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天狗の同級生  作者: 桜本 結芽
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第2章 妖怪の転校生

 学校への道のりを歩いていた美鈴達は大通りに入って進んでいると、後ろから同じクラスの女子数人が周りに聞こえる程大きな声で、

 「笠岡さんが有川君とリチャード先生を連れて歩いてるんだけど、どういう事⁈」

 と言っていたのだがまだ機嫌が悪かった美鈴は無視して通り過ぎると、それが気に食わなかった彼女達は美鈴を追いかけ先回りすると高笑いしながら、

 「どうせ幽霊さんにたぶらかせたんでしょ? いるはずもないのに子供みたいなこと言ってホントにバカじゃない?!」

 先ほどよりも大声で言うと肩を掴んで押し美鈴は転倒したので女子生徒達が笑っていると、美鈴は立ち上がりながら口早に呪文を唱えていて、それが霊を実体化させる魔法だと気付いた幸貴とスイはため息をつき、最悪の事態を防ぐため魔力を解放するのと同時に呪文の詠唱が終わった美鈴が不安げな表情の女子生徒達に、 

 「そんなに霊が見たいなら見せてあげるよ」

 そう言って生徒達の後ろを指差すとそこから青白く冷たい腕が現れ次に血だらけの顔も現れたので、生徒達は顔を青ざめて悲鳴を上げると逃げるように学校へ走って行き、それを冷めた目つきで見送った後美鈴も登校するため霊の実体化を解き歩き出すと、ずっと見ていた他生徒は避けるように道を開けていくので美鈴は俯いたまま学校へ行き、校門の前でスイと別れ幸貴と教室へ向かい入った途端静寂に包まれ次に小さな声で呟き合うクラスメイトを無視して彼女が席に座り、しばらくしてチャイムが鳴ると担任教師とスイが入って来てもう1人男の子が入って来ると担任の竜真 歩が、

 「み、皆さん……これから転校生を紹介します……お、小野 京介君です、仲良くしてくださいね……」

 と小さな声で男の子を紹介するとその端正な顔立ちに黄色い声を上げる女子生徒達に対し小野は不機嫌そうな顔で頭を下げてたが、美鈴は彼から不思議な感覚を感じていたので見つめていると目が合い俯くと彼は後ろの席に座る幸貴に気付き大声で、

 「な、なんでてめぇがいるんだよ!?」

 そう言っていて幸貴も彼の事に気付いて余程驚いたのか勢いよく立ち上がりイスが倒れ教室がザワついていたので、担任がため息をついて指を鳴らすと美鈴と幸貴、スイや小野以外の生徒が消えて赤い壁に囲まれていたので驚いたように美鈴が、

 「えっ! 結界!?」

 と声を上げていると担任がいつもと違い自分に酔いしれたように、

 「さすが僕が創った結界だ、重要人物以外入っていない‼ ああ、美しい‼」

 自分を抱きしめるような仕草をしながらそう言っていたので固まっている美鈴達に小野が、

 「こいつは普段こんなだから気にするな」

 親指で指しながら言っていたので竜真は額に手を当てて、

 「またそんな事を言って……京介は僕の美しさに……」

 嫉妬しているねと言いかけたが小野が被せるように、

 「そんな事より何でお前がここにいるんだよ!? 俺は聞いてねえぞ‼」

 そう怒鳴ると幸貴も睨みながら小野に、

 「それは俺のセリフだ‼ この間ヒトとは関わり合いにはなるかって言って山にこもってたくせに、何してんだ! 思いっきり矛盾してるだろこのバカ‼」

 と言い2人が睨み合っていると竜真が間に入り、

 「まぁまぁ、今日はこれくらいにしないと笠岡さんが困っているよ?」

 そう仲裁に入り美鈴を指差すと涙目でうろたえる彼女を見た2人は互いに距離を置いて背を向けると、安心して息を吐く美鈴に竜真が真剣な顔で、

 「笠岡さん突然の事ですがなぜ妖怪である僕達がこの学園に集まりヒトとして生活をしているかは、ご存知でしょうか?」

 と尋ねられた美鈴は考え込んでいたので幸貴が口を開き何か言おうとしたのだが、

 「私が……命を狙われているからですか?」

 神妙な面持ちで美鈴が答えると竜真は頷き、

 「そうです、なので今は1人でも力の強い者をあなたの傍らにおきたいと、あの人が僕達の生活を条件付きで保証してくれました」

 そう言うと美鈴は緊張の面持ちで竜真に、

 「じ、条件って……なんですか?」

 と尋ねると彼は笑顔で美鈴の前に膝き手を取ると、

 「あなたと契約する事です」

 そう言い小野の腕を引き彼も跪くと諦めたように舌打ちをすると、小野も美鈴の手を取るので竜真は笑顔で美鈴を見上げ、

 「と……いう事で、僕達とも契約をお願いします」

 と言っていたので美鈴は竜真と小野とも契約をしてその証である笠岡家の家紋を刻むと、竜真には準人と名付け小野には春希という名前を授けて契約が終わり、後はシゲトシに手を噛んでもらうだけになったので、授業をするために結界を解き美鈴達は何事もなかったかのように席に座り、ホームルームが終わると授業を受け昼休憩に5人揃って屋上で昼食を取っていると急にドアが開き、中から左目を眼帯で隠して初等部の制服を着た男の子が出て来ると美鈴を指差し大声で、

