、五つの宝玉は光っておらず、僕はギフトを授けてもらえなかったのではないかと
少し焦った。
しかしそこで更なる奇跡が起こった。
創造神様の像がうっすらと、しかし気のせいではないとはっきりとわかるほど光っていたのだ。
光は眩いほどに輝き、しかし全く不快ではない。
創造神様の像から生じた光は僕の方に伸びる。
創造神様の像から伸びてくる光に手を伸ばし、その光を受け取った。
創造神様の像が発する光は次第に収まり、今までのは幻だったのかと思いそうになる。
けれど手のひらの上に残ったその光が今のは現実に起こったことなのだと教えてくれた。
僕はそれを胸の真ん中に押し当てた。
誰から言われたわけでもないはずなのに、そうするのが正しいように感じたからだ。
するとその光は僕の中に入り、僕の体と一体になったようだった。
もう一度、創造神様の像に目を向けると創造神像は完全に輝きを失っていた。
でも、ほんの少しだけ
ほんの少しだけ創造神様の持つ水晶玉が光っていた
その光は目を凝らさないと見えないほど弱くて
けれど僕の目には確かに見えていた
その光に色はなく
しかし確かに感じられた
光は僕の方にやってくると僕の体を包み込んだ
それはとても温かい
しかし炎のような熱さではなく、僕が村のみんなと過ごしているときに胸の奥で感じる温かさだ
それが僕の中に直接注がれているような感覚だった
温かな時間が終わるころには、神官たちはさっきまでの大騒ぎを止めていた。
そして代表するかのようにアヤシさんが僕に
「いったい、なんのギフトをいただいたのですか?」
と、問いかけてきた。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
そういって、僕は目を閉じた。
ギフトの名前や使い方は、授かったときに自然とわかるようになると聞いている。
動物が自然と歩くように、人が手を自由に動かせるように。
ギフトとはその人の新たな力だから。
自分の中のギフトに問いかける。
その名は・・・
「ギフト・・・無色・・・です」
「・・・無色?」
アヤシさんは唖然とした感じでそういい返す。
周りの神官さんたちも、
「無色ってあの?」「それ以外どの無色があるんですか」「でも最初から無色ってマジかよ・・・」
と驚いているようだった。
神殿の中がザワザワとしてくる。
僕のギフトはそんなに珍しいものだったのだろうか。
確かに僕も聞いたことがないギフトだけれど・・・
そこで、ふと先程の奇跡を思い出し、アヤシさんたちに言ってみる。
「そういえば、さっき神様達のお声を聴いたんですよ」
「神はなんと!!、なんとおっしゃられていましたか!?」
「うわっ!」
アヤシさんが急に形相を変え、僕に詰め寄ってきた。
僕は目をとじ思い出しながら正直に感じた印象を話した。
「皆さん、とても親しみやすそうな、とてもいいヒトたちでしたよ。
赤神様はとても活発な女性で、黄神様はとっても明るい印象でした。
青神様はすごくカッコイイ男の人で、緑神様はちょっとお茶目なおじいちゃんでした」
「そんな方々はどうでもいいのです!、神は!白黒神様は!なんと!?」
「白黒神様はとてもきれいな二人の少女で、正直可愛らしいお声でし」
「そうでしょうそうでしょう!!」
アヤシさんは僕の発言に食い気味に割り込んできた
「可愛らしいなどと無礼な発言も白黒神様は寛大な心で包み込んでくださるでしょうが、
あまり人前でそのような発言をしないようにしなさい!」
「それで!!どのようなお言葉をさずか」
「アヤシ神官!落ち着いてください!」
さらに詰めよってきたアヤシさんに対し、
黄色のラインの入った神官がただならぬ状況を察したのか、
後ろからおなかを抱えるように抑止していた。
「無色の君!、もう儀式は終わったから早く教会から出るんだ!」
「は、はい!」
そうして僕は教会を早足で退出した。