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40話 精霊王と戦ってみた

「……では、そなたらは、なんのためにここまで来たのだ……?」


「くくく……いいだろう、教えてやる。それはだな……」


 俺は、びしぃっ! と精霊王を指さした。



「――お前の力をいただくためだ!」



「な……ッ!」


 精霊王が絶句した。

 しかし、そうだ……ちょっと忘れかけていたが、そもそもこの精霊郷に来たのはミコりんを精霊王と契約させるためなのだ。


「くっ……! なにを言っているのかよくわからんが……そなたが悪しき心の持ち主であることは理解した! さては、そなたら、わしをたばかって聖剣を奪うつもりであるな!」


「ち、違いますって! 聖剣なんて欲しくな……」


「いや、違わない。なんかそこまで言われたら、逆に欲しくなってきた」


「なんでそうなるの!?」


「やはり、聖剣が狙いであったか! わしの目に狂いはなかった……!」


「くくく……ならば、どうすると言うのだ」


「こうなったら仕方あるまい。聖剣の守護者として、そなたらはまとめて成敗してやろう!」


「……うん。まあ、こうなるわよね」


 精霊王がその手に持った杖を振りかざす。

 すると――。


「……む?」


 突然、目の前に水晶でできたような透明な柵が現れた。

 いや……柵ではない。

 俺たちはいつの間にか、水晶の鳥かごにとらわれていた。



「――わしは空をつかさどる精霊。その権能は【空間操作】だ」



「ほぅ?」


 なんでいきなり説明されたかわからないが、これはゲームでは語られなかった精霊王のスキルだ。

 この鳥かごも、おそらく空間を固定することで作られたのだろう。

 この精霊郷に9つの世界が重ね合わされているのも、この精霊王の力によるものか。

 さすがは神話に出てくるだけあり、チートスキルを持っている。

 ゲームでは最後まで本気で戦わなかった精霊王だ。

 その精霊王が本気を出したというのは……そそるな。


「くくく……隠しボスか。面白いではないか」


「面白い要素ゼロよ!? 大丈夫なの!? 相手は神話に出てくるような存在よ!?」


「あ、主様……この鳥かご、壊せません」


「ふむ……」


 俺も試しに鳥かごを蹴ってみるが……硬い。

 もはや、物質の硬さという次元ではない。

 物理的な力では、この鳥かごは壊せそうもないな。物質ではないから、シャドウハンドの【影隠し】スキルで収納することもできないだろう。


「……なにをしても無駄である。全ての生命は空間の奴隷であり、全ての空間はわしの支配下にある。この世界に存在している限り――――空からは逃げられん!」


 精霊王の魔力が、ぶわぁ――ッ! と爆発的に膨れ上がった。

 同時に、七属性の魔法陣が浮かび上がる。

 炎、水、風、土、雷、光、闇――。


「ふむ、全属性魔法を無詠唱か。なかなか壮観だな」


「きらきらしてて綺麗です」


「のんき!? いや、これヤバいんじゃない!?」



「――悪しき者どもよ、空の藻屑となるがよい!」



 そして、精霊王が杖を振り下ろすと。

 全ての魔法が、一斉に――放たれた。

 七色の魔法が混じり合い、ひとつの光線となって迫りくる。


「ふむ」


 俺はその光線と対峙しながら。

 手のひらの影を魔力で練り固め、一瞬で闇の魔弾を作り上げた。

 そして、無詠唱で放つ。

 俺の小さな魔弾が、七色の光線とぶつかり合い――。


 ――――ふっ、と。


 七色の光線が、冗談みたいに一瞬で吹き消された。


「………………へ?」


 そのまま、魔弾は精霊王へと迫り――。

 ――そして、爆発した。



「くぁわせどるふとふじこぁあああぁああ――ッ!?」



「精霊王様ぁぁあっ!?」


 やがて爆煙が晴れると、精霊王がゆらりとその場に倒れ伏した。

 だいぶダメージを受けたからか、その体がうっすらと透けている。

 もはや立ち上がる余力もないらしい。


「ぐ……ぐぅぅ……信じられん……! まさか……そなたの極大魔法は……わしの7つの極大魔法よりも威力があるというのか……!?」


「いや、今のは極大魔法ではない」


「……なに?」


 俺は不敵に笑いながら、告げる。



「――初級魔法だ」



「…………なん、だと……」


 精霊王の顔が、みるみる絶望に染まる。

 しかし、精霊王の真の絶望はまだまだこれからだ。


「それと、お前は……ずいぶんと自分の力に自信があるようだが……」


 俺は鳥かごの柵を、ぐっと握りしめる。


