2次元との壁
お待たせしました2話です。 改稿前の話は、読者の皆様に混乱を与えないようイベント編的なもので書き直します。
俺は3次元を受け入れることはできない。
なので、俺の好きな2次元と組み合わせれば何の問題もない......気がする。
ハチャメチャな理由だが、それは俺にとって救いのような考えだった。
だが......どうすればいいのだろうか。 どうやって2次元の美也に告白すれば......。
と、突然後ろから肩を軽く叩かれ、ハッとする。
「僕は放置かい?」
「あ、すまん。 忘れてた」
「はぁ......で、さっきのはどういう意味?」
「さっきのって......2次元のお前に告白するってやつ?」
「そう、それさ」
美也は頬をうっすらと赤らめながら、俺と目を合わせる。
いつも、マイペースでのんびりしているイメージの美也だが、今日に限ってはもじもじとしており、どこか落ち着きがない。
......あ、そうか。 俺があんなこと言ったからか。
「まぁ、それはいったん置くとして。 結局のところ、君は僕のこと......三次元の僕は好きなの? それとも嫌い?」
「う、うーん......どうなんだろ」
......悩ましい。
可愛いとは思うし、2次元にこんなキャラがいたら速攻で、ルートを選択しているだろう。
でも......3次元はなぁ......かといって嫌いなわけでもないんだよなぁ......。
未だはっきりとしないもやもやとした感情。
だから、俺は正直に本心を言うことにした。
「うん、わからん!」
「......ま、そうだよね。 薄々そんな気はしていたさ」
期待外れな答えだったのか、美也は深いため息をつくなり帰る支度を始める。
ふと時計を見れば、もうすでに5時を過ぎていた。
あー......もう5時かぁ。 そろそろ俺も、帰らないとな。
カバンに教科書を入れていると、突然携帯が着信音を鳴らしながら、振動する。
訝しげに開くと、電話の相手は俺の妹である水月だった。
「もしもし?」
『あ、やっと出た! にーちゃん、今日の予定忘れてない?』
「予定?」
『やっぱり忘れてるし! 一緒にゲームするって言ってたじゃん!』
「そ、そうだったっけか? ごめん、今から急いで帰るから......」
『むぅ......忘れてたものはしょうがないし、許してあげる』
素早く、支度を済ませ早々に教室を後にしようとすると、後ろから美也に呼び止められる。
「颯太......僕は、待っているから」
「んあ? 待ってる......?」
「そのうち分かるよ......君が逃げなければの話だけど」
「お、おう」
顔を曇らせながら話す美也の迫力に若干後ずさりしながら、すぐさま教室を飛び出した。
水月は、怒ると怖いからなぁ......美也の言葉も気になるけど、今日は早く帰らないと。
学校を飛び出し、歩いて30分かかる通学路を近道しながら休まず走る。
汗が尋常じゃないほど出ているが、その代わり、15分ほどで家に帰ることができた。
靴を放り投げるようにして、無造作に脱ぎ捨てそのまま自分の部屋へと一直線に向かう。
自分の部屋だが、ノックを三回。
すると、部屋の中から「どうぞー」と、水月の声が欠伸交じりに聞こえた。
「にーちゃん、お帰り」
「ただいま、ごめんな。 忘れてて......今度なんか買ってきてやるよ」
「お! さっすがにーちゃん! じゃあ、明日プリン買ってきてよ」
「わかった......んで、今日は何のゲームをやるんだ?」
「ふっふっふ......それはね......」
不敵な笑みを浮かべ、水月が懐から出したもの。
パッケージには、5人の可愛くそれぞれ、髪の色や髪型に個性がある女の子が描かれている。
俺は、それを見て疑問......というか、焦燥する。
......これって、妹とやっていい種類のゲームなのか?
そう。 水月が意気揚々と見せてきたゲームは、恋愛シュミレーションゲーム......世に言うギャルゲーだった。