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34話 羽を伸ばしてみました(プリモ視点)

今回は閑話的な話です。流し読みでも大丈夫です。


◇破壊王プリモ Lv91

……七魔王・第4席。スライムのメイド。あらゆるものを破壊したり、スライム体からあらゆるものを創造したりできる。

 こんにちは、プリモです。

 いろいろありましたが、わたしは元気です。

 さて、妖精国に来てから、早いもので1週間が経ちました。

 妖精国の都も、すっかり竜王ニーズなんとかさんの襲撃から立ち直り、今では平和な空気が漂っています。

 平和、いいですよね。

 わたしも大好きです。平和万歳。


 とはいえ、困ったこともひとつあります。

 それは――『羽を伸ばせ』、と主様に命令されたこと。

 かくして、わたしの存在意義である“主様のお世話”は禁じられてしまったのです。わたしは、なにか悪いことをしてしまったのでしょうか……?

 羽を伸ばすといっても、なにをすればいいのかわかりません。

 というわけで、わたしは妖精国のお城の客間にこもっていました。


「……とても困りました。ノーちゃん、助けてください」


 スライムをつまみ食いしつつ、わたしの小さな分裂体ミニプリモに話しかけますと。

 ミニプリモから声が聞こえてきました。



『……くすくす……プリモお姉様らしい悩み』



 ミニプリモ通信の相手――七魔王のお友達からのお返事です。わたしの作ったミニプリモたちは、みんな感覚を共有しているので、遠く離れていても声でやり取りすることができます。


『……プリモお姉様は、なにか趣味ないの?』


「主様のお世話が趣味です。ノーちゃんはどうですか?』


『……ノーチェは芸術……最近は、蛇さんたちからいっぱい“絵の具”が採れたから捗ってるよ?』


 蛇さんというと、竜王ニーなんとかさんの愉快なペットたちでしたでしょうか。

 自分のやりたいことを持っているというのは、少しうらやましくもあります。


『……プリモお姉様も、一緒に芸術する?』


「ゲージュツ……というと、なにを壊せばいいのでしょう?」


『その目に映る世界……かな……?』


「なるほど。それなら簡単にできそうです」


 手始めに、この妖精国を破壊しましょうか。

 でも、なにが楽しいのかわかりません。

 これはどうも趣味にはならない予感がします。

 それからしばらく話していると、ノーちゃんの返信のスピードが遅くなっていきました。


『……おねむ』


「あ、ノーちゃんはこれからおやすみですか?」


『ん……寝る』


「わかりました。おやすみです」


『……ん』


 そのやり取りを最後に、通話が切れました。


「むぅ……」


 静かになりました。

 人と話したあとの、このぽっかり感にはなかなか慣れません。

 空白のような時間を持て余します。

 使用済みのミニプリモを食べることぐらいしかやることがありません。


「……羽を伸ばせ、ですか」


 主様からのご命令なのに、羽を伸ばせている感ゼロです。

 まずいです。このままでは命令違反になってしまいます。しかし、羽を伸ばせというのは、わたしにとっては荷が重い任務です。どうしたものでしょうか……。


「……はっ!」


 そこで、わたしはひらめきました。

 そう、羽を伸ばせないのならば、本物の羽を生やして伸ばせばいいのです。

 自分でも震えるほど天才的な発想でした。もうユフィさんにバカとは言わせません。

 というわけで、わたしはさっそく【変形】スキルを使って背中から羽を生やします。

 しかし、部屋では目一杯に羽を伸ばせません。

 というわけで、わたしは気持ちのおもむくがままに窓枠に足をかけました。

 いざ、悲しみのない自由な空へ――。


「とぅ!」


 そして、わたしは空へと飛び立ちま――墜落しました。

 べちゃっ、と。

 わたしのスライムボディーが地面にぶつかり、見事に破裂四散します。



「――きゃぁああぁあああッ!?」



 近くから悲鳴が上がりました。

 ちぎれた頭をころんと転がして見てみますと、悲鳴の主はミコちゃんでした。  


「おはようございます、ミコちゃん」


「きゃあああああッ!? しゃべったあああああッ!?」


 ミコちゃんは今日も、朝から元気いっぱいです。


「って、もしかして、プリモちゃん!? どうしてこんな姿に!?」


「羽を伸ばしたらこうなりました」


「は、羽を……?」


「主様のご命令なのです」


「……うん……うん? というか、その状態で平気なの?」


「はい。むしろリラックスできてます。実家のような安心感です」


「……なんでもありね、主従そろって」


 とりあえず、にゅるんっと身体を元に戻します。


「復活しました」


「いや……なんか、もう……めちゃくちゃすぎて頭が痛くなりそう」


「あ、頭が痛いんですか? 大変です! すぐに神薬エリクサーを持ってきますね!」


「うん……余計に頭痛くなりそうだから、神話上の薬をほいほい使わないで」


「……神話? 神薬なんて我が家の冷蔵庫にたくさん入ってますが……」


「やめて。大丈夫……大丈夫だから……これ以上、あたしの世界観を揺るがさないで」


「世界観?」


 とりあえず、ミコちゃんが平気そうで安心しました。


「それでは、わたしは羽を伸ばす使命があるのでこれで……」


「あ、待って」


「どうかしましたか?」


「いや、ちょっとプリモちゃんに相談があって」


「わ、わたしに……? 大丈夫ですか? とても正気の人選とは思えませんが……」


「自分で言っちゃうんだ」


 それから、ミコちゃんが決まり悪そうにもじもじします。


「いや、相談っていうのは、マティーのことなんだけど」


「なるほど」


 マティーというのは、主様が冒険者活動するにあたって名乗っている偽名です。“魔帝まてい”だからマティーだそうです。

 それはともかくとして、主様についての相談ですか。



「そういうことならば、わたしにお任せを!」



 むんっ、と力こぶを作ってみせます。

 これでも、わたしは主様が一番最初に創った魔物です。七魔王の中でも一番お姉さんなのです。

 主様とのお付き合いも、もう15年。

 相談するのに、わたしほど適任なスライムはいないでしょう。

 というわけで、ミコちゃんの相談に乗ることになりました。



――昨日から学び、今日を生き、明日ポイント評価しよう。



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