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26話 竜王に襲撃されてみた

 城から飛び出していったミコりんを追いかける。

 俺がミステリア女王と話しているうちに遠くまで行ってしまったようで、ミコりんの姿はもうどこにも見えない。


 しかし、俺にはミコりんの居場所がわかっていた。

 ゲームでも似たようなシーンがあったからだ。

 親子喧嘩をしたミコりんが向かう場所は、あそこしかない。


 というわけで、その場所へと向かっていたのだが。

 人気のない場所に足を踏み入れたところで、突然――。

 目の前でつたが、しゅるるるっ! と集まり、人の形を成した。


「――失礼いたします、我が君」


 七魔王・第5席、樹王ユフィールだ。

 樹枝でできた右の巨腕を胸に当てて、すっと敬礼する。

 今は人里にいるからか、以前とは違って魔力を隠しているらしい。魔力操作に長けているユフィールが本気で魔力を隠蔽しているせいで、接近されるまで気づけなかった。


「ご報告を。ニーズヘッグは、まもなくこの国を攻める模様です」


「ふむ、やっとか。思ったより遅かったな」


「おそらく、蛇たちの一部が我々に殺されたからでしょう。蛇を集め直しているようでした」


「ふむ……」


 そういえば、竜王ニーズヘッグ襲撃イベントでは、まず眷属の蛇軍団との戦闘があったな。蛇たちと同時に妖精国を攻めることで、妖精国側の戦力を分散させたいのか。

 威勢がいいわりに慎重なことだ。


 おそらく、竜王ニーズヘッグは、過去に人間に封印されたことがトラウマになっているのだろう。

 だから、慢心せず、慎重に、確実に、持てる力の全てを使って、徹底的に……人類を滅ぼそうとしている。


「いかがいたしましょうか? ニーズヘッグぐらいの竜でしたら、私のほうで撃退することも……」


「いや、逃げられると、力をつけて何度でも襲撃してくるからな。一度で倒しきりたい」


 まともに戦えば、ユフィールのほうが戦力は上だが。

 まともに戦おうとしないのが、竜王ニーズヘッグという魔物だ。

 慎重で、狡猾で、卑劣。

 ただ追い払うことは容易いが……殺すことはかなり難しい。

 竜王ニーズヘッグは【不屈EX】【ド根性】【硬質化EX】などの耐久系スキルを数多く持っており、とくにHPがほとんどなくなると、一部の例外スキルを除いてダメージを与えることができなくなる。さらにピンチになると、すぐに【転移門】というスキルで逃走する。

