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48話 聖王国を観光してみた

【前章までのあらすじ】

聖女襲来 → 台座がついてる!? → なんやかんやで勇者になることに → 聖王から勇者の公認を得る → 祭りの始まり


◇魔帝メナス(マティー) Lv100

元ラスボスにして元ノア帝国皇帝。昨日、勇者になる。

本日の昼食:海鮮パスタ~ファルセタ風~、シーフードピザ、牡蠣のマリネ……etc。


◇聖女ラフリーゼ Lv1

【未来予知】スキルを持つ『レジノア』ヒロイン。破滅の未来を回避するためにメナスを勇者にする。

本日の昼食:蒸し魚とコールスローサラダ(+ケーキセット大盛り)。

 聖王から勇者の公認をもぎ取った翌日。

 俺はひとりで聖都の市街地をめぐっていた。


 穏やかな陽光に照らされた白亜の都――聖都ファルセタ。


 そんな都は今、勇者誕生を祝って、お祭り騒ぎとなっていた。

 街は花吹雪で彩られ、大市が開かれ、楽士の演奏とともに人々が踊る。昨日の今日だというのに、人間のお祭り根性というものはすごいものだ。

 俺は台座つきの聖剣を担ぎながら、聖都の景観をゆっくりと堪能する。


「へい、勇者様! アンチョビサンドお待ち!」


 屋台のおっさんがサンドイッチをわたしてくる。

 もちろん、勇者特権で無料だ。というか、市民たちがただで貢いでくれる。


「ほぅ、これが噂に聞く、聖都のアンチョビサンドか」


 ゲームで主人公アレクたちが食べているのを見てから、一度食べてみたいと思っていたのだ。

 聖都は内陸イーサ海に面しており、また獣肉をあまり食べない聖職者が多いという土地柄、海鮮料理が名物らしい。俺の愛読書でもある『エンデバー冒険記』にも、そう書いてあった。

 アンチョビサンドを一口食べてみるが……うまい。


「くくく……この俺の舌を失望させないとは、なかなかやるではないか。褒めてつかわす」


「そりゃ、聖都のソウルフードだからな! うちの漁師たちは、これを食べないと漁は始められないんだ! ちなみに、海を見ながら食べると絶品だぞ!」


「ほぅ……? まだ進化するというのか、面白い」


「勇者様! うちの小魚のつくだ煮もどうだい!」


「無論、もらってやろう」


「勇者様! レモネードができたよ!」


「よし」



「――よし、じゃありませんよ!」



 と、ラフリーゼがぜえぜえ息を切らしながら駆け寄ってきた。

 聖都の市民たちが、突然の聖女来襲に驚いたように道を開ける。こいつも聖都ではかなりの有名人らしい。


「なんで俺について来たんだ? 寂しかったのかな?」


「あなたが自由すぎるからですよ!?」


 褒められた。


「ここで、なにやってるんですか!」


「見てわからないのか? B級グルメツアーだ」


「今は、勇者誕生パレードの真っ最中ですからね!? パレード中に主役が馬車から降りてグルメツアーなんて、前例がありませんよ!?」


「くくく……前例がないのは当然だ。なぜなら、今までの世界には俺がいなかったのだからな」


「でしょうね!?」


 ラフリーゼが頭を抱える。


「もっと勇者であるという自覚を持ってください! 公務中でなければ自由行動を認めますから!」


「おいおい……忘れてはいないか?」


「え?」


「勇者とは、神の意思を反映する存在……つまり、俺がパレードをサボるのも神の意思だし、B級グルメツアーをするのも神の意思なんだ」


「神の意思のバーゲンセールやめてください!」


「そもそも、俺はこの国に観光に来ただけなのだが」


 勇者になったのも、その特権をフル活用するためだ。

 最初からラフリーゼに協力などはしていない。

 聖王から公認を勝ち取るときに一緒にいたこともあって、仲間意識でも芽生えているのかもしれないが……あのときは、たまたま目的が一致していただけだ。


「いいですか、マティーさん。勇者というものは、人々を導く存在なのであって……」


「わぁ、勇者様だ!」「聖剣に台座ついてる!」「すげー、伝説の台座だ!」


「勇者の本質は戦いにあらず。勇者とは暗く陰った人々の心の灯る、希望の光……」


「勇者様! 聖剣の台座さわっていい?」「私も触りたい!」「俺もずっとさわりたいと思ってたんだ!」


「つまり勇者とは……」


「おい、いつまで台座さわってるんだ!」「ちゃんと列に並べよ!」「じゃあ俺、列整理係やるな!」



「――台座が人気すぎて話が進まない!」



 ラフリーゼが叫ぶと、子供たちが蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「と、とにかく、勇者としての自覚を持ってください!」


「……まったく、クソ真面目なのは昔から変わらないな」


「はい……?」


「少しは俺を見習って、肩の力を抜けと言ったんだ」


「あなたが抜きすぎなんですよ! 肩脱臼でもしてるんですか!?」


 それから、ラフリーゼがくどくどと勇者講座を始めたりするが。

 俺は無視して観光を再開する。


「勇者バーガーうまし。聖剣サブレうまし」


 そんなこんなで食べ歩きをしていると。

 ふと、気づいた。


「……む、この都はやけに男が少なくないか?」


 街行く者たちは、女と子供と老人ばかりだ。神話キャンディーなるものを買ったついでに、そこの店主のオヤジに尋ねてみると。


「そりゃあ、勇者様、あれだよ。この国の男は、みーんな聖王軍に志願するからなぁ。うちの息子たちも、今は聖王軍にいるんだ」


「聖王軍?」


「この国のために戦ってる聖王陛下直属の軍隊さ。かくいう俺も、昔は聖王軍の一員として七魔王軍と戦ってたんだが、膝に矢を受けてしまってな……」


「他のオヤジたちも同じようなものか?」


「ああ。生きて帰った男たちは、みんな膝に矢を受けている」


「膝に親でも殺されたのか、敵軍は」


 いや、俺の配下の軍ではあるが……。

 それにしても、聖王はずいぶんと、なりふりかまわず兵を集めたものだな。この数だと常備兵というわけでもないだろうし、これから大規模な戦争をする気満々ということか。

 市民たちから不満のひとつやふたつは出そうなものだが、聖王のすることに誰も疑問を持っていないらしく、店主も誇らしげに聖王軍について語りだす。

 モブのセリフをいちいち聞くのも面倒だし、そろそろ移動しようと足を浮かせかけるが。

 そこで、ふいに店主の目から感情が抜け落ちた。



「――あー、最近は、“また、ノア帝国の魔女アレクサンドラが進軍してきたらしい”からなぁ。息子たちも“聖王陛下のために立派に戦ってくれる”だろう」



「…………なに?」


 思わず、足を止める。

 ……魔女アレクサンドラ? それは、アレクのことか……?




――今日、ポイント評価から逃げたら、明日にはもっと大きなポイント評価が必要になるぞ。



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