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天狗の同級生  作者: 桜本 結芽
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第5章 不思議な転校生

 美鈴が凶悪な狼におそわれたその日の夜彼女は夢の中で自分とそっくりな女の子と幸貴が、途方に暮れた表情で浜辺に座り何かを話し合っていて、全ては聞けなかったのだが『分家』や『当主』といった言葉が聞こえ、不思議に思い首を傾げたのだがなぜか2人が幸せそうにも見えたので美鈴は微笑んでいると突然女の子が何かに気付き、青ざめた顔で幸貴を突き飛ばして庇うように覆いかぶさると女の子の身体から血が飛び倒れ込むと、幸貴は涙を流しながら女の子の名前を呼んでいるとそこで目が覚めた美鈴は跳ね起き高鳴る胸を押さえていると一緒に寝ていたシゲトシが目を覚まし、

 「どうしたのじゃ美鈴? 嫌な夢でも見たのか……?」

 と気づかわし気に尋ねると美鈴は先ほどの夢の話をすると彼は顔をしかめ黙り込んだので、気になって尋ねるとため息をついて首を振ると、

 「今のお主には酷な話になるからの、今は言えん……じゃがその時が来れば説明するから今日はもう寝なさい、明日も学校があるんじゃ遅刻をすれば綾子が泣いてしまうからの」

 そう笑顔で優しく言うと美鈴は頷いて返事をするとまた横になり目を閉じ、

 「おやすみなさい、シゲトシさん」

 と言って眠りについた。


 そして翌朝目を覚ました美鈴は起き上がり一度伸びをしてベッドから降りると着替えて支度をした後、階段を降りてリビングへ行き家族と共に朝食をとってから家を出るといつものように幸貴とスイが待っていたので、一緒に学校へ行くとなぜかクラスメイト達が以前よりよそよそしくなっている事に気付き困惑していると、教室に準人とスイが入って来て美鈴や生徒達が席に座ると準人が少し話をしてから、

 「き、今日から新しい生徒が入ります……仲良くしてあげてくさださいね……」

 と言ってからドアの外に立つ生徒を呼ぶと緊張の面持ちで入って来たのは綺麗な女の子で、黒くて長い髪をポニーテールにした彼女は黒板の前でぎこちなく頭を下げてから、

 「あ、秋札 羽紅です! 今日からよろしくお願いします!」

 そう言って微笑むとクラスメイト全員が見とれて顔を赤くしていたのだが、美鈴や幸貴達はなにか不思議な感覚になっていたので美鈴が首を傾げていると、準人は一つ咳ばらいをしてから秋札に美鈴の隣の席を指定して彼女が座ると、そのままホームルームを始めその後も順調に授業は進み昼休みになると美鈴は弁当を持って教室を出たので、秋札は彼女に話しかけようとしたのだがクラスの女子数人に囲まれ質問攻めに合いひとつひとつ答えていると、一人の生徒が秋札に耳打ちをするように近づき小さな声で、

 「あのね、笠岡さん……隣の席の人とは関わらない方がいいよ、あの人名家なのか知らないけどよく何か呟いているし、有川君と竜真君を変な名前で呼んでいつもどこかでお昼ご飯食べてるの、しかも帰る時でもいつも一緒だし……まるで自分の事お姫様とでも思ってるみたいでホントに何様のつもり⁈ って感じ‼」

 と憤慨しながら言っていると他の生徒達も同意するように何度も頷いていたので、それを見た秋札は大きなため息をつくと自分を囲っている生徒を見回してから、

 「そういう陰口はやめた方がいいよ? 大人になってもろくな人生送れないし敵を増やすだけ、それにみっともない事をして仲間を増やしてもすぐに離れるんだから」

 そう睨みつけながら警告すると女子生徒達は黙り込んだので昼食の包みを持って美鈴を追いかけて教室を出て気配を辿って探していると、屋上で弁当を食べている美鈴を見つけたのでわざとらしく音を立てて扉を開け彼女に近付きながら笑顔をつくり、

 「笠岡さん、私も一緒にお昼ご飯食べてもいいかな? 教室はまだ慣れなくて……」

 と言うと美鈴は緊張しながらも嬉しそうに微笑むと、

 「う、うん! 私で良ければ一緒に食べよう! あ……でもこの後まだ4人ほど来るけど大丈夫?」

 そう気づかわし気に尋ねると秋札は笑顔で頷くので美鈴は胸を撫でおろしてから食事を再開し、秋札は隣に座って包みを開けて食べているとまたドアが開き、中から幸貴達が出て来ると美鈴に手を振ってから秋札を見ると、

