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短文閑話・使用人は見た!

※コメディ成分不足につき書きました。たいした内容ではないので、本編のシリアスな雰囲気を楽しみたい方は飛ばしてください。

 パスカルは憂鬱な気分で地下の大部屋へと向かった。


(セルジュ様とリュシー様、今頃なにを話しているんだろう)


 次から次へとため息が出る。

 パスカルも含め使用人たちはリュシーを害するようなことは一切していない。そういう意味では使用人たちには罪はない。


(でも僕はセルジュ様の復讐を本気で止めはしなかった。いや、むしろ不安半分、面白がっていた部分もある)


 セルジュとパスカルは双方とも孤児の同郷出身で付き合いは10年近くになる。お互いがお互いにとって最も親しい存在であって、一応主従関係はあるものの事実上は身内や友人に近い。

 パスカルが本気で諫めればセルジュは復讐をやめたかもしれない。やめずとももっと慎重になっていたかもしれない。


(「若草色の君」を害したのは僕も一緒だな……セルジュ様はそうは言わないだろうけど)


 また大きなため息が――。


「ううっ……ひっく、ひ、ひどいでず……」

「もー、あんたどんだけ夢見てんのよ。結婚してんのよ? 別におかしくないじゃない」

「で、でも、あんな場所でっ」

「リュシー様は気にしないわよ、そんなの。ロマンチストねえ」

「……。あの、どうしたんです?」


 大部屋ではランプ係の青年が鼻水を垂れ流し、それをジャンヌが面倒くさそうに慰めていた。

 パスカルを見たランプ係の目からぶわ、と涙が噴き出した。


「だ、だ、旦那ざまがけ、ケダモノだったなんでえええ!! 旦那ざまがっ、よりもよって外でっ、リュシー様を襲ってたんですうう!」

「へ?」


 パスカルは目が点になった。

 ジャンヌは半眼になって前掛けの埃を払った。


「だから-、それだけ強く惹かれ合ったってことでしょうよ。リュシー様はセルジュ様を好きみたいだし、ならもうそれでいいじゃない。愛があれば場所なんてどうでもいいのよ。普段優しい人だってそんなもんよ」

「でもっ外なんで……」

「外でくらいあるわよ! どうせ人間なんてケダモノよ!」

「え、あの、二人とも? どういうことなんです」


 パスカルの背中に冷や汗が流れた。


(せ、セルジュ様は木から落ちたと言ってたよな……?)


 だがランプ係の口から出た言葉は「襲った」である。ジャンヌもそれを否定していない。


 ジャンヌが七面倒臭そうに腰に手を当てた。


「私たち、雨があがったから二人で二階の窓を開けてたんです。そしたら木の下でセルジュ様がリュシー様を襲ってるのが見えて」

「襲ってた!? 抱え上げてた、ではなく!?」

「ええ、ドレスから肩がむき出しになってて、脱がせようとしてたみたい。セルジュ様覆い被さってたし」

「……い、いや、そ、それはおそらくリュシー様を介抱しようとしていたので」

「じゃあなんで肩が出るのよ。転んだくらいじゃ肩は出ないわよ」


 胡乱げな目つきで言うジャンヌにパスカルはだらだらと汗をかいた。

 リュシーが今朝食堂を飛び出してからパスカルはリュシーの姿を直接見てはいない。肩についても

セルジュはなにも話さなかった。


(まさか本当は強引に襲ったとか? 憎さ余って可愛さ百倍、とか……いや逆だけど……う、嘘だろ!? いやまさかうん、セルジュ様を信じねば)


 結論を出したパスカルはパンと手を打って気を引き締め直した。


「あのですね、今ちょっとセルジュ様とリュシー様は深刻な問題を抱えてるんです。なのでその話は胸の内にしまっておいてもらえませんか」

「なにそれ。私は別にいいけどー、どうせもう()では広がってるわよ? 隣の屋敷の使用人の人が二人、だったかな、びっくり顔で崖の上から見てたし。すぐに逃げていったけど。ねえ?」


 ジャンヌに話を振られたランプ係がこくりと頷いた。

 パスカルは口からなにかが抜け出そうになった。


「別に大丈夫でしょ、どうせセルジュ様とリュシー様のありとあらゆる愛の逸話が出回ってるのよ。ホントの話が一つそこに加わるだけよ」


 ジャンヌはケロリと言い放った。

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