 生き残ることにあれほど長けた魔物はいないだろう。

 だからこそ。


「今回は、俺が出る」


 そう告げると、ユフィールは目を少し見開いて。


「ほぅ……」


 と、ぶるっと体を震わせた。


「久しぶりに、我が君の本気を拝見できるのですね。ニーズヘッグには同情しますが……」


「それより、ユフィール。お前に頼みがあるんだが」


 というわけで、手短に今後の計画を話してみた。

 理想のエンディングにたどり着くためには、ユフィールの協力が必要だ。


「ふふふ……なるほど。面白いことをお考えになる」


 説明を聞いたユフィールが、形のいい唇を愉快そうにつり上げる。


「とにかく、()()()()()()()()()実行しろ。最高のエンディングを作るためには、最高のタイミングでなければならないからな」


「承知しました」


 ユフィールが敬礼をする。


「全て、我が君の御心のままに――」




   ◇




 ユフィールと別れたあと、俺は()()()()へとやって来ていた。

 城から少し離れたところにある、世界樹の根で隠された空間。


 ――ミコりんの秘密基地だ。


 ここからは世界樹をよく見ることができる。そのため、ミコりんはこの場所を好み、悩んだときなどはこの場所に来るという設定だった。

 市民たちは避難しているのか、周囲に人気がない。だから、ミコりんは接近してくる俺の気配にすぐに気づいたようだ。


「……なんだ、あんたか」


 ミコりんは世界樹の根に背を預けて、膝を抱えていた。その赤い目元を隠そうとしているのか、顔を上げようとはしない。


「……どうして、ここがわかったの? 誰にも教えたことがない秘密の場所だったのに」


「俺はミコりんのことなら、なんでも知ってるからな」


「……で、なにしに来たのよ。慰めにでも来たの?」


「いや、そんなつまらないことのために、俺が動くわけないだろ」


「じゃあ、なによ」


「ミコりんを連れ戻しにきた。とっとと城に戻って、ニーズヘッグと戦う準備をするぞ」


「……嫌よ」


 ミコりんが即答する。


「……あたしが戻っても仕方ないじゃない。ママの言う通りよ、足手まといになるだけだもん」


 めちゃくちゃ、いじけていた。


「……あたしね、ずっと頑張ってきたの」


 そして、なんかいきなり語りだした。


「ニーズヘッグを倒して、世界樹を元気にさせたかった。それで、また……昔みたいに、世界がお花でいっぱいになるのをママと一緒に見たかった。でも、ママはあたしが戦場に立つことを認めてくれなくて……」


「知ってる」


「だから、修行して、強くなって、ママにも認められようと思っ」


「知ってる」


「……と思ったの。でも、間に合わなかった。結局、あたしは弱いま」


「知ってる」


「……あたしは弱いままで、あたしなんて必要ないんでぁ」


「でぁ?」


「あんたのせいで噛んだじゃない!」


「俺のせいなの?」


 思わず肩をすくめる。

 よくわからないが、とりあえずミコりんは悩んでいるらしい。

 まったくもって、くだらないな。

 なにを悩んでいるのかは知らないが……。


「なあ、ミコりん。1つだけ言わせてくれ」


「なによ、慰めの言葉なんていらな……」


「……この会話って、スキップできないか? 話聞くのダルいし、とっとと城に戻りたいんだが」


「ちょっとは慰めなさいよ!?」


「ドンみゃイ……すまん、噛んだ」


「慰める才能のなさ!?」


「心にもないことは言うものじゃないな」


「心にあることも言わないでよ!?」


「ともかく、あまり時間がないんだ。いじけるのはいいが、もっと要点をまとめてテンポよくいじけてくれ」


「無茶がすぎる!?」


 ミコりんは頬をむすっと膨らめて、そっぽを向くと。


「――もういいもん!  あたしは一生ここにいるもん! どうせ、いらない子だもん!」


 ……完全にいじけモードに入ってしまった。

 まあ、ミコりんは……大人ぶっているわりに子供っぽいところがあるしな。母親と喧嘩したのは、ミコりん的には大事件なのかもしれない。


「ミコりん」


「……もう放っておいてよ」


「ほーら、バナナだぞー。こっちへおいでー」


「物で釣るにしても、もっとやり方なかった!?」


 ……怒られた。

 やはり、物語の主人公のようにうまく立ち回ることはできないな。アレクはここでなんやかんやそれっぽいセリフで言いくるめて、ミコりんを城へと戻したのだが。

 説得とか、励ましとかは、俺の専門外だ。

 だから……間に合わなかった。


「……タイムリミットか」


 周辺の魔力反応を感知しつつ、呟く。

 その次の瞬間――。


 ――ごごごごごっ! と地面が大きく震えだした。



「な、なに!?」


「……始まったな」


 ふいに辺りに影が差し、突風が吹き荒れる。

 顔を上げると、空には――巨大な黒竜が飛んでいた。

 鎧のような黒光りする鱗に覆われた竜だ。翼を広げて滑空しながら、猛スピードで世界樹に接近していく。


「……ニーズ、へッグ?」


 ミコりんが呟くが、その通り。

 みんな大好き、竜王ニーズヘッグ。

 今から世界を滅ぼそうとしている竜の名だ。


「で、でも……ママなら大丈夫よね。さっき、城の結界も張り直してたし……」


「いや、あんな結界に意味はない」


「……え?」


「七魔王と比べると見劣りするが、竜王ニーズヘッグは仮にもSSランクの魔物だ。Aランクの魔物を想定したような結界では抑えることなどできん」


 俺の言葉の通り、ニーズヘッグが城に突撃すると、光の結界はあっさり突き破られる。


 そして、ニーズヘッグは世界樹のすぐ正面まで接近すると。

 妖精国中に響きわたるほど、大きく高笑いをした。



『――我が名は、竜王ニーズヘッグ! これより、世界の破壊を開始する!』






――「ポイント評価したい」と言えェ!!!!


――ポイント評価じたいっ!!!!



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