「こんなものは、玩具にすぎん」


 手のひらから魔力を一気に放出すると。

 ぱりんっ! と、鳥かごがあっけなく砕け散った。


「…………なっ!? ば、バカな、ありえん……! 空間など、壊せるはずが……!」


「いや、【空間操作】なんていっても、結局はお前の魔力によって引き起こされた現象だ。ならば、魔力の導線を全て断ち切れば壊せるだろ」


 俺がやったことは、いたってシンプル。

 ただ鳥かごの周りを、俺の膨大な魔力でコーティングしただけだ。

 この程度の技なら、なにかスキルを使うまでもない。壊す方法も脱出する方法もいくらでもある。それに、ひとつのスキルにのみ頼ってるような相手には、いざとなれば【封印】スキルを使えば完封できる。

 最初から、俺に負ける可能性はなかったというわけだ。


「し、信じられん……そんなバカげた魔力操作が、可能なはずが、ない……」


「精霊を統べる王程度が、俺を測れるわけないだろ」


 こっちは、万の魔物を統べる帝王――魔帝メナスをやっていたのだ。

 たかだか、1種族を束ねているだけの王に負けるわけがない。


「いや、というか……正直、お前弱すぎないか? なんで、そんなチートスキル持ってるのに、その程度の戦い方しかできないんだ?」


「う……」


「あの鳥かごもなんだ? 隙間を作らないと外から攻撃できないのはわかるが……それなら、密封して窒息させたほうが確実ではなかったか? いや、それでも普通に対処はできたが……」


「うぅ……」


「でも、わたしはあの鳥かご、きらきらしてて綺麗だと思いましたよ! 頑張って、あの鳥かごの形を作ったんですよね!」


「え? あ、ああ……」


「ただ、あの……『空からは逃げられん』でしたっけ? あの言葉はどういう意味だったんでしょう? わたしにはちんぷんかんぷんで」


「え……いや、それはそのままの意味で……空からは逃げられないから……」


「……? 空が追いかけてくるのですか?」


「そ、そこは比喩というか……」


「ちょっと、そこのところくわしく解説を……」


「やめなよ」


 ミコりんが止めに入った。


「あんまり精霊王様をいじめないであげて。精霊王様、泣きそうになってるから」


「お前は精霊王のなんなんだ」


「信者よ……一応」


 すごく複雑そうな顔をしていた。

 それから、ミコりんは精霊王の前にかがむと。


「光魔法Lv5――【エクストラヒール】」


 精霊王に回復魔法を使う。

 うっすらと透けていた精霊王の体に、みるみる色が戻っていく。


「これで動けますか?」


「あ、ああ……だが……なぜ、わしを回復した?」


「え? だって、傷ついてる人がいたら、それは助けたいと思いますよ」


 ミコりんが当たり前のように言う。

 助け合い社会で生きるエルフならではの価値観だろう。

 そうして、ミコりんが安心させるように微笑みかけると。

 精霊王がぼぉっとしたように呟いた。



「…………女神」



「ん?」


「……ふつくしい……なんと慈悲深い心……そうか、わしはあなた様に仕えるために生まれてきたのか」


「うぇっ!?」


 にじり寄ってくる精霊王に、ミコりんがぎょっとして後ずさる。

 ……この精霊王、めちゃくちゃチョロかった。

 キャバ嬢に貢ぐタイプの精霊王だった。

 ミコりんは身の危険を感じたのか。


「あ、あー、そういえば、精霊王様に頼みがありまして……」


 と、あからさまに話題を変える。


「できればなんですが、精霊王様と契約をした……」





「――今ここに、わしとの契約は結ばれた」





 ぱぁぁぁ――っ! と、天空から光の柱が幾重にも降り注ぐ。

 それはまるで、天から祝福されているような光景だった。

 神殿の頭上に虹の橋がかかり、世界がまばゆく輝きだす。

 やがて、その光は、ミコりんの手の甲へと吸い込まれていき――。

 ――契約紋へと変化した。


 精霊契約、完了の証だ。


「…………あ、あれ? え? 契約できたの?」


「おめでとう」


「おめでとうございます!」


「さあ、わしにご命令を。わしはあなた様の忠実な犬である。きゃいんきゃいん」


「……神テンポすぎて、ついていけない」


 なにはともあれ。

 こうして、当初の目的であった〝精霊王との契約〟を達成したのだった。





――神様は私たちに、成功してほしいなんて思っていません。

――ただ、ポイント評価することを望んでいるだけよ。



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