 「先に来てたんだ、早いな笠岡は」

 と言って秋札にも微笑みかけると、

 「秋札さんも来てたんだね、僕達も一緒でいいかな?」

 そう言われた彼女は微笑み返すと頷き、

 「うん、お昼ご飯を食べる場所を探していたら偶然見つけて、それに笠岡さんは隣の席だし仲よくしたいなって思って」

 と言うと6人で昼食を取り少し話をした後また授業を受け放課後になった頃には美鈴と秋札は打ち解けたので、一緒に帰り道を歩いていると突然車が目の前で止まり黒いスーツを着て真っ黒なサングラスをかけた数十人程の男達が現れ、彼らが2人を囲むとその中でも一番大きな体でスキンヘッドにしている男が美鈴を睨みつけながらかなり低い声で、

 「笠岡 美鈴……今から我らと共に来てもらう、もし抵抗するならばそこにいるガキを痛めつける」

 そう言うなり後ろに庇っていた秋札を素早く捕まえると悲鳴を上げ抵抗する彼女を助けるため、魔法を使おうとするのだが男はナイフを取り出し彼女の首に当てると乾いた悲鳴を上げていたので、美鈴は歯を食いしばって魔法の開放を止めおとなしくついて行く事を決め、2人は目隠しをされて車に乗せられ走り去る様子をずっと見ていた幸貴の眷属であるカラスが慌てて飛び立つと、学校で日直のしている幸貴を見つけてカラスは彼の肩に乗ると、

 「主様、主様! 姫殿が怪しい男達に誘拐されました‼ 男の数は20人ほど、御友人を盾にして車に乗せられ去って行きました!」

 と慌てて伝えるとその場で固まる幸貴を見て頭をつつきながら、

 「主様?」

 そう心配して呼ぶとやっと動いた彼はカラスに動揺が隠せない様子で、

 「な、仲間と共にその車を見つけてくれ、俺はスイ達を呼んで一緒に向かうから!」

 と言い帰ろうとしていた春希に小声で伝えてから職員室に行ってスイと準人にも説明して、4人は急いで支度をしている途中にまたカラスが飛んできて美鈴が連れて行かれた場所を伝えると、彼等は全速力でその場所へ走って行きついた場所は人通りのない廃倉庫で、美鈴と秋札は隣り合って両腕を後ろで縛られている事を確認すると、4人は頷き合って中へ入り駆け出すと50人程の男達が立ちふさがり銃を放って来たので、それを避けながら戦っていると美鈴の隣にいた秋札がいない事に気付いた幸貴が近付こうとした時美鈴が大きな声で、

 「幸貴! 後ろ……!」

 そう言われた彼は咄嗟に振り向き拳を上げた瞬間目に入ったのは、残忍な笑みを浮かべ魔法の光をまとった拳を振り上げる秋札の姿で、幸貴は驚きの余り防ぐことが出来ず直撃を受けて倒れ美鈴が何度も呼んぶが動かないので涙を流して叫んでいると、入り口から白い毛並みに綺麗な翼が生えた馬が猛スピードで走って来て追い打ちをかけようとしていた秋札から幸貴を救うと、一同は呆然としていたのだが扉の方から黒くて短い髪から獣の耳を生やした男性が、

 「ちょっと……置いてくなんてひど過ぎだよ、レイ! 始めに見つけたのはオレなのに本来の姿に戻るなんて反則だよ……」

 と涙目で馬に抗議するが馬はその男性を振り返ると平然とした口調で、

 「ジョーの足が遅すぎるから先に行くと、我はちゃんと言ったはずだ」

 そう言った後身体が光りだすがすぐに収まるとそこには白い長髪をポニーテールにして丸メガネをかけた男性が立っていて、謎の2人を見た黒スーツの男達は驚愕の面持ちで震え奇声を発しながら銃を放つと、その際に出た煙で2人組は隠れたのだが倉庫に風が吹いて煙が散っていくと、男性達は何事も無かったように立っていて、さらに耳を生やした男性が握っている手を広げるといくつもの弾丸が床に落ちそれを見たスーツ男達は顔面蒼白になり後ろに下がるのだが、秋札一人だけが前に出て来て男達を睨みつけると大きな声で、

