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46話 聖王国を襲撃してみた



「――扉が破られたぞ!」「襲撃だぁ!」「出会え出会え!」



 ソリスティア聖王国の大聖城。

 世界産みのマゥル神をまつる女神教の総本山は、今――混乱のただ中にあった。

 側柱に囲まれた広間に、斧槍やメイスを手にした神官兵たちが慌ただしく集まりだす。

 そんな神官兵たちに包囲されているのは、もちろん俺だ。

 グラ車(※グラシャラボラスの馬車)によって破壊された裏口扉の上に立ち、聖剣を肩にかつぎながら不敵な高笑いをぶちまける。



「――頭が高い。勇者の御前だぞ」



 とりあえず、重力魔法【グラビティ】で、さくっと神官兵たちを床に這いつくばらせる。

 困ったときの【グラビティ】。いつも身近に【グラビティ】。


「ぐ、ぐぅぅ……ッ!」「なんという禍々しき力!」「こんな賊どもに……!」


「賊……? くくく……この聖剣が目に入らぬか?」


「せ、聖剣?」「バカな!」「どちらかというとハンマーじゃないか!」


「ほぅ、物分りの悪いやつらだ。仕方がない。プリさん、ミコさん、懲らしめてやりなさい」


「らじゃーです!」


「……いや、すでに懲らしめ尽くされてる件について」


 などと、楽しく遊んでいると。



「――って、なにやってるんですか!?」



 遅れて、ラフリーゼが馬車から這い出てきた。

 初めての空の旅で目を回していたが、ようやく復活したらしい。


「なにって……見てわからないか? 勇者活動だ」


「歴代勇者に手をついて謝ってください! というか、まだ聖王陛下から勇者の公認もらってないですからね!?」


「む、そうだった」


 気分はすっかり勇者だったが、勇者の公認をもらわなければ自由に活動できないんだった。

 そもそも、この大聖城にやって来たのも、聖王に会うためだ。

 しかし、馬車で扉に突っ込んだら、「襲撃だぁ!」「巨大な凶器を持った輩が乗り込んできたぞ!」「なんて極悪な人相なんだ!」「出会え出会え!」とか言われて襲われたから返り討ちにしてみた。


