12 ミルクはお乳から絞られる
「ほんっとーに信じられないニャン!!!」
トラコちゃんと手を組んでから一週間くらい経ちました。
その間私たちは、この城下町にある喫茶店『憩いの巣』でダベる毎日でした。
そしてついでに、その間ず〜っとニャンタロッサちゃんはこんな感じ。
「敵と手を組むなんてどうかしてるニャン!」
「そ、そうでありますよ! 何度も言いますけど、私はキュベレイ様になんと報告すれば良いのでありますか!」
も〜ふたりともうるさいなぁ。
「うるさいも何もないニャン! はぁ〜〜〜手を組んでも何も言ってこないあたり、適当にあしらわれてるだけって分からないかニャン!?」
まだわからないでしょ。本当に手を借りたい時に声がかかるかもしれないし。
分け前……集まった半獣ちゃんたちは私とトラコちゃんで半々ずつだし。
むふふ。今からニヤけちゃうよ。
「その約束すら守ってくれるかも怪しいのにニャ」
私は信じてるもん。変態性を。
「変態が変態性いうニャし……ってか、そういえば変態の本当の名前聞いてなかったニャン」
あっ、そういえば。
「えっ、おふたり自己紹介もせず今に至ってるんであります!?」
うん。
「てへぺろニャン☆」
「ひ、ひぇ〜ッ……てっきり私が仲間に加わった時に自己紹介してもらえなかったから、やんわりとハブられてるのではないかと思っていたであります……」
そんなことしないよ。
えぇと、こほん。
私は安藤雪だよ。よろしくね。
「ニャンタロッサだニャ。って今更すぎるニャねwwww」
「ヤヤスケーヴェイでありますw」
あはは。
「ニャはは^^」
「ははは〜……」
「なにわろてるニャン」
痛た爪たてないで……。
「あ〜〜〜〜マジ疲れたぜ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
ぬ?
団体のお客さんだね。
軽く20人はいるかな……。
「わっ……あの方々、鬼でありますよ……(小声)」
鬼?
「雪、知らないのニャン? サキュバスたちと同じ魔族の半獣だニャ」
へ〜、そうなんだ。
あぁ角があるね。ご立派ぁ!
「おぉいマスター! 全員に特濃ミルク出しやがれ!」
「は、はぁい……お、お待ち下さい〜……!」
「ったく、事前に来店予約してあんだから、先にミルク絞っとけよ……ちっ」
ん……?
ミルクを……絞る……?
「ここ憩いの巣のマスター、モォモォは牛の半獣だニャ。彼女の……その……ぉ、ぉ乳から絞られるミルクは……とっても濃厚だってイシュタリア全土で有名だニャン……////」
なん……だと……。
確かにこの一週間、ずっと賑わいっぱなしだったね、店内。
っていうか何さ、搾りたてミルクだって? けしからんすぎない?
「ま、まぁけしからんのは確かニャ……////」
「でも美味しいでありますからね……////」
私もオーダーしちゃお。
「や〜今日は無理だと思うニャン。20人分もミルク絞ってたらカラカラになっちゃうニャン」
あ〜そっか……。
くそぅ、明日忘れずに頼まなきゃ……。
「にしてもよ〜! 獅子王のヤツ、気前良すぎんだろ〜w 城下町から脱走した半獣を捕まえた数だけ財宝をくれるとか! 最高かよ!」
「だよな〜! 財宝の受け渡しが後払いなこと以外は最高の仕事だぜ」
「あぁ〜はやく財宝ちゃんに会いてぇぜ……」
ふむ。
トラコちゃんも考えたね。
ちらばった半獣を集める仕事を他に任せるとはね。
「……鬼とかいう怖いネエチャン集団に取引を持ちかけるとか、あの虎の方、肝が座ってるでありますな」
「だよニャ〜。ほんと。さっすが世界中の可愛いを集めるとかほざくだけあるニャン」
ほざくって何さ。立派な夢だと思いますけどー?
「うるさいニャ変態」
へ、変態って。ちゃんと自己紹介したじゃんー。
「ツーン、ニャ」
むぅ。
「おや? 雪殿、虎の方から頂いた連絡用の魔石が振動してるでありますよ?」
むっ。
どうやらお呼びのようだね。