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天狗の同級生  作者: 桜本 結芽
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第1章  初めての対面

 シゲトシと共にいつもよりかなり遅い時間に帰った美鈴はそっとドアを開けて入ろうとしたが、途中でドアが勢いよく開き中から長男の誠が彼女を抱きしめながら大声で、

 「み、美鈴ー! こんなに遅くまでどこに行ってたんだよ⁈ 兄ちゃんはそんな不良に育てた覚えなんてないのにー‼」

 と半泣きで言っていると後ろから次男の真人がエプロンを着けて身体を震わせながらかなりの低音で、

 「兄さん……そんな大声で美鈴の評判が落ちる事言わないでください……本気で呪いますよ……?」

 真後ろに立って殺気を出しながら言うと誠が怯えたように後ずさりながら、

 「ま、まま、真人‼ 殺気を出しながら背後に立つなって言ってるだろ!? 俺が気配に敏感なの知ってるくせに、ひ、卑怯だぞ⁈」

 そう抗議するがそれを完全に無視して真人は美鈴の前に行くと、

 「大丈夫だったか? 変な奴に絡まれたんだったら僕に言うんだぞ? そいつに厄災の呪いをかけてやるからな……?」

 かなり真剣な表情で言われた美鈴は少し迷ってから学校からの帰り道に起きた事を話すと、誠と真人は雷に打たれたように固まってしまい数秒経った後美鈴の肩を掴み真剣な面持ちで、

 「美鈴……今すぐその天狗とエルフを呼びなさい、彼等がちゃんと美鈴を守れるか見定め……いや、占ってあげるから」

 と恐ろしいほどの気迫で言われ困った美鈴はシゲトシを見ると彼はため息をついて、

 「一度合わせた方がいいじゃろうな……そうせんと納得も出来んじゃろ」

 そう言いあくびをするので美鈴は諦めて小さな声で2人を呼ぶとすぐに風が吹き、背中に黒い翼を生やしてかなり不機嫌そうな幸貴と上機嫌で微笑む尖った耳のスイが現れたので、美鈴が驚いているとスイが彼女の手を取り嬉しそうな笑顔で、

 「どうしました? 姫」

 と言っていたので美鈴は先ほどの事を説明するとスイは納得したように頷いたが幸貴はまだ不機嫌そうな顔だったのでスイが、

 「姫の前でそんな顔をするのはいただけないですよ? ましてやご家族の前では……ね」

 人差し指を幸貴の鼻に当てて言うと彼はため息をついてスイと共に誠と真人の前に跪くと、

 「俺等は命をかけて姫を守ります、心配だろうけど信じてください」

 真剣な顔でそう言い頭を下げたので兄2人は突然涙を流しながら、

 「ま……まだ未熟な妹ではありますが……よろしく……お願い……しますぅぅ~」

 そう言うが最後の言葉は何を言っているのかわからない程泣いていたので、幸貴とスイが少し引いていると音もなくドアが開き外から、

 「全くだらしないわね! しっかりしなさい2人とも‼」

 と大声で一喝する女性の声がすると兄2人は先ほどまで泣いていたが急に背筋を伸ばし正座しながら、

 「お、おかえりなさい!」

 緊張のあまり大声で言うと入って来た女性に美鈴も頭を下げて、

 「おかえりなさい、お仕事お疲れ様でした!」

 そう言って女性から呪術具を受け取るとそれに集中してその中に入った邪気を浄化し、また女性に返すと彼女は驚いて固まっている幸貴とスイを見て美鈴の説明を聞いた後落ち着いた様子で、

 「こんばんわ……私の挨拶がまだですね、私はこの子達の母で笠岡 綾子と申します、現笠岡家の当主を務めていますの」

 上品な物言いと仕草で自己紹介をすると幸貴とスイも慌てて挨拶をしていると、後ろでずっと3人を見ていた真人が突然大きな声で叫ぶと震える声で、

 「も、もしかして……僕が水魔法に失敗して死にかけた時助けてくれた百面天狗さま……ですか?」

 と言うと素早く幸貴の手を掴み輝く瞳を向けているとやっと思い出したというように幸貴が、

 「そう言えば、あの時めちゃくちゃ噛みまくった挙句魔法を失敗した子供がいたな‼ あの時よりかなり成長していたから分からなかったよ! それよりもお前、男だったのかよ?!」

