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天狗の同級生  作者: 桜本 結芽
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第7章 とても強い人

 幸貴達が修行を始めてから3週間が経った頃美鈴は目を覚まし、彼女は心配そうな面持ちで見つめる家族をボーっとした顔で見つめながら、

 「私……どうして自分の部屋にいるの?」

 と尋ねるとシゲトシがベッドに上がり美鈴を見つめながら眠っていた間の事を説明すると、彼女は驚いて目を見開いてベッドを出ようとしたので誠が押し止めながら、

 「美鈴はまだ完全に回復していないんだ、今は寝ないとだめだ!」

 そう言うが美鈴は聞く耳を持たず部屋から出ようとしていたので綾子はため息をつくと、手刀で首を打ち気を失わせるとベッドに寝かせ誠と真人に向き直ると、

 「この子の部屋に結界を張っていてちょうだい、それと幸貴さん達がある程度力を身に着けた時に美鈴を連れて来て合わせましょう」

 と真剣な声と表情で言うと2人も納得して頷くと部屋を出て結界を張り綾子と共にリビングへと降りて行った。


 そしてさらに1か月が経ち幸貴達は傷だらけになりながらも体力や魔力が向上し、複雑な呪文を唱えられるようになっていて一休みしていると美鈴が彼らを見ている事に気付き走って近づくと彼女は全員を見回しながら、

 「みんな強くなったのね! 私も頑張って修行を始めないと!」

 そうガッツポーズをしながら言って微笑むと人狼とペガサスに向き直り、

 「この間は助けてくれてありがとう、あなたの達のおかげで私は家に帰る事が出来たし、幸貴も助けられたわ、あと提案なんだけど……私と契約を結んで欲しいの、あなた達がいればもっと楽しくなれるし強くなれると思うの!」

 と言い右手を差し出すと2人は初め驚いたように目を見開いていたのだが次に微笑み人狼が、

 「お、俺は人狼のセシル・ジョー・チャイルドです、契約名以外ではジョーと呼んで欲しい……」

 そう言って手を握ると次はペガサスが手を握り、

 「私はチャールズ・レイ・ヒルズです、以前見たようにペガサスで契約名以外ではレイと呼んでください」

 と自己紹介をした後美鈴と契約してジョーはセレン、レイはリアンという契約名を授けそれから一緒に修行をしたのだが、幸貴達は1か月をかけてやっと身についた修行を息も切らさずこなす美鈴の身体能力を目の当たりにし、驚愕の余り目を見張って黙っているとそれに気付いた綾子が手を叩き大きな声で、

 「ほら! 早く次の修行に移って‼ 美鈴に置いて行かれるわよ⁈」

 そう激を飛ばすと幸貴達も大きな声で返事をしてから修行を続け、さらに2か月が経つと彼等の身体能力も上がり以前は使えなかった魔法も使えるようになると綾子が全員を呼ぶとゆっくりと見回してから、

 「これであなた達の修行は終わりよ、今まで頑張りましたね……それとこれは私個人の願いだけれど美鈴を守ってあげて……あの子は笠岡家次期当主だけどまだ子供だから至らない所もある、それに命を狙われている事も忘れないで、どうかあの子を助けてあげて」

 と言って最後は涙を流しながら頭をさげ幸貴達の修行は終わった。


 そして幸貴達は3か月振りの学校へ行くと教室中がざわつきだしたので不思議に思っていると1人の女子生徒が幸貴と春希に近付くと、

 「あ、あの……大丈夫? 2人とも全然こないからみんな心配してたんだよ?」

 そう恥ずかし気に言い俯くと幸貴は笑顔で、

 「うん、大丈夫だよ、ありがとう」

 と言ってから席に座ってふと美鈴の席を見た時秋札の机がない事に気付き、首を傾げてから近くにいた男子生徒に、

 「秋札さんの机が無いんだけど……?」

 そう尋ねると彼も首を傾げて、

 「秋札さん……? 誰それ?」

 と言っていたので幸貴と春希は背筋が凍る思いで互いを見合い固まってから慌てて教室を出て、職員室に行ってスイと準人に説明すると彼等も青ざめていたので幸貴は真剣な面持ちで、

 「姫の命を狙う奴の中に記憶を操る事が出来るのもいるみたいだな……」

 そう言うとスイ達も険しい顔つきで頷いていると後ろから、

 「すんませんが、そこどいてくれへんかな?」

 と声をかけられ4人は驚いて振り返るとそこには2年生の男子生徒が立っていて呆然と立ち尽くす彼らに男子生徒は、

 「そこ、通りたいんですけど……?」

 そうもう一度言われ黙って道を開け彼は通る間際4人を睨みつけながら、

 「何を企んでんのかは知らんけど……悪さするんやったら俺が相手したる」

 とドスを効かせた低い声で言うと固まっている彼らを無視して職員室へ入って行き、先に我に返った春希が困惑したような顔と声で、

 「あ、あいつ……全く気配をしなかった! しかも俺達の正体にも気付いてんのか⁈」

 そう言うとスイも頷きながら、

 「た、確かに僕も近付いている事に気付きませんでした……」

 と言ってもう一度男子生徒を見やると気付いて睨みつけるので4人は慌てて目を話しそれぞれ教室や職員室へと戻った。


 そして次の日美鈴は久しぶりに学校へ行ける事になり道を歩いていると、目の前に真っ黒なスーツに身を包んだ男が10人ほど現れ無理矢理掴み買って車に乗せようとしたので抵抗していると、男の後ろから同じ学校の制服を着た男子生徒が竹刀を振りかぶった体勢で飛んでくると、男の1人を殴りつけそのあと後ろからおそって来た一気に4、5人を倒すと呆然としていた男達も我に返り術で霊を呼び出そうと呪文を唱えるがその隙に倒していくので、慌てて逃げ散っていくとそれを彼は鼻先で笑ってから振り返ると美鈴に微笑みかけながら、

 「大丈夫か? さっきの奴ら君を誘拐しようとしてたけど……明らかに魔術師や、なんか恨みを買う事でもしたんか?」

 そう尋ねられた美鈴は慌てながら男子生徒に、

 「あ、あの……多分私の家系のせいだと思います!」

 と言ってから家の事を話すと彼は最初は驚いていたが最後は納得したように頷くと、

 「笠岡家か……昔オトンに聞いた事ある家元やな」

 そう言い少し考えてから決心したようにまた頷くと、

 「よし! これからはオレが守ったる! 自己紹介がまだやったな、俺の名前は荒石 剣司や、一応剣道部におるけど他にも柔道部と空手部も掛け持ちしてる!」

 と笑顔で名乗ってから真剣な顔になると、

 「ところで君が契約したってゆうヤツらを呼んでくれへん? 挨拶したいし」

 そう言われ美鈴は渋ったが最終的に名前を呼ぶと幸貴達は血相を変え慌てて飛んで来るとセレンが、

 「どうかした? 姫」

 と首を傾げて言うと隣の立つ荒石に気付き眉根を寄せながら、

 「彼は……?」

 そう尋ねると彼女が説明して誤解を解くと幸貴達は安堵の息を吐いてからスイが、

 「姫を助けてくれてありがとう……」

 と微笑みながらいうと彼は少し驚いた顔をしたあと意味深な笑みを浮かべながら、

 「正体がバレへんようにあんな言い方してたっちゅうわけか……さすがやな」

 そう言ってから幸貴と春希に向いてじっと眺めてから、

 「お前ら2人がさわやか王子と野獣王子か、やっぱりかっこいいなぁ……ちなみにオレは最強騎士っていうあだ名が学園で広がってるみたいやけどな」

 と半ば諦めたように言っていると美鈴がふと思い出したように、

 「そう言えば……そんなあだ名のとても強い先輩がいるのを聞いた事がある……」

 そう手で口を覆いながら言うと荒石は恥ずかし気に、

 「そ、そんな噂が立ってるんかい……恐るべしやな」

 と言っていたので幸貴が頭に手を回しながら、

 「俺も聞いた事あるけど、こんなに地味な奴だとは知らなかったぜ」

 そう言うと荒石は胸を刺されたような恰好をしながら、

 「お、お前……王子って言われてんのになんちゅう口の悪さや……話とちゃうやんけ……」

 と言っていたので幸貴は気にしない様子で、

 「俺も正体がバレないように猫被ってるから」

 そう言っていると遠くから美鈴を呼ぶ声が聞こえたので全員が振り向くと、背後に女性の霊を大勢憑りつかせた誠が走って来ていたので美鈴がため息をついていると荒石は驚いて、

