03 チートの十八番
「げぷゥ! にゃは〜! ほんとにあんな棒きれでお魚が取れると思わなかったニャ〜!」
大漁だったね。喜んでもらえて何よりだよ。
それで、サキュバスじゃないってこと信じてもらえたかな?
「よくよく考えたらサキュバスは悪魔の羽が生えてるんニャけど、お前にはついてないニャ。だから信じてやるニャ」
なにその特徴。一目瞭然じゃん。
「腹ペコだったんだニャン。意識も朦朧としてたし、許してニャン?」
可愛いから許します。
「ふぅ〜……それにしてもニャンタロッサ以外の子たちはみんな連れて行かれたとばかり思っていたニャ」
さっき言ってたこと?
確かサキュバスにさらわれたとか……。
「そうニャ。ニャンタロッサたちはもともと、この海辺近くの豊かな森の中で暮らしてたんだニャ」
うんうん。
「でもある日突然やつらがやってきて、村中の子たちが連れて行かれたんだニャ。きっと食べられちゃうんだニャ……ぶるぶる」
サキュバスって悪いやつらなんだなぁ。
「おまけに結界魔法を張られたせいで、サキュバス以外の子たちが自由に行き来できる縄張りがすんごく減っちゃったんだニャ」
子猫ちゃんがこの海辺に暮らしているのは、そのせいなんだ?
「そうニャよ」
ふーむ。サキュバス以外の侵入を許さない結界魔法ねぇ。
……もしや。
ねぇ子猫ちゃん、その結界魔法のところまで案内してくれない?
「え、なんでニャ?」
ちょっと観光したいな〜なんて。
「観光もなにも、窓の外見ればすぐ分かるニャ!」
んん?
あらほんと。
よーく見ると薄いピンクがかった壁が張られてるね……。それもかなりの広範囲ときた。
……よし。
「ちょ、ちょっとどこ行くニャン!?」
ここが異世界だということはもう理解できたよ。
子猫ちゃんの耳が猫耳バンドじゃなくて、本物のけもの耳だってこともね。
つまり私は異世界に転生した。
……とくれば、何か特殊な力が与えられてるはず。
ワタシツエーみたいなチート能力が。
私の予想では……。
「結界に触れて何ぶつぶつ言ってるニャ……きもいニャン……」
ぶつぶつ。
ぶつぶつ。
なんちゃらかんちゃ、ほにゃららら。
結界よ、消しされェェェェい!
「ニャ!?」
おぉっ。
「す、すごいニャ!結界が消えちゃったニャ! どんな裏技使ったんだニャ!?」
ふふ、チートの十八番といえば無力化でしょ。
魔法の無力化ができないかなって思ったんだけど、よみ通りって感じだね。
よし、いざ子猫ちゃんの村へ!
「お、お前……ニャンタロッサのために……;;」
可愛い子はほっとけない。そうでしょ?
さぁ案内してよ。絶対お仲間を助けてあげるから!
「ニャうぅうん;; 分かったニャ! こっちだニャ! ついてくるニャー!」