最後の一人
昔、一人の異世界人が竜の試験を受けた。彼は異世界から召喚されたにも関わらず、なんのスキルも持っていなかった。当初は同じ異世界人から迫害されていた。
だが、彼は誰も触れることのできない剣を手に、竜の試験を突破したのだ。そして、彼は一つの願いを叶える。
「もっとデカくて広い星にしてほしい。人も、動物も、魔族も、亜人も、モンスターや妖怪、まだまだ俺が知らない生き物、全てが存在する世界を創ってくれよ。人の足が到達できないぐらい広い世界を冒険したいんだ」
彼の願いは叶えられた。
世界は広大な土地と海が広がる巨大な世界へと作り替えられた。その世界の中心には世界樹が植えられ、全ての生き物たちを見守るシンボルとなったのです。
そこに住まう人々も、突然現れた未開の地に心躍らせました。人々は武器と魔法を駆使して冒険にくり出しました。
世界は大冒険時代となり、切り開かれた土地からは新しい資源やエネルギーが発掘されました。私達も新たに発見されたエネルギーによって作り出された存在です。
各土地に国を作った人々は、未開の地で発見された新たな種も交え、様々な種族が暮らしいくようになりました。世界は願いを叶えた者が望むような世界へとなっていったことでしょう。
しかし、願いを叶えた者が死に、徐々に世界は変わっていきます。様々な種が増えたことで、普通の人々はノーマルと言われるようになり、ノーマルはこの世界を支配しようと動きだしたのです。ノーマルは本来の管理者であるエルフを排除して世界樹を乗っ取りました。
エルフは、見目麗しい見た目と温厚で争いを嫌う種族でした。彼らは森と世界樹のために生きていたと言ってもいいでしょう。ですが、その容姿がノーマルの欲望に火をつけてしまった。ノーマルは森を焼きエルフを奴隷しました。エルフたちは、その酷い行いに我慢できず戦争を決意します。
エルフは決起に呼応したのがエルフたちと同じく亜人と言われる獣人や精霊族と呼ばれる者たちでした。彼らは力を取り合い、ノーマルに対抗したのです。
ですが、ノーマルは種族のなかで最も数が多く。また、様々な場所に発展させた街を持っていました。彼らは魔力の少なさを補うように様々な魔法学を発展させ、精霊族や獣人族が知らない魔道具や魔法武器を使って戦争に勝利したのです。
勝利したノーマルは、良薬になると言う世界樹の葉を奪い取り、枝を折り、世界樹の生命力を全てをノーマルの物としようしたのです。
そんなノーマルたちにも終わりが来ました。精霊族の怨念は魔力の集合体となり、ある種族を目覚めさせたのです。
妖怪族、彼らは人の怨念や願いによって生み出される種族です。幻想や言い伝えに現れるような恐ろしい物から、人の世を助ける神のような存在までいました。その中でも、精霊族が生み出したのはダイダラボッチという森の神を名乗る妖怪でした。
ダイダラボッチは生と死を司り、ダイダラボッチが歩いた後には草木を生え、逆に動くモノは生命力を奪われていきました。
そうしてノーマルたちが数を減らしていくと、それまで地底で眠っていた魔族たちが目を覚まして、地上へと上がってきたのです。
魔族たちはその圧倒的な魔力と強靭な肉体で、生き残っていたノーマルたちを滅ぼしていきました。魔族は強く、ノーマルの魔法学をもってしても、対抗することはできませんでした。
ノーマルが魔族によって滅びようしたとき、ノーマルは生き残っていた精霊族に助けを求めました。最初こそ恨みから助けなかった精霊族も、魔族の脅威に力を合わせることを承諾し、また世界樹の安全を引き換えに、ノーマルに協力しました。
二つの種族は魔族を倒すために新たな研究を始めました。ノーマルと精霊族は魔法学を駆使して新たな種族を誕生させることに成功しました。
それが機械族です。機械族は魔力と機械の体。そして、ノーマルの魂を捧げることで新たな生命として誕生することができたのです。機械族はノーマルに代わり魔族と戦いました。
機械族は魔族と同等の戦いを繰り広げることができました。ですが、機械族はあまりにも数が少なすぎたのです。機械族は劣勢な状況をみかねて、最後の一人を残して自爆と言う道を選びました。
残った一人に託されたのは、異世界から世界を救ってくれる者たちを呼び寄せることでした。
機械族は魂に埋め込まれた技術により、仲間の死を知ることができます。残った一人は、最後の仲間が死んだこと知り、寂しさを感じました。そして、やっと目的を達成することができたのです。
一人になった時間が長く、笑うことを忘れ、泣くことを忘れ、怒ることも、楽しむことも忘れそうになっていた機械族の下へ。たくさんの人々が異世界からやってきてくれました。
ノーマルでも、精霊族でも、魔族でもない。異世界人、彼らをなんと呼べばいいのだろう。そうだ。異世界から来る者の中には勇者がいるはずだ。
一人の機械族は一番輝きを放つ少年前に立ち止まり問いかけました。
「あなたが勇者様でしょうか?」
少年は戸惑いながら、問いかけに応えてくれた。
「……スキルはどんなものがありますか?」
逸る気持ちを抑えつつ、問いかけを続ける。もしかしたら、この方ではないかもしれない。
「スキル?あのスキルと個人スキルがあるんだけどどっち?」
「個人スキルも持っておられるのですか?個人スキルはその人しか持っていないスキルなのです」
「そうなんだ。えっと、普通にスキルは経験値五倍、言語理解、肉体強化、精神異常無効、自動回復、剣術、光魔法かな。個人スキルは」
「待ってください。個人スキルは言わないでください。もう十分です。エクセリアスへ来ていただきありがとうございます。勇者様、どうかこの世界をお救いください。そのためならばこの身あなたに捧げます。ですので、どうかこの世界を救ってください」
どうやら勇者様に間違いないようだ。これで私は役目を果たせる。そして、私はマスターを手に入れられる。この方こそ、この世界を救ってくれる方に違いない。忘れいてたはずの喜びが、忘れいてはずの熱い思いが胸に宿ったような気がした。
それからは、彼ら同士で話し合いを始め、いくつかの衝突を終えて、私に問いかけてくる。
「M-109さん。説明を続けて頂けますか」
「わかりました。皆さん、この世界で何があったのか、全てお話します」
こうして私は新たなマスターと共に生きる人たちと出会うことができた。ここから私は最後の戦いに向けて、そして最後の目的に向けて行動を開始する。
いつも読んで頂きありがとうございます。