 「お嬢! 俺と勝負しろ‼」

 そう言ってため息をついている美鈴に殴り掛かるが彼女はそれを簡単に受け止めると呆れたように、

 「旬、これで今年何度目? 毎回初等部や鍛錬サボって私と決闘して春香さんにオシオキされてるのに良く飽きないわね?」

 と言うと旬は一瞬固まってから顔中に汗をかき視線を空に泳がせながら、

 「そ、そんなの怖くねぇし! それに俺はもうガキじゃねぇ!」

 美鈴と手合わせをしながら強気に言っていたのだが彼の背後から誰かが近付き肩に手を置いて、

 「そう、怖くないの……それじゃあ意味ないわね?」

 そう声がしたので旬は震えながら振り返るとそこには着物姿の女性が立っていたので旬は悲鳴を上げ、

 「か、かか、母さん!? 何でここにいるんだよ?!」

 恐怖に顔を強張らせて言っていたのだが着物の女性はそれを無視して美鈴に頭を下げると、

 「毎度の事ながらうちのバカ息子が申し訳ございません」

 と謝ってから暴れて抵抗する旬の肩を掴んで立ち去ると呆然と見ていた幸貴達に美鈴がため息をつきながら、

 「あの子は笠岡家の分家で大門家の末っ子の旬って言うんだけど、生来の戦闘バカだから良く学校を抜け出しては私と手合わせを願って来るのよ、だから一度気を失わせたんだけどよけいに手合わせしたがってしまって……」

 そう説明するとなぜか幸貴達が引いていたので美鈴は不思議に思い尋ねると代表して春希が、

 「大門家と言えば代々笠岡家をヒトから守るために幼い時から戦闘術を教えられて、学校に上がるまでには巨大な熊を素手で倒すって噂があるやつだろ……? そいつを、倒したのか……?」

 混乱しながら尋ねると美鈴は怪訝な顔つきで、

 「そうだけど……熊なんて私は6歳の時に倒しているし、旬は小4なのに怖がってまだ倒せてないから結構弱いよ?」

 と平然と言われたでその場の全員が固まっていると幸貴が涙目で、

 「お、俺……絶対姫に勝てる自信ない」

 そう言っていたので美鈴が驚いていると横で微笑みながら気を失っているスイに気付いた幸貴が両肩を掴んで前後に揺らすと我に返ったスイが、

 「ひ、姫が戦っていた……何も見えなかった……」

 と混乱しながら言っていたので美鈴が大声で名前を呼んでいると横から、

 「なにを騒いでおる! 笠岡家たる者冷静を欠くでない!」

 とシゲトシに喝をいれられ落ちついた美鈴が先ほどの事を説明すると彼はため息をついて、

 「あの小童め、また来たのか……懲りんやつじゃ」

 そう言って首を横に振った後準人と春希に気付き見上げると、

 「お主らが先ほど契約した鬼と白狐か、変わった巡り合わせじゃが、これからも美鈴を頼むぞ」

 笑顔でそう言い手を噛むが2人とも自信なさげに明後日の方角を向いて、

 「お、俺等がいたらよけいに姫の邪魔になりそうだけど……」

 と春希が言っているとシゲトシが大声で、

 「鬼がそんな弱気でどうする‼ シャキッとせい!」

 そう言われ反動で背筋を伸ばす春希にシゲトシがため息をつくと一同を見回し、

 「ワシがここまで来たのは他でもない、大事な話があるんじゃ」

 真剣な面持ちで言うとさらに、

 「ここ数日、誰かがお主らを監視しておるんじゃ、あらゆる動物に干渉魔法をかけそれらの目を使っているんじゃが、まだ魔力の根源を見つける事は出来ずにいる、じゃから不用意に1人になるでないぞ? たちまちにおそわれてしまうからの」

 と言うと青ざめる一同にシゲトシは微笑むと、

 「まぁ、用心すればいいだけじゃ、それじゃあワシは家に戻るからお主らも勉学に励みなさい」

 そう言って振り返ると屋上から飛び降り先に家へと帰った。

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