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試練のダンジョンと金の力1

「まさか街について真っ先に売られるとはな。思いもしなかったよ主殿」


「いやー、ははは。そのほら色々事情があったんだって。許してよゴンちゃん」


 一人の少年が人ごみの中を歩いている。短めのこげ茶色の少しくせのある髪に平凡を絵に描いたような顔。彼の名はギルガメッシュ。悪魔と契約し黄金の剣を手に入れた者である。


「……ゴンちゃん?ゴンちゃんだと!?主、まさかとは思うがそれが我の名か?」


「うん、そう。黄金の剣だからゴンちゃん。呼びやすくていいでしょ?」


「良いわけあるまい。我が名は『金と栄光へと誘う黄金の陽刃』。決してゴンちゃんなどではない!」


 金と栄光へと誘う黄金の陽刃は悪魔ゴドリアスから渡された時には黄金の装飾のなされた鞘に収まっていたが今では質素な鞘に入れられている。

 ギルが所持するその黄金の剣は意思を持ち言葉を話すことが出来る。因みにギルがそれを知ったのはつい先ほど、黄金の剣を収める鞘を質屋に入れようとした時である。


「でもさぁ、名前呼ぶ度に『金と栄光へと誘う黄金の陽刃』なんて長すぎない?」


「そ、それはそうかもしれないが。でもゴンちゃんはないだろう!黄金の剣だとか太陽の剣だとか栄光の剣だとか色々あるだろう?」


「えーそれはなんか他人行儀すぎるって。ゴンちゃんと俺って云わば一蓮托生の相棒じゃん?『ギルガメッシュ殿』『黄金剣君』だなんて他人行儀は味気ないんじゃない?」


「ほー。相棒、ね。着くや否や真っ先に質屋に向かって我の鞘を質に入れた主殿が、ねぇ?」


 黄金の剣に表情などはないがその声色は冷たくとても怒っているようだった。


「お、怒ってる?」


「自分の半身を有無も言わせず質屋へ売り飛ばされて怒らない人間がいるというならぜひ見てみたいものだな、主殿?」


「うぐっ。ごめん。でも質に入れた理由はちゃんとあるんだ。あるんだよ、ゴンちゃん。ほんとだよ?」


「ゴンちゃんではない。……それで、理由とは?」


 ゴンちゃんの声はまだ固く疑っている。ギルはなんとかなだめながら理由を話す。


「その、さ。俺まだ探索者になってもいないじゃない?だからさレベルだって低いわけで。そんな低レベルのお上り丸出しの田舎っぺがこんな街を黄金に輝く剣なんて持って歩いてたら、カモネギじゃない?だから、さ?」


「ふむ……なるほど。理由はあったのだな。我はてっきり資金繰りのためだけに質に入れたのだと思っていたが」


「あ、それもある。いやー結構高値がついてよかったよね。お金に余裕があるって素晴らしい!」


「主?今なんと?」


「あ、あーあー。と、とにかく盗まれる可能性は低いし良かった良かった。あはははははは」


「……はぁ、まぁそういうことにしておこう。だが訂正しておかねばならぬことがある」


「訂正?」


 ゴンちゃんの機嫌は多少戻ったらしくさっきよりも声は柔らかい。しかしまだ(あいだ)を感じる声色でもあった。


「我はそもそも契約をしている。所持者である主以外所有することは不可能だ。主が望めばどれだけ離れても手元に戻ってくる」


「えっ!?ほんと?じゃあそれって」


 ギルはゴンちゃんの言葉に喉を鳴らす。そしてすぐにあくどい笑み、頭の中で皮算用を始める商人の顔になった。


「先に言っておくがゴドリアス殿はそれを許さないと思うぞ。一回や二回は大目に見るかもしれないが賭けてみるか?失うのは主の魂だ」


「や、やだなぁゴンちゃんったら。なぁに言ってるのかしら、うふふふふ。そんなこと考えてないってばぁ」


 ギルの作り笑いは固く顔からは汗が出ていた。それを見ながらゴンちゃんは冷めた心で思った。これが我の新しい主なのか、と。


「そ、それよりさ。ほら、探索者登録行こうよ。登録!俺とゴンちゃんの冒険はここから始まるんだぜ!」


「好きにするといい。所詮我はゴンちゃん。質屋に入れられる哀れな剣だ、是非もない」


「よ、よーし探索者ギルドへ行っちゃうぞーレッツゴー、おー」


 黄金の剣の冷ややかな声を受けながらギルは足早に目的地へと向かった。






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