「そもそも、なんでお城に馬車で突っ込んでるんですか!」


「くくく……脇見運転をしていた」


「なにやってるんですか!? それに敵意がないのなら、神官たちにもそう説明すればいいじゃないですか! なんで流れるようにバトルスタートしてるんですか!」


「楽しくなっちゃって、つい」


「あぁああ、もぅ~!」


 ラフリーゼが髪をわしわしとかく。


「ミコリスさんたちからも、なにか言ってやってください!」


「え? まあ……いつものことだし」


「いつものことですし」


「慣れてらっしゃる!?」



「くくく……見るがいい。城の柱に、『勇者参上!』と落書きしてやったわ」



「あぁあああっ!? ちょっと目を離した隙に!?」


 涙目になりながら騒ぎだすラフリーゼ。

 ラフリーゼといえば、『レジノア』の清楚代表と言われるぐらい、おしとやかなキャラだったはずなのだが。


「……なにか、ストレスでも溜まってるのか?」


「ええ! おかげ様で、ストレスが絶賛インフレ中ですよ!」


 なるほど。聖女というのはストレスフルな仕事らしい。


「ああぁ……世界一勇者にしてはいけない人を、勇者にしようとしてる気がする……これでは勇者の格が……」


「うん、まあ……なんか頑張って」


 なぜかミコりんが同情したように、ラフリーゼの肩をぽんぽんと叩く。


「さて……ともかく、まずは聖王に会って、勇者の公認をもらわなければな」


「うぅ、この状況でもらえるかどうかですが……ただでなくても、聖剣に台座がついててグレーゾーンなのに」


「まあ、大丈夫だろ。精霊王を呼べば一発だしな」


「精霊王様を呼ぶ?」


「ミコりん、あれをやってやれ」


「えぇ……」


 ミコりんは気乗りしない顔をしながら、手を前に掲げた。



「――出でよ、精霊王様」



 そう、命じると。

 近くの空間がぐにゃりと歪み、穴があく。

 そこから――ぱぁぁぁっ! と後光とともに精霊王が現れた。

 ……なぜか、四つん這いで。


「これが、精霊王……様……?」


「わしを様づけするのはよしてもらいたい。もっと冷たい声で舌打ちしながら呼び捨ててほしい」


「…………」


 ラフリーゼからゴミを見るような目を向けられ、精霊王が顔をぽっと赤く染める。


「……いえ、あの……精霊王様の威厳が行方不明なんですが。というか、子供たちに見せられる絵面ではないんですが」


「大丈夫だろ。なんかやたら光ってるし」


「そもそも、本当に精霊王様なんですよね……? あの、神話に出てくる高名な……」



「――いかにも。わしこそが精霊王である」



「ほら、本人もこう言ってるし」


「……四つん這いになりながらの自己申告ではちょっと」


 精霊王の信頼がゼロだった。

 これは、あまり使えそうにない。


「あの、精霊王様……もう帰っていいですよ」


「…………」


 四つん這いのまま無言で去っていく精霊王。

 しばらく、なんとも言えない微妙な空気が漂う。


「まあ、なんとかなるだろ。俺の知り合いに、洗脳が得意なやつもいるし……」


「勇者が黒いつながり持たないでください!」


「いざとなれば、この国を潰して俺が聖王になるまでだ」


「さらっと革命宣言しないでください!」


「注文が多いやつだ」


 ともかく、聖王に会わなければなにも始まらない。

 俺たちは近くにいた神官から、聖王の居場所を聞き出し、聖王がいるという大聖城前の広場へと向かった。



   ◇



 大聖城前の広場に入ると、まず人だかりが目に入った。

 聖都市民が全て入るんじゃないかという広場の中、1か所だけとくに市民がひしめき合っている空間がある。

 市民たちがうっとりしたように見つめる方向には、木組みの演壇があった。

 壇上にいるのは、きらびやかな司教服に身を包んだ老人。


 ――聖王ネフィーロ4世だ。


 ゲームでは革命軍を全面的にバックアップし、“正義の王様”という扱いを受けていた。

 おそらく、この世界でも同じような扱いを受けているのだろう。

 聖王がにっこりと胡散臭い笑顔を浮かべるたびに、市民たちから歓声が上がる。

 見れば、広場の中心にはこの聖王の像が立てられ、周囲の建物など至るところに聖王の肖像が描かれた布が掲げられていた。


「聖王さん、すごい人気ですねー」


「……他の国の王って、どこもこんな感じなの?」


「いえ……陛下が特別だと思います」


 ラフリーゼが顔を曇らせた。


「陛下は、異常なほど民衆を操ることに長けていますから……」


「まあ、やつの固有スキルは【噂操作】だしな」


「えっ、そうなんですか!?」


「ちなみに、【噂操作】のことを知っていることがバレたら消されるから注意しろよ」


「では、なんで教えたんですか!?」


「嫌がらせだ」


「もぉおおおっ! 私、あなたのこと嫌いです!」


 ラフリーゼが怒ったが、スルーする。

 それはともかく、聖王の大衆扇動のうまさは、俺も昔から痛感していた。

 聖王とは、何度も戦争という形でぶつかったしな。

 魔帝メナスの悪評を世界中に広めたのも、こいつだ。


 それで、あまりにも噂の流れ方が不自然だったから、七魔王の諜報役に調べさせた結果、聖王ネフィーロ4世が【噂操作】というスキルを持っていることが判明したわけだ。

 この【噂操作】スキルによって、聖王は自分の評価を上げることも、敵の評価を下げることも思うがまま。


 聖王の言葉ならば、民衆は疑うこともなく信じ込む。

 聖王が命じれば、民衆は喜んで戦場に行く。

 だからこそ、魔帝メナスとは正反対の、民から慕われる正義の王様というわけだ。


 ……だが、俺たちは知っている。

 この聖王こそが、破滅の未来の元凶であるということを。




――僕は本当にポイント評価なんだろうか……



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