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45話 推理してみた

「わらふじ GA文庫編集部(編集者)」様のTwitterにて、1章ラストシーンのモノクロ挿絵が公開中です!

(※5/20のつぶやきにて)


あと、さりげなくページ下に載せてある1巻表紙にタイトルロゴがつきました。


「とりあえず、くわしい話をしてくれる?」


「はい!」


 ラフリーゼは『よしきた!』とばかりに、どこからともなく説明用のパネルと資料を取り出した。


「資料はいきわたりましたか? それでは、お手元の資料の3ページをご覧ください」


 ……なんか始まった。

 資料をぱらぱらめくると、勇者になることのメリットなどが列挙されている。

 ――『将来の夢ナンバー1は、7年連続で“勇者”!』『勇者ってなんだろう? 街行く人100人に聞いてみたら、衝撃の結末が!』『スライムでもわかる! 勇者の歴史』『コラム:勇者がお店で使えるお得なクーポン一覧』……。

 そこまで見たところで、お手元の資料をそっと閉じた。


「なに書いてあるか、ちんぷんかんぷんです」


「……なんかもう、()()だけでも勇者になってあげたら? やることなくて退屈だとか言ってたじゃない」


「そんなに言うなら、ミコりんが勇者になってやれ」


 側に置いてあった聖剣を、ぽいっとパスする。


「え、ちょっ……重っ!?」


「よし、聖剣持ってるからミコりんが勇者な」


「は、はぁ!? あんたが持ってきたんだから責任持って勇者やりなさいよ!」


「くくく……残念だったな。今はバリア中だ。ゆえに、勇者にはならない」


「子供か! じゃあ、プリモちゃんにパス!」


「こ、来ないでください! 勇者は嫌です!」


「あたしだって嫌よ!」


「やめろ、寄るな。勇者が感染うつる」


「こ、この……!」


「で、では……じゃんけんで負けた人が勇者ということで……」



「…………あの、勇者をバイ菌扱いしないでくれますか?」



 ……怒られた。


「というか、もうお前が勇者やればいいんじゃないのか? どうせ偽物でもいいんだろ?」


「そ、それは……」


 ラフリーゼが自信がなさそうに伏し目がちになる。


「……わ、私に勇者なんて無理ですよ。力も、勇気も、ありませんから。まず、その台座つきの聖剣を持ち運べる気がしませんし」


 それに、とラフリーゼは続ける。


「神託で選ばれたのは、マティーさんなので」


「ふむ」


 そういえば、最初に会ったときも、『そのお顔は、間違いありません! 神託の通りです!』とか言ってたな。


「神託というと【未来予知】のことか。俺が勇者になっている未来でも見たのか?」


「はい、その通りですが……って、あれ!? 私の【未来予知】のこと、なんで知ってるんですか!? 一応、国家機密なんですが!?」


「お手元の資料に書いてあった」


「1ミリも書いてませんよ!」


「では、推理してみた」


「名探偵現る!?」


 しかし、そうすると……ゲームのときとはまったく予知が変わっているのか。

 さすがに、俺とアレクの顔を見間違えるわけもない。


 つまり、俺は――この先の未来で、実際に勇者になる。


 少なくとも、その可能性はあるということだ。

 俺がボランティアで勇者になるとは思えないし、勇者になるのに見合ったメリットがあるのだろう。

 少し興味が出てきた。


「そういえば、破滅の未来がどうとか言ってたな。それは魔帝メナスが関わるものか?」


「へ? いえ、違いますが……そもそも、魔帝メナスは死んだはずでは?」


「魔帝メナス復活ルートも熱いと思ってな」


「え、縁起でもないこと言わないでくださいよ! さすがに、魔帝メナスまで復活されたら世界が終わります! というか、魔帝メナスひとりいるだけで世界が終わります! あれは災厄そのものです!」


「……そこまで言わなくても」


 少しへこむ。

 たしかに魔帝メナス時代は、聖王国からバッシングされまくっていたが。

 これは、俺が魔帝メナスだとバレたらやばそうだな……。

 まあいい。


「では、お前の言う“破滅の未来”とはなんだ? この世界にはもう、魔帝メナスも竜王ニーズヘッグもいないはずだが」


「たしかに、それは気になるわね。ていうか、なにと戦えばいいのかわからないまま勇者になれっていうのも変じゃない?」


「そ、それは……」


 ラフリーゼは言いよどむ。


「神託の内容を話すことで、未来にどんな影響があるのかわかりませんので……あまりお答えすることは……」


「なるほど、理解した」


「……へ?」



「つまり、聖王が未来兵器を使って、戦争を起こそうとしてるんだろう?」



「……え? あれ……え?」


 ラフリーゼがあからさまにうろたえる。

 なるほど、この反応は正解か。

 ゲームではなかったイベントだから、確証はなかったが。


「な、なんで……それを!? いったい、誰に聞いたのですか!?」


「いや、べつに聞いてはいない。簡単な推理ゲームだ」


「推理ゲーム?」


「まず、聖剣を抜いてなくてもいいということから、お前が欲しいのは勇者の武力ではなく箔――つまりは政治力であることがわかる。それも、聖女に足りなくて勇者にある政治力といえば、軍事面での発言力だ」


「は、はい」


「さらに……お前が今、まともな護衛なしで動いているのは、聖王にも黙ってお忍びで来ているからだ。つまり、お前の行動は聖王の意向とは別だということだな。そのうえで軍事的発言力を求めていることや、今の聖王が昔からノア帝国を侵略したがっていたことから、お前は聖王が起こそうとしている戦争を止めようとしていることが推測できる。おおかたノア帝国が弱体化した隙に攻め込んで、以前から狙っていた魔石鉱床と運河を奪おうとしてるんだろう」


「う……」


「そして、聖王を止めるかどうかで破滅の未来が左右されるのだとすれば、それは聖王国がそれだけの力を得たということだから……単純に考えれば、大量破壊兵器でも作ったということだろう。それも、お前が破滅の未来について言い渋ったのは、その破滅と【未来予知】が関わっているためだろうから、その兵器はお前の【未来予知】の力によって造られた、この時代には本来ないはずの未来兵器だろうと推察できる。違うか?」


「…………う……ぁ…………全部言われちゃった……」


 ラフリーゼが呆然とする。

 カマかけやゲーム知識も交えた強引な推理ではあったが、全て当たっていたらしい。

 とりあえず、“情報を引き出す”という目的は達成できたな。

 ストーリーの流れ? 後々判明する衝撃の事実?

 ……知らないな。

 俺がいるからには、最初からクライマックスだ。


「なんかマティー、頭よさそうに見えるけど大丈夫? 変なものでも食べた?」


「いや、俺はもとから頭がいいが……」


「というか、空気読むの苦手なんじゃなかった?」


「殺し殺されるという空気なら読みやすい」


「ふーん?」


 物心がつく前から、ずっと命を狙われてきたのだ。

 10歳で皇帝になってからも、戦争や暗殺や化かし合いの日々……。

 だから、こういうのは嫌でもわかる。

 というより、嫌でも考えてしまうというのが正しいか。


「……全部、その通りです」


 やがて、ラフリーゼが自嘲気味に笑った。


「私が【未来予知】によって見たのは、勇者マティー誕生と、戦乱、そして……破滅の未来です。その破滅の未来が、私の力によって造られた未来兵器のせいで起こるということはすぐにわかりました。ですから……私が絶対に、聖王を止めなければならないのです」


「勇者がいれば止められるのか?」


「はい。勇者とは預言者――神の意思を世界に反映する存在とされています。神の意思によって生まれるとされる勇者の言葉は、聖王国では絶対。聖王であろうと無下にはできません」


「ふむ……今までの話をまとめると、こういうことか」


 俺は冷静に確認する。



「――勇者ならば、聖王国でなにをしても自由だと」



「へ?」


「これは神の意思だといえば、どんなに不埒でうぇーいな悪行三昧も赦されると。聖王すら無視して好き放題できると」


「え……あの……?」



「――よし、いいことを聞いた。さっそく聖王国へ乗り込むぞ!」



「なんでそうなるんですか!?」


 俺は聖剣を肩にかついだ。

 なるほど、未来の俺が勇者になっているのも納得だ。

 勇者になれば、聖王国で自由で快適なセカンドライフが送れるのだから。

 ちょうど妖精国以外にも観光に行きたいと思っていたところだしな。



「くくく……勇者の特権をフル活用して、聖王国を遊び尽くしてやろう」




――君はもう、ポイント評価になったかい?



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