 「臆するな! 我ら組織の品位を落とすんじゃねぇよ」

 と喝を入れると男達は威勢よく返事を返しまた銃を構え秋札は2人組に歩いて近付くと、

 「お前らは人狼とペガサスで間違いないな……?」

 そう尋ねると白髪の男性が頷いて、

 「そうだ、我らは姫君を守ようにとあるお方に頼まれここにいる……だがなぜ我らの事を知っている? 裏魔導士会最高幹部、秋札 羽紅」

 と鋭い目つきで尋ね返すと彼はタバコに火をつけ深く吸ってからゆっくりと吐くと残酷な笑みを向け、

 「なぜ……? そんな事分かり切っているだろう? あのガキを消して笠岡の血を絶やすためだ、どれだけの命を犠牲にしてでも情報を手に入れるさ!」

 そう言うと笑みを消し振り返ると右手を振りながら、

 「だが、今日の所は引いてやるよ、さすがに分が悪いからな……だが覚悟はしておくことだ」

 と言った後魔法で去る間際美鈴が涙を流しながら、

 「秋札さん……どうして幸貴を傷つけたの? 私を消すんなら私だけを狙えばいいのに……」

 そう言うと秋札は冷めた目つきで見返すと、

 「俺は学校なんてくだらない茶番には付き合う気はないんだ、後はこいつらと遊んでいろ」

 と言い残して消えると先ほどまで動いていなかったスーツ男達が突然獣のように吠え、一斉におそいかかって来たのでスイ達が戦っている間に美鈴は治癒魔法で幸貴の傷を治していき、スイ達は苦戦しつつも男達全員を倒し疲れていたのだが美鈴に近付いて行き、一行に目を覚まさない幸貴を心配して見つめているとしばらくして彼が小さく呻きながら目を覚まし、美鈴を見ると勢いよく起き上がると彼女を抱きしめながらとても嬉しそうに、

 「鈴! 無事だったのか!? 俺、お前が死んだんじゃないかって思って心配したんだぞ⁈」

 そう言うと身体を離し微笑んでから辺りを見回して不審げな表情で、

 「ここ……どこだ? それに知らない奴ばかりだし……」

 と言っていたので春希が険しい顔つきで前に出て幸貴の胸倉を掴むと、

 「てめぇふざけてんのか……?」

 ケンカ腰でそう言うと幸貴は睨み返しながら春希の手を掴み、

 「初対面のくせしてなんだよ……それにお前、人間じゃねぇだろ?」

 そう言ってから美鈴に振り返ると彼女に、

 「こいつらは誰なんだ、鈴? 俺らは本家から逃げたはずなのに……」

 と辺りを見回しながら言っていると慌てて駆けつけたシゲトシに気付くと美鈴を庇うように前に出て来て威嚇するように大きな声で、

 「な、なんでじじぃがここにいるんだよ!? 俺は鈴を手放さない、そう本家に伝えろ!」

 そう言っていたので困惑しているスイ達をシゲトシが呼ぶと小さな声で全員に、

 「おそらく彼は何らかの術をかけられて記憶が遡っておる、じゃからあ奴の記憶は今100年前に戻っているようじゃ……それに美鈴をあの子の曾祖母である笠岡 鈴と思い込んでおる、あの子は鈴と瓜二つじゃからの」

 と言ってため息をつくと幸貴に近付き警戒する彼と目を合わせると倒れるように眠りについた幸貴に、

 「すまんが今しばらく眠っていなさい」

 そう悲し気に言うと眠っている幸貴を抱えている美鈴にシゲトシは真剣な面持ちで、

 「美鈴よ……お前は今この子の事を考えていたじゃろう? ワシが知る限りの事じゃったら話してやる、その上で助けたいのであれば彼の術を解く方法を伝授してやろう」

 と言ってから美鈴の返事を待つとしばらくして彼女は決心がついたのか真剣な顔で、

 「幸貴の事……教えてください、私は彼を助けたいです‼」

 そう言うと幸貴を抱え上げ歩きだしてスイ達も後ろを歩いて行くのだが人狼とペガサスは、驚きの余り固まっていたので春希が説明すると困惑の面持ちで人狼が、

 「す、すごく強いんだね……」

 と言いペガサスも頷くと彼等も廃倉庫からでて幸貴とスイが暮らす家に行き、幸貴をベッドに寝かせると美鈴達はリビングにある大きなソファーに座ると、シゲトシは中央に置かれた机の上に乗り座ると厳しく険しい面持ちで幸貴の過去の事を語り出した。

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