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42話 ランキングを塗り替えてみた


「あら、精霊郷に行くという話でしたが、なにか忘れ物……で……も……?」


 樹上都市フォリウムの集会所へと戻ると。

 先ほどのエルフの受付嬢がぽかんと目を点にした。

 その視線が、俺が肩にかついでいる聖剣(の主に台座部分)に向けられる。


「いや、精霊郷ならもう13回クリアしてきた。この聖剣がクリアの証だ」


 聖剣を頭上に掲げてみせる。

 神話通りの光り輝いている聖剣だ。

 どこからどう見ても本物といえるだけの風格がある。

 台座もいい味を出している。


「聖剣? たしかに、精霊郷の最深部には聖剣があると言いますが……しかし……」


 受付嬢が口ごもる。

 やはり、いきなり信じてもらうのは無理があるか。

 とくに、俺は冒険者ランクもGのままだしな。

 だが、こうなることは想定内だ。


「証拠なら、もうひとつあるぞ」


「ミコちゃん、あれを出してください!」


 俺とプリモが目配せすると、ミコりんは少し嫌そうな顔をしながら頷いた。



「――出でよ、精霊王様」



 そう、命じると。

 ミコりんの近くの空間が渦を巻くように歪み、ぽっかりと穴があく。

 そこから、神々しい姿の老人――精霊王が現れた。

 登場とともに、ぱぁぁぁっ! と後光がさす。


「あ、あの……そちらの、やたら光っているご老人は……」


「ダンジョンで使役した精霊王だ」


「…………なんて?」


「ダンジョンで使役した精霊王だ」


「……はい……はい?」


 受付嬢が引きつった笑顔のままフリーズする。


「精霊王様を、使役……? いったい、なにを言って……しかし、この輝きは……まさか、本物……?」



「――いかにも。わしこそが精霊王である」



「ほら、本人もこう言ってるぞ」


「…………」


 受付嬢が絶句する。

 一応エルフだから、かなり力のある精霊だということはわかるのだろう。

 そもそも精霊はめったなことでは嘘をつかないしな。社会性が乏しい種族であるため、嘘をつくという文化がないのだ。

 受付嬢が助けを求めるようにミコりんのほうを見るが。

 ミコりんは肩をすくめながら首を振った。


「……本物の精霊王様よ。信じられないのはわかるけど」


「そんな……」


 自国の姫にまで言われたら、信じないわけにはいかないだろう。


「し、しかし、精霊王様が本物だとしても……使役するのは不可能だと思いますが……」


「そんなことはない。精霊王はもう、“お手”ができるんだぞ」


「なにやらせてるんですか!?」


「いや、精霊王様が勝手にやりたがっただけなんだけどね……」


「ということは、それも本物の聖剣……? というか……え? 抜けなかったのに持ってきちゃったんですか?」


「くくく……持ってきちゃった」


「なにやってるんですか!? というか、今さらですが……本当に、本当に……精霊郷を攻略したってことですか? 歴史上、誰も踏破したことのない、あの精霊郷を……」


「――いかにも。このわしが証人となろう」


 精霊王が威厳たっぷりに宣言する。



「――この者たちの精霊郷攻略回数は13回。最速クリアタイムは4分34秒だ」



「…………攻略……13回……クリアタイム……4分……」


「つまり、俺がナンバー1ということだ。さあ、ランキングボードを書き換えるがいい」


「…………」


 受付嬢が引きつった笑顔のまま、しばらくフリーズしてから。



「あは、は……これ、もう私の職務範囲超えてるような……吐きそう……」



 そう呟いて、すごい勢いで逃げだした。

 どうやら、キャパオーバーしたらしい。

 それを引き金に、しばらく静まり返っていた集会所が一気にざわめきだす。


「……なんか大事になったわね。いや、後世に残るような歴史的大事件だし、ならないほうがおかしいんだけど」


「くくく……実に気分がいい。そうだ、もっと喝采せよ。俺の承認欲求はこんなものでは満たされんぞ……!」


「さあ、みなさん! もっと、うちの主様を褒めてあげてください! そこの方、声が小さいですよ!」


「……自ら大事にしていくスタイルだった」


 などと楽しく話しているときだった。




「――――見つけました」




 突然、少女の声が響いてきた。

 冒険者たちのざわめきが自然と収まり、集会所が静まり返る。

 それから、群衆が割れて道ができた。

 その道の先にいたのは――女神官を従えたひとりの少女だ。

 清らかな水の流れを思わせる、繊細な白金色の髪。穢れのない純白の司祭服。そして、その服に刻まれた白百合の紋章……。


「…………な、に……?」


 思いがけず、ぎょっとした。

 いきなり冷水をぶっかけられたように、先ほどまでの気分のよさも一瞬で吹き飛んでしまう。


「……? どうかしましたか、主様?」


「なんか顔色悪いわよ?」


「い、いや……」


 プリモたちが不思議そうに尋ねてくるが、答える余裕はない。

 ……なぜだ? 意味がわからない。

 なぜこいつが、こんなところにいる?



 ――聖女ラフリーゼ・ミットライト。



 それは、この少女の名であり……。



 ……この世界ゲームのヒロインの名でもあった。






――僕の言うことなんて、半分は意味もない。

――ただ君にポイント評価してほしくて話しているんだ。



というわけで、7章終了です!

ここまで読んでいただきありがとうございました!

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