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天狗の同級生  作者: 桜本 結芽
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プロローグ 同級生と人気教師の正体

 ――その時美鈴は何も見えない程暗い洞窟の中を必死に走ってすぐ後ろから襲い来る〔何か〕から逃げていて、その〔何か〕は黒くて大きいモヤに包まれていたが洞窟を崩しながら猛スピードで迫って来ていたので、美鈴は咄嗟に【誰か】の名前を叫びながら走る速度を上げていた――

 「……サン」

 と机に突っ伏して微睡む美鈴の耳によく知る声が聞こえ未だに夢の中で走っていた彼女は汗をかきながら薄目を開けると、そこに光に包まれた人物が立っていたので呆然としている彼女に光り輝く人物が、

 「カサオカサン?」

 そう言ってから、

 「ダイジョウブデスカ?」

 と片言の日本語で尋ねられ美鈴は驚きで目を瞬かせていたのだがハッと我に返り授業中という事を思い出すと、赤面しながら謝り座った時ふと後ろから視線を感じ慌てて振り向くと、真後ろの席に座る有川 和人が美鈴を険しい顔で睨んでいて、フッと目が合うと彼は視線を外したので美鈴は不思議に思いながらも前を向き授業を受けるが、数分でチャイムが鳴ってしまい日直が号令をかけて一日の授業が終わると掃除の時間になりいつものように美鈴は数人のクラスメイトに囲まれ、

 「はい、じゃあお願いね? 笠岡さん」

 そう言ってホウキを渡すとクスクスと笑いながら一番前に立つ女子生徒が、

 「これはリチャード先生の授業で居眠りした罰よ? いつものように《幽霊さん》に頼んで一緒にしてもらいなよ、そしたらすぐに終わるからさ!」

 と言って高笑いをしながら教室を出て帰っていくクラスメイト達をため息をついて見送ってから掃除を始める美鈴だったが、背後から視線を感じ取り瞬時に振り向くが教室には彼女しかおらずまたため息をついてから掃除を始め、全てが終わった頃には陽も暮れかけていたので急いで家に帰ろうと足早に歩いていると、突然地面が揺らぎ次の瞬間には授業中の夢で見ていた洞窟の中にいたので困惑していると、背後から何かを引きずる音がしたので慌てて振り向くと、大きな〔何か〕が近付いて来ていてソレが美鈴に気付くと臓腑も凍り付くような雄たけびを上げ、さらに洞窟を崩しながら驚くほどの速さで近付くので絶叫しながら逃げる美鈴だがソレはさらにスピードを上げ追い駈けながら、

 ⦅み……す……ず……⦆

 そう不気味な声で名前を呼ぶのでさらに怖くなり走り続けているが追いつかれてソレが手を伸ばし捕まりかけたその時、間に白い光が現れその眩しさに両腕で顔を隠していたのだが次第に光が止み腕を降ろすと、いつの間にか目の前に有川 和人がズボンのポケットに両手を差し込みながら立っていて、

 「全く、低級のゴーレムを使うなんてナメられたもんだな」

 と不機嫌に言い放ってため息をつくといつの間にか細身の剣を出していたので、ソレは一瞬怯んだが突然大きな声で吠え風貌を現すとソレの正体はやはり岩で創られたゴーレムで、それはまた一つ雄たけびを上げ怒り狂ったようにおそって来たので、有川は跳躍するとゴーレムの札に書かれた文字の右側を剣で切り裂くと着地して動かなくなったゴーレムに体当たりをすると簡単に崩れてそのまま消え去ると、有川は呆然と見ていた美鈴に手を貸して立たせると、

 「大丈夫か? 今回は弱い術者で運が良かったな、俺でも倒すことが出来たし」

 そう言い服の埃をはたいてから天井を見上げて、

 「そろそろあいつも辛くなるだろうから、こっから出るぞ」

 と言って指を鳴らすとまた地面が揺らぎ驚いていると次には帰り道に立っていたので、呆然としている美鈴の肩を誰かが触れたので慌てて振り返るとそこには英語教師のリチャードが立っていて彼は、

 「大丈夫ですか? お怪我は?」

 そう聞かれ口を開けて驚く美鈴を見て彼がさらに、

 「笠岡さん……?」

 と名前を呼ばれやっと気が付いた美鈴は震える声で、

 「ど、どうして有川君とリチャード先生が……?」

 混乱しながらそう尋ねるのだがリチャードは困った笑みを返しただけで有川を向き、

 「和人、中はどうだった? 黒幕は現れたんですか?」

 そう真剣な表情で聞くと有川は怒りで顔を歪ませながら、

 「いや……ゴーレムが一体だけ、それも魔力が低くて不完全な奴が創ったものだ」

 というやり取りをしていると途中で美鈴が割って入るように両手を上げて、

 「ね、ねぇ! 意味が分からないよ、どうして二人がここにいるの? なんで私は狙われてるの⁈」

 そう大声で尋ねると二人はキョトンとして互いを見合ってから有川が、

 「それはお前が一番分かってるだろ? 笠岡」

 と言われ口をつぐむ美鈴だったがすぐに有川とリチャードを指差しながら、

 「そ、それでも私がアヤカシであるあなた達に助けてもらった事も不思議なの‼」

 そう言うと次は有川が言葉に詰まっているとリチャードが、

 「やはり気付いていましたか、僕達の事」

 笑顔で尋ねてため息をつくとさらに、

 「さすが笠岡家次期当主ですね」

 と言われ困惑気味に見つめる美鈴を見てリチャードは諦めたような顔で有川に、

 「今、彼女に全てを説明した方がいいと思います、本当だったら知らない事を僕達は知っているんですし、僕達の正体を明かしましょう」

 そう真っ直ぐ目を見て言うと有川は大きなため息をついてから、

 「分かった、俺が説明するよ」

 腹をくくった顔で言うと美鈴と向き合い、

 「よく聞けよ笠岡、お前は……」

 と言いかけた時下の方から、

 ⦅待ちなさい、それはワシから話そう⦆

 そう声がして驚いた有川が後ずさって下を向くとそこにはとてもかわいい黒猫がいて、無言になる彼に猫が不思議そうに首を傾げながら、

 ⦅ん? どうしたんじゃ、天狗よ?⦆

 と尋ねられたので驚愕の余り固まってた有川は、

 「ね、猫がしわがれた声で喋った……!?」

 大声でそう言うと猫はムッとしたような顔で、

 ⦅笠岡の名は知っておきながらワシの事は知らんのか……?⦆

 呆れたような怒っているような声で言われたので有川は少し考えてから震える声で、

 「ま、まさか……あなたがあのシゲトシノヒコ様、ですか……?」

 そう恭しく尋ねると猫はまだ拗ねた声で、

 ⦅いかにも! ワシが笠岡家初代長老シゲトシノヒコじゃ、その小さい頭に刻み込みなさい⦆

 と言い小さい頭と言われて落ち込む有川を無視してチャードの方を向くと、

 ⦅お主は異国の者じゃの? ワシの名は耳にしとるか……?⦆

 見上げながらそう尋ねるとリチャードは跪き深く頭を下げると、

 「我々の国でもお噂は届いております、日の国に住まう魔術師一族の長殿」

 そう言ってから驚きすぎて口が半開きの美鈴に気付いたリチャードは不思議そうな顔で、

 「どうしました?」

 と尋ねると美鈴は慌てて口を閉じ両手をバタバタとしながら、

 「えっ! い、いや、リチャード先生いつもは片言だから日本語がそんなに話せるんだなって……」

 赤面しながらそう言うと面食らったリチャードは吹き出すと大きな声で笑いだすので、固まる美鈴に彼はまだ笑いが残る中、

 「私は普段自分の素性を隠しているだけですよ、ちなみに和人も普段と学校とでは違いますよ? 本当は口が悪いからいつも誰かと喧嘩をしてしまって……」

 最後はため息をつきながら言うと横から和人が、

 「ここ50年は誰とも喧嘩してねぇだろ?! 嘘を教えるな‼」

 と大声で抗議する彼を無視するように両方の掌で耳を覆う仕草をすると、有川は唸るような声をあげてから怒って何か言おうと口を開いた時シゲトシが下でため息をついて、

 ⦅やめんか、美鈴が困っとるじゃろうが⦆

 そう言って美鈴を見やると顔を青ざめて固まる彼女に気付いた2人が慌てて謝ると、美鈴は申し訳なさそうにしていたが突然笑い出したので、驚いて見つめる2人に彼女は謝っていたが訳が分からないでいると間にシゲトシが割って入り、

 ⦅さて、余興はそこまでにして本題に入ろうかの?⦆

 真剣な面持ちで言い放つと3人も神妙な顔で頷きそれをみたシゲトシも頷き有川とリチャードに、

 ⦅元治から聞いたがお主らはあの子に頼まれこの子を守っていたんじゃろ? なら、今ここで契約をすれば今後起こりうる美鈴の危機に素早く対処できる、そう思わんか?⦆

 と言って美鈴の方を向くと、

 ⦅それでよいかの? 美鈴⦆

 硬い顔つきでそう尋ねると彼女は頷いてから決意したように、

 「私は……大丈夫です! 有川くん、リチャード先生、よろしくお願いします!」

 そう言って頭を下げると有川は諦めたようにため息をつき跪いて美鈴の手を取ると、

 「我、魔力を使いし黒天狗は、御身を命の限りお守りすることをここに誓う、我が姫君よ真名を授けてください」

 と契約の言葉を言うと美鈴も有川の手を包みながら、

 「この先何があろうとわたくしをその力で守ってください、そしてあなたに真名を授けます……あなたは〔幸貴〕です」

 そう呟いてから幸貴の首元に触れると黄色いリング状の光が現れそれが彼の首元に消えると、耳の下に光と同じ色の笠岡家家紋が浮かびそれが刻み込まれるように黒くなると、それを確認したシゲトシが幸貴の手に噛みつき契約が終わるとリチャードも同じように契約をし、彼にはスイという真名を授け滞りなく契約が終了するといつの間にか辺りは暗くなっていたのでそれに気付いた美鈴は慌てながら、

 「は、早く帰らないとお兄ちゃん達が泣きながら警察に家出届け出しちゃう!」

 と言って走り出すのでシゲトシはため息をつきながら、

 ⦅あ奴らにはワシから説明するから安心せい、それに過保護も早く直さんといかん奴らじゃからいい機会じゃわい⦆

 半ば諦めたような口調で言うと幸貴とスイを見上げて、

 ⦅それじゃあワシらは帰るからお主らも帰りなさい⦆

 そう言って美鈴と共に歩き出し帰って行くので幸貴達も家へ帰るために背を向け歩き出すが、今までの様子を一羽のフクロウに見られていた事も知らず進みだしていて、美鈴について行こうとした時シゲトシが振り向いて睨みつけながらフクロウにかけられた〔干渉〕の魔法を解くと、我に返ったフクロウは慌てて飛び去って行くのでそれを鼻で笑っていると、先を進んでいた美鈴に呼ばれ返事をしてから振り返り共に家へと帰った。

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