 昔を思い出したように真人の頭を撫でながら言うと急に黙り込む彼に不思議そうな顔で幸貴が、

 「ど、どうしたんだ? なんかまずい事言ったか?」

 焦りながらそう言うと横で綾子がとても嬉しそうに、

 「実はこの子、昔からかわいくて女の子みたいだったから、私の着せ替え人形にしていたのよねぇ、今は美鈴がいるしこの子が嫌がるから出来ないのけど、ねぇまーちゃん?」

 満面の笑みで暴露された真人は耳まで赤くしながら、

 「マ、母さん! その事を美鈴の前でしないでくださいって言ったじゃないですか‼」

 大声でそう言うが綾子は開き直ったように首を傾げて、

 「どうして? かわいいのに……それに今ママって言いかけてやめたのは何で?」

 とても楽し気に尋ねると真人は両手をばたつかせてさらに大声で叫んだ後、

 「そ、そんな呼び方してません! それよりこれが美鈴に知れたら……!」

 そう言いかけたが左袖を引かれ振り向くと半泣きになりながら綾子を向いて、

 「目を輝かせて僕を着せ替え人形にするに決まっているからですよ……」

 と言うと半ば諦めたように落ち込んでいたので綾子は名案と言った様子で幸貴とスイの腕を引き、

 「ならこの2人も連れて行けば恥ずかしさも三分の一にならない?」

 先ほどよりも笑顔で言うと幸貴とスイは青ざめながら、

 「お、おっとー、晩飯を食わねえと元気が出ないから行かないとなぁー」

 幸貴が一本調子でそう言うとスイも頷きながら、

 「そ、そそ、そうですね……今日は何が食べたいですか……?」

 明後日の方を向きながら言いドアノブに手をかけた途端美鈴が大声で、

 「幸貴! スイ! 待ちなさい!」

 と名前を呼ばれさらに魔法の鎖に縛られた2人に美鈴が、

 「逃げるのはダメだよ?」

 殺気のこもった笑顔で言うとすでに捕まってしまった真人と共に美鈴の部屋に連行され、綾子と誠とシゲトシはため息をついて夕食を作るためにリビングへ行き、女装させられた3人が疲れた様子で出て来るとあまりにも完成度が高かったため綾子達は驚き、急遽撮影会が始まってしまいその日は夜中まで大騒ぎになり結局幸貴とスイは笠岡家に泊まることになってしまい、翌朝目覚めた美鈴が部屋を出て寝ぐせをつけながらリビングに降りると、スイが誠のエプロンを着けて朝食を作っていたので驚いて立ち尽くしていると彼女に気付いたスイが微笑みながら、

 「おはようごさいます、姫は早起きなんですね……もうすぐ出来上がるので座って待っててください」

 そう言ってフライパンで焼いていたパンケーキをひっくり返すと皿に2、3枚ほど乗せて机に置き手早くバターと蜂蜜をかけるとそれを目を輝かせて口に入れた美鈴は幸せそうな笑顔で、

 「おいしーい! お店みたいな味ー!」

 と叫んでいると誠と真人が匂いにつられたようにリビングに入ると、

 「いい匂いだなぁ!」

 誠がよだれをたらしながら言うと真人は笑顔で、

 「僕にもいいですか?」

 制服を着てから言うとイスに座りパンケーキを食べているとふと辺りを見回してからスイに、

 「幸貴さんはまだ寝てるんですか?」

 そう尋ねると彼は困ったというように微笑んで、

 「彼はいつもギリギリまで寝ているんです、遅刻さえしなければいいみたいな思考の持ち主なので」

 と肩をすくめて言っていたのでみすずはため息をついて、

 「しかたないから、叩き起こしてきます!」

 握りこぶしを作りイスから降りると幸貴が寝ている部屋へ行きドアを勢いよく開けるとベッドに近づき幸貴が被る布団をはがすと、

 「もうっ! 早く起きなさい! 寝すぎ……よ……」

 そう言われ突然の寒さに震えながら幸喜が、

 「うぅ、寒い……あと5分だけ……」

 寝かせてくれと言いかけたがいつもと違う声に気付き目を開けると、目の前で固まる美鈴を見て幸貴も固まると突然美鈴が悲鳴を上げたので、慌てて布団を奪い返し身体に巻き付けると同時に誠と真人が血相を変えて部屋に押し掛けると、

 「美鈴?! 何があったんだ!?」

 と叫んでいたがベッドの上で布団に包まれて顔を赤くしている幸貴に気付いた二人は怒りを露わに睨みながらにじり寄り、

 「どういう事ですか……? 説明してください……」

 真人が殺気を放ちながら言うと後ろでスイが慌てる様子もなく部屋の前で、

 「やはり脱いでいましたか……彼すごく暑がりで寝る時はいつも下着になるんですよ」

 ため息をつきながらそう説明すると幸貴に、

 「あなたも、どこかしこで脱がないでください!」

 そう叱ると幸貴はまだ赤面しながら、

 「し、仕方ないだろ!? 癖なんだから!」

 と大声で反論するが誠と真人に殺気を帯びた笑顔で肩を掴まれ、

 「理由はどうあれ美鈴に何かしたら……わかるよな?」

 同じタイミングで言われ幸貴は半泣きになりながら、

 「主人に手を出すわけないだろ!?」

 叫ぶように反論すると部屋の外から綾子が冷静な口調で、

 「ところであなた達、出る時間は分かってるわよね?」

 そう言われ真人が慌てて腕時計を見ると家を出る時間を少し過ぎていたので、兄2人は慌てて部屋を出ると数分で朝食を取り家を出て行くが、ずっと放心状態で座り込む美鈴に綾子が足音を立てず近付くと耳元で手を打ち鳴らし、

 「ほら、美鈴! いつまで座っているの? 早く支度しないと遅刻するわよ、ママが手伝ってあげるから部屋へ行きましょう!」

 腕を強く引かれながら言われて美鈴はやっと我に返ると一緒に部屋に行ったので、幸貴も包まっていた布団から出て支度をしているとスイと目が合い彼がため息をついたので、

 「言いたいことがあるなら言えよ!」

 少し怒ったように言うとスイは肩をすくめてから、

 「その癖は早く直さないといずれ姫に嫌われますよ?」

 と的を射抜かれたので言葉に詰まっていると手を振り部屋を出て行くので、

 「お、大きなお世話だー‼」

 大声でそう言って地団太を踏んでいるとスイがわざと落としたキッチンペーパーを踏んで足を滑らせ、尻もちをつきその後しばらく幸貴は不機嫌な顔で3人一緒に学校へと歩いて行った。

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