 「うげ⁈ 何やアイツ!?」

 などと呻いてから美鈴を見やると、

 「あのやばい人……知り合いなんか?」

 と尋ねられたので美鈴は目を見開いてから、

 「み、見えるんですか!?」

 そう尋ね返すと彼が頷くので美鈴は安心してため息をつくと、

 「私の兄なんです……昔から女性の霊に憑かれる体質で、普段は術具で抑えてるんですけど……」

 と言っていると見えないため訳が分かっていない幸貴達が首を傾げて聞いて来たので説明すると彼等は驚愕といった顔で黙り込んでいると誠は近くまで来ていて荒石に気付くと足を速めて美鈴に抱き着くと、

 「お前だれだ⁈ 俺の妹に何か用でもあるのか!?」

 そう威嚇するような低い声で言っていたので呆然としていた荒石は我に返ると、

 「い、いやいやいや! お兄さんどんだけ霊が憑りついてんねん! 異常すぎる光景やし‼」

 と平手でツッコミをいれると誠は怒ったようにムッとして、

 「初対面の男にお兄さん呼ばわりされたくねぇよ! それにこの子には俺が必要なんだ!」

 そう断言すると美鈴がため息をついて見上げると、

 「そういうまこ兄こそ危ない目に合うじゃない!」

 と指摘すると彼は小さく唸ってから、

 「そ、それは……たったの一部の子だけで……」

 そう目を泳がせながら言っていたので美鈴は札を出すと問答無用で女性達を祓うと誠はショックを受けうけたように頬を押さえていると美鈴が肩に触れ、

 「私はまこ兄が傷つくのが嫌なの、それは分かってよ……」

 と言うと彼は嬉しくて涙目になりながら抱き着くと、

 「み、美鈴……! お前は天使のように優しい子だ‼」

 そう言っていたので美鈴はまたため息つくと荒石や幸貴達が呆然と見つめていたので恥ずかしくなった彼女は赤面しながら誠から離れ、

 「と、ところでまこ兄はどうしてここにいるの?」

 と尋ねるとハッと思い出したように、

 「そうだった、真人が占いで美鈴に危険が迫っているって出たから慌てて来たんだ!」

 そう言っているといつの間にか来ていた真人が式服のまま誠を睨みながら、

 「兄さん……人の話を最後まで聞いて下さいと何度言えばわかるんですか……? その頭のなかのものは飾り物なんですか?」

 と怒りで震えながら言うと誠は青ざめながら、

 「つ、続きがあんのか……? そんなの俺知らねぇし!」

 そう大声で言うのだが真人はさらに身体を震わせながら低い声で、

 「聞いていないのは僕の話を最後まで聞かずに出て行ったからでしょう? それに術具も持たずに行くなんて、死にたいんですか……?」

 と叱られていると美鈴はため息をついて、

 「やっぱり忘れて来たんだ……」

 そう頭を抱えながら言っていたので誠は落ち込んで俯くと、

 「ご、ごめん……」

 と謝ると真人と美鈴はため息をついてから、

 「家に帰ろ、シゲトシさまも心配してらっしゃるから」

 そう真人が言うと美鈴が手を握って微笑むので誠も微笑んで頷くと歩きだし、真人が後を歩いて行く前に荒石を振り向くと、

 「今日はありがとう、君が美鈴を助けてくれたんだろう?」

 と言うと荒石は照れたように俯き頭を掻きながら、

 「い、いや……オレはただ女の子1人に大勢の男が襲ってる姿をみて腹が立っただけなんで」

 そう言っていると真人は微笑んで頭を下げると、

 「この日のお礼は必ずするが今はあのバカな兄と一緒に帰らないといけないから、ごめんね」

 と言って頭を上げると振り返って歩きだし美鈴達と家に帰った。

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