32話 とある聖女の安全時点《セーブポイント》
だいぶ期間があいてしまいましたが、連載再開です!
また、この話から漫画版とは別ルートになります!
(WEB版から入っていただいた方は、漫画版のほうもぜひ! 「マンガUP!」様などで連載しています!)
【前回までのあらすじ】
魔帝メナス、自分がRPGのラスボスだと知る → 主人公アレク率いる革命軍に倒されたふりをして旅へ → 冒険者になってエルフの姫ミコリスと冒険 → 配下の七魔王(樹王ユフィール&破壊王プリモ)と合流 → 世界樹を破壊しようとしていた竜王ニーズヘッグを討伐
◇魔帝メナス(マティー) Lv100
……元ラスボスにして元ノア帝国皇帝。現在は“マティー”という名前で活動中。【魔物創造】スキルを持つ。
◇ピンクハート妖精国
……世界樹の根本にあるエルフたちの国。ミステリア女王によって統治されている。
……予兆はなかった。
……予感はなかった。
ソリスティア聖王国、大聖城の礼拝の間。
女神像が座する祭壇の前で、聖女ラフリーゼはいつものように朝の祈りを捧げていた。
しんと張りつめた清浄な空気も。
天井から降り注ぐ、聖歌とパイプオルガンの厳かな響きも。
薔薇窓が織りなす、燦爛たる色光の揺らめきも。
全てがあつらえたように、いつも通り。
それなのに、突然――。
「…………う、ぁ……っ!?」
激しい頭痛に襲われた。
同時に、ラフリーゼの頭の中に、大量の情報が流れ込んでくる。
…………『勇者にな■て世界■救っ■くだ■い■せんか?』……『■■■』……『なに■してる■ですか!』……『見■わか■■いか? 勇■■動だ』……『いか■も。わ■こそ■精霊王で■る』……『さ■、■りを始め■!』……『今■ら■王殴ってくる』……『テロ■て言■ま■た!?』……『……ひ■い……ひどすぎ■……』……『せ……聖■十二騎■!?』……『■あ、■が審判■受け■がい■!』……『もは■、この神話は■にも止め■れ■しな■!』……『私、あな■■嫌いで■!』……『俺■お前が嫌■だ』……『■、アウトぉッ!』……『絶対■ボス部■か■■かで■よね!?』……『――くわッは■■■ッ! い■にも! 我こ■が■王ニー■ヘッグで■……』……『……未来は、変わ■ていませ■で■た』……『■は、聖城■士のハイ■■ク・ホー■■だ』……『あ、■ぁ……神■なセ■ン■ブリ■ジが』……『あれが、■■兵器……』……『ダ■! 間■合わ■い! マ■ィー!』…………『……おしま■だ』……………………
『――――――やり直したい』
その最後の声とともに、はっと我に返る。
一瞬の出来事だったが、ラフリーゼはなにが起こったのかすぐに理解した。
……【未来予知】が発動したのだ。
表向きには“神託”と呼ばれている、ラフリーゼを聖女たらしめている能力。
任意に発動できる力ではなく、得られる情報もぼやけた未来の切れ端でしかないが。
それでも、ラフリーゼは今、たしかに……。
これから起こる未来を――思い出した。
色とりどりの未来が、ステンドグラスの断片のように頭の中に散らばっている。
勇者になった銀髪の青年の、不敵な笑顔。
兵士たちが入り乱れる戦場。
地上に降り注ぐ、黄金の流星群。
それら全てを呑み込む、爆風。
――そして、破滅。
「…………行かなくては」
ラフリーゼは祈りを中断して、立ち上がる。
侍女のエレッタや助祭たちが何事かという顔をするが、かまってはいられない。
このままでは、破滅の未来が待ち受けている。
その未来を変えられるのは、きっと……“勇者”だけだ。
だから――。
「――勇者マティーに会いにいかなくては……!」
◇
「「「――マティー神、万歳!」」」
ピンクハート妖精国の大神殿。
そこで、俺は祭壇にまつられていた。
目の前でわいわいと万歳三唱をしているのは、この国のエルフたちだ。
1週間前に、この国を滅ぼそうとしていた竜王ニーズヘッグを討伐しただけでなく、世界樹を満開に咲き誇らせた俺は、どうやらエルフたちから神扱いされているらしい。
「……くくく」
樹液酒の注がれた木杯をくるくると回しながら、俺は不敵にほくそ笑む。
俺を賛美する声はいつまで経ってもやむ気配を見せない。
つい1か月ほど前まで、“魔帝メナス”と呼ばれて世界の敵扱いされていたのが嘘のような状況だ。
「……くくく」
夢を通して、自分が『レジスタンス・ノア』というゲームのキャラ――それも、いずれ倒される運命にある”RPGのラスボス”だと知ったときは、さすがにショックもあったが……。
ラスボスをやめたら、人生が一変。
周囲の者から慕われるようになり、配下たちと一緒に自由で楽しいセカンドライフを送れるようになった。もうラスボスをやっていた時代に戻るなんて考えられない。
「……くく……く」
俺を称える声はまだまだやむ気配がない。
エルフたちは飽きもせずに、俺を称え続ける。
「……く……く」
酒を飲み干した。
「………………」
側のエルフが掲げていた盆に、酒杯をことりと置く。
それから、神殿の天井を仰いだ。
「………………飽きた」
――ねんがんの ポイント評価を てにいれたぞ!
そう かんけいないね
>殺してでも うばいとる
ゆずってくれ たのむ!!
久々に更新してみたら、ポイント評価のシステムが変わってた件……。
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