表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/79

動き出した異世界人 2

 マサキ達が最初についた街、そこは辺境の貧しい街だった。自然に溢れているが、そこに住んでいる住人には活気に溢れている。


「ここはゴブリンの街です」

「ゴブリンの街?」


 ゴブリンと聞いて、メグなどは嫌そうな顔をする。ゲームオタクの彼女からすれば、ゴブリンはRPGの序盤に出てくるザコキャラであり、またゴキブリのように繁殖力が強いキモキャラなのだ。

 しかし、本来ゴブリンは土の精霊であり、元々イタズラ好きで人間に近い種族なのだ。モンスターとして扱われるのは、生存競争を生き残るために人を襲い、子孫を残そうとする種族の本能からくるものだった。

 安定した今の世では自分たちが住む土地が与えられ、厳しい生存競争を勝ち抜かなくても結婚も家族も持てる環境が整えられていた。


「ゴブリンは、精霊族なのですが、ノーマルに協力した種族として迫害を受けているのです」


 イマリはゴブリンが可哀想な種族であり、魔王に迫害されいている部分を強調する。ちなみにイマリが説明を省いた部分として、ゴブリンはイタズラ好きで短絡的な部分があるので、他の種族から嫌われる傾向にある。

 なので、魔王はゴブリンに土地を与え自分たちの国を作らせた。彼らだけで生活できる環境を整えたのだ。次第にゴブリンたちも自分たちの世界を構築するようになり、このように街が出来上がった。


 イマリの説明を聞いていると、ゴブリンは可哀想な立場にあるが、ゴブリンとしてはそれほど魔力を必要としない体に生まれたため、世界樹に近くないこの場所は他から外敵から襲われる心配がなく安心できる場所となっていた。


「ゴブリンは比較的、ノーマルに友好的な種族だと思います。しかし、皆さんお伝えした通り頭は見えないようにして置いてください」


 各種族を見分けるポイントは頭と体型にあるとイマリは伝えた。ゴブリンは額に小さなこぶ状の角があり、少し猫背でやせ型、その割にお腹だけがポッコリと出ているのだ。

 ゴブリンの街は土層を積み上げ、土層の中をくり抜いて穴を掘るように作られた洞窟状の作りになっている。通気性がよく夏は涼しく、冬は暖かい実用的な作りになっているのだ。


「なんだか泥臭いわね」

「多分家を固める際に泥を含んで粘着力を増してるんだと思います。彼らは汚れることなど気にしませんので」


 九人は街の中に入って、ゴブリンの生活風景を眺めていた。メグなどはゴブリンをゴキブリのように毛嫌いしているので、アイの後ろに隠れるようにしていた。


「今のところは警戒もされていないみたいだな」


 トシが気配を探ればