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天狗の同級生  作者: 桜本 結芽
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第6章 幸貴の過去

 「今から130年ほど前の事じゃ……笠岡家に強い魔力を持った女の子が一人生まれワシはその子に『鈴』と名付け、次期笠岡家の当主に据えてその子に物心がついた時から修行をさせていた……そして18歳になった鈴はある程度の術を使えるようになっていて、その当時笠岡家の当主だった彼女の父と共に山へと入って修行を積んだのじゃが、鈴は帰りの道を誤り遭難してしまい当主は探し人の術を使い必死に探したのじゃが見つからず、生存も危ぶまれたのだが一羽のカラスが鈴がいる場所へと導き崖から落ちていた彼女は意識を失っていたが一命をとりとめ、それを聞いた鈴の母は涙を流して抱きしめたのじゃがすぐに彼女の異変に気付いた、それは今まで誰も持ったことのない力で笠岡家では畏怖の存在である霊魂と接触できる力じゃった……そして山から戻ってきた鈴は修行の時間以外はずっと霊と話すようになり、それを見ていた彼女の母は次第に心を病み最後には自ら命を絶ったのじゃ、そしてその話を知った分家の者達は鈴を罰する事を進言したのじゃが当主には聞き入られず、20歳になった鈴は当主の地位を継ぎ次々と仕事をこなしていった……じゃがある時彼女は一人のカラス天狗と出逢い恋に落ちてしまった……その天狗が今の幸貴じゃ、当時仲間と暮らしていた彼は鈴との生活を選び集落を出る許可を得ようとしたのじゃが拒否され、それでも引き下がらなかった幸貴を天狗たちは痛めつけたあと追放したんじゃ……その後鈴の魔法で回復した幸貴は彼女と共に家を出て駆け落ちをした、じゃが元々鈴の事が気に入らなかった分家の一部の者達が彼女を消す為2人を追いかけ桜の木の下で休んでいる彼らを見つけたその者達は不意を突き鈴の命を奪ったあと、天狗にも手をかけようとしたのじゃが失敗し逆に命を落としたが天狗の掟で人を傷つけたり命を奪う行為は最大の禁忌なんじゃ、そのため彼は大天狗に妖力を引きはがされ禁忌を犯した者の印を付けられた……そして愛する鈴を失い妖力も失った幸貴は妖力の代わりとなる魔力を身に着け、困っていたり命の危機に面した人々を救っている事に感心した大天狗は彼に妖力の半分を返し、その後も人助けを続けていた天狗は伝説となり1人のエルフと出会いさらに時は過ぎ去り笠岡家に鈴と瓜二つの女の子が生まれた、それが美鈴じゃ……以前幸貴は彼女と会って未だに鈴を思い出してしまうと言っておった、それほど彼にとって鈴は大事な存在じゃった……これがワシの知りうる幸貴の過去じゃ」

 と俯いて話を切るとリビングは静寂に包まれていたのだがスイは落ち着いた口調で、

 「禁忌の印……ですか、以前から彼は着替えの時も一人になりたがっていたのはそのせいなんですね……」

 そう呟いていると春希は眉根を寄せ親指の爪を噛みながら、

 「あいつ……そんなものを持っていながらどうしてあんなに動けるんだよ……? 普通出来ねぇぞ」

 と言っていたので美鈴は疑問に思い首を傾げながら春希に、

 「禁忌の印をもっているとどうなるの?」

 そう尋ねると彼は口を噤んだのでシゲトシはため息をついてから、

 「美鈴、お主は妖と契約している身じゃ、この事を知らねば眷属たちをさらに傷つけることになりかねんから良く聞きなさい、彼ら妖は自らの〔妖力〕を使って人と同じようにふるまっておるがさらに存在維持としても使われておる、じゃが禁忌の印を押された妖は毎日のように身体の痛みにおそわれ妖力が使えないため動くこともままならないのじゃ、妖によって制約は違うが大抵は人を傷つける事を許されておさん」

 と美鈴を見つめながら説明すると彼女は俯き、

 「それじゃあ、幸貴はずっと身体が辛いまま私を守ってくれていたの……?」

 そうシゲトシに尋ねると彼は頷き優しい口調で、

 「あの子は愛していた女性を同種である人に奪われさらに忌まわしき印を押されてしまった、本来ならば距離を置くじゃろうがそうしないのは人を未だに信じておるからじゃろうな、さて美鈴……ここまで話したが幸貴を助けたいか……?」

 と真っ直ぐに美鈴の瞳を見つめて尋ねると彼女は真剣な面持ちで頷き返事をしたのでシゲトシも真剣な表情でさらに、

 「この術を使えば魔力を激しく消耗するがそれも覚悟の上かの?」

 そう尋ねると美鈴は再び頷き、

 「私は幸貴を助けたいです!」

 と変わらず真剣な顔で言うとシゲトシは満足気に頷くと、

 「よろしい、ではついてきなさい、今から術を伝授しよう」

 そう言ってテーブルから降りると幸貴の部屋へ行きベッドに飛び乗ると、

 「準備はよいか美鈴? お主なら出来る、気負うでないぞ」

 真剣な面持ちで言うと呪文を唱え始め美鈴も続けて唱えると辺りがほの暗くなり、魔法陣が現れ美鈴達と幸貴を囲むと彼が光に包まれ、それが全身を覆うと弾けて消えていきシゲトシと美鈴が呪文を唱え終わると元の空間に戻っていて、美鈴は魔力の大量消費による疲労で息を荒げて両膝をついて倒れかけたがスイに支えられ、額から汗を流しながら幸喜に目をやると彼は小さく呻いた後身じろぎをして目を覚ますと不思議そうに辺りを見回してから、

 「な、なんで俺自分の部屋にいるんだ……? さっきまで倉庫にいたはずなのに」

 と言ってから息を切らせてスイに寄り掛かる美鈴に気付くと飛び起き、

 「姫!? なんでそんな苦しそうなんだ⁈」

 そう尋ねると美鈴は微笑んで幸貴に抱き着くが訳が分からないている彼の肩にスイが手を置くと、

 「僕が説明するから、今は姫を休ませてあげましょう」

 と言い幸貴のベッドに美鈴を寝かせてからリビングで全て説明すると彼は両手を顔を覆うようにしてため息をつくと、

 「俺はまた姫に迷惑をかけたのか……眷属として本当に情けない……」

 そう声を震わせながら言うと人狼が静かな口調で、

 「それは違うよ、彼女は魔力の消費が激しい呪文だと知っても君を助けるために魔法を使ったんだ、それなのに君は迷惑をかけたと思い込んで……君は彼女の決意を迷惑をかけたと言って水に流すの?」

 と鋭い視線を向けて言うと幸貴は俯いて少し考えてから両手で頬を強く叩くと吹っ切れた顔で人狼に、

 「俺は姫がしてくれたことを水に流したくはない、次は謝らないで礼を言うよ」

 そう言って美鈴が眠っている自分の部屋で寝てい自分の部屋へ行き目を覚ますのを待ったのだが、一行に、起きなかったので美鈴の家に連絡をすると誠と真人が息を切らせながら来て眠っている美鈴を見て泣きながら名前を何度も呼んでいてので、シゲトシに大声で叱られそのまま誠が背負って家へと帰ったのだが、その後から幸貴達は美鈴に合えず1週間が過ぎた頃彼らは綾子に呼ばれ家に行くと広い応接間に通され、イスに座って待っていると眉間にシワを寄せながら綾子が入って来てイスに座ると低い声で、

 「1週間前にシゲトシさんから大方の事情は聞きました……そのうえで私は考えその末にあなた方の力の強化が必要だと改めて確信したので、今からあなた達には修行をしていただきます」

 と鋭い視線を彼らに向けて言うと固まってしまった6人に綾子は笑顔で、

 「最初は美鈴が幼稚園に言っている時のメニューですので辛くないですから安心して大丈夫ですよ?」

 そう言い彼らを道場の6人部屋に案内すると服を手渡し、

 「早速それに着替えて付いて来てください、遅れることは原則禁止ですからね?」

 と笑顔で言ってドアを閉めると呆然としていた6人は我に返り慌てて着替えると指定された道場の中庭まで行くとそこにはずっと笑顔を絶やさない綾子が立っていて、

 「5分遅刻です、腕立てを50回してください」

 そう言われ文句を言いかけた春希を睨むと手に持っていた竹刀を地面に叩きつけると驚く6人に、

 「ここでは私がルールです、それと私の事はこれから師範と呼びなさい、いいですね?」

 と言ってまた竹刀を叩きつけるので6人は驚いていると綾子は見回すので彼らは背筋を伸ばし大きな声で、

 「は、はい! 師範‼」

 そう返事をしてから腕立てを始め全員が終わると次は学校のグラウンドよりも広い中庭を100周走り、その後からは地獄のような修行が始まり最後は瞑想で終わると、風呂に入った後夕食を取り部屋へ戻ると春希は布団に倒れ込み顔をしかめて大きな声で、

 「あ、あれのどこが幼稚園児でも出来る修行だよ!? すでにスパルタじゃねぇか‼」

 と半泣きで言っていると幸貴がかなり不機嫌そうに、

 「喚くなよ、うっとうしい‼」

 そう春希を睨みつけながら言うので彼も睨み返しながら、

 「んだと⁈ 姫とは喧嘩はしないって言っといて喧嘩吹っ掛けてくんじゃねぇよ!」

 と返し立ち上がると幸貴の胸倉を掴みそれを周りのメンバーが止めようとした時突然身体が重くなり、それまで立っていた6人が膝をつくと部屋に仕掛けてあるスピーカーから綾子が、

 「修行中にそのような問題を起こせば重力魔法が発動しますから気を付けてくださいね? それと1人が何か起こせば連帯責任で全員に術がかかるのでそこは覚悟してくださいね」

 と説明してから魔法を解きそれと同時に6人は尻もちをつくと全身から汗を流して唸るように、

 「も、ものすごい威力の魔法ですね……これでは問題を起こせませんよ、身体がもたない……」

 そう言って先程喧嘩をしようとしていた幸貴と春希を見やると2人は背を向けまだ怒っていたので、スイは握りこぶしを作ると笑顔のまま低い声で注意すると2人は正座をして謝った後、敷かれた布団に横になって眠り次の日も同じ修行をするといった日々を6人はこなしていった。

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