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チェストの中の手紙

作者: 本郷・S・泉

私は手紙が好き。

それが届くものでも、届かないものでも。愛すべきものだと思う。

涼やかな仮面で激情を綴じた愛すべき貴婦人。

「思いの丈をぶつける」そしてそれをそっと涼しやかな綺麗な便箋でそっと綴じる。

なんて慎ましやかな。燃えたぎる炎だろう。

涼やかな顔をどう名の便箋にナイフで切れてを入れれば、出てくるのは、思いの丈を込めた感情の塊。


嗚呼、なんて美しい。




以前私は、大好きだった人と不自然に距離が出来て、そのまま修復不可能になった。

彼はそのまま進んだ。

私の時だけが止まって、距離が広がった。


未だに愛してるけど、伝えない。

どこが好きとかじゃないから。

君と過ごした時間と、君が与えてくれたもの全て。全てをくれた君が愛おしい。

君が愛おしい。

私は、過ごした時間の中の君を愛しているのかもしれない。でも、それでも、私はその君を愛してやまないんだ。

確かにそこにいた。確かに感じた。あの温度、あの香り、あの声全部で覚えている。

記憶の中で美化されたものだからなんだ。愛は消えていないからどうしようもないじゃあない。

私が愛したあの時の君は、今の君じゃあないかもしれないけれど、今の君すら包含して愛してしまっていると君は知らないだろうね。

愛してるよ。



きっと伝えても、遠くにいすぎて私の気持ちはきちんと伝わらない。

私と君との距離は開きすぎた。

1度、伝えようと思った。馬鹿な考えだけど。

伝えようと思ったんだ。でも、やっぱり完璧な馬鹿にはなりきれなくて、自己満だと思ってやめた。

向こうは愛してなんかないだろうし、昔の女にゴタゴタ言われるのなんて嫌がるだろうからね。

遅すぎたんだ。


いつの話をしてんだって言われたらそれまでだけど。

私には残っているから、でも進みたくて、この愛の落とし所を見つけたくて、だから手紙にしたためたかった。


でも、彼にはただの過去。私には過去だけど今。

きっと伝わらない。


まだ抱えているのかと、もしかしたら縋ってるって笑われるかもね。

君はもう進んでいるから。そんな過去のガラクタ捨ててしまえと笑うよね。

いつまでも抱えてる私をきっと君は笑う。

面と向かっては言わなくても、君はきっと迷惑に思うだろう。

伝えられても困るだけだよね。

私は伝えたいけど、受け取るかどうかきっと選択しという選択肢を与えられないから、半ば強制のようなものになる気がする。でも君に強制はしたくないから私はこのままでいるよ。


ああ、こうして届かない手紙が増えて募って忘れられなくなってゆくんだね。


チェストの中の服で隠れる私の愛すべき愛子がまた1人増えた。

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