三話
ログリネスに出会ってから4日が経った。最初は何も分からず戸惑うばかりだったけど、今はフィー達の助けをもらいながら少しずつではあるけど森の生活に馴染んできて、なんとかやっていけるんじゃないかと希望も芽生え始めた。しかし…
「見てみてログリネス!この花、ティアっていう娘がくれたんだ!綺麗でしょ」
「……」
この通りログリネスとはなかなか馴染めない。何を問いかけても口許もぴくりとも動かさず、私をその鋭い眼光で見つめるだけだ。
「あれ?お花は好きじゃないかな」
二言目も無反応、今回はここでやめておこう。
気にしてないと言えば嘘になるが焦ってもない。人とは全く異なる存在、そんなすぐに打ち解けあえるはずはない。何か距離を埋める糸口を掴む、その時まではこうして話かけ自分の事を意識してもらう、それだけに努めればいい。
(フィーとはすぐに仲良くなれたんだけどなあ)
そんな事を考えながら、森の奥に歩みだし妖精達の元に向かう。
「ノリー!」
待ち合わせの場所に着くと、先に待っていたフィー達が爽やかな笑顔で羽ばたいてきた。こうして待ち合わせしてその後は森を案内してもらう、それがここに来てからの日課である。
灰色の不気味な木々が立ち並ぶだけの森かと思っていたが、探索すると花々が凛と咲き誇る野原や星空の一望できる丘と普通の森より見所があった。
「今日はどこに行くの」
「それはね」
妖精の一人が問いかけ、答えようとしたタイミングで近くの茂みから音がした、
「ギィィン」
そこから鳴き声を上げながら出てきたのは、奇天烈な姿をした生き物だった。顔と体は普通の鹿のようだが、後ろには尻尾の代わりに三匹の蛇がぶら下っていて、頭部には枝分かれしている立派な角に持ち、両目のほかに額に一つの瞳があった。
「こんにち……わ」
ぎこちなく手を振ってみるが、その生き物は三つの目で私を捉えたまま硬直していた。
「ああ、ノリーは会うの初めてだよね。こいつはギルット」
フィーが紹介し始めた。
この三つ目の亜霊が、後の私の運命を大きく変える切欠になるとは微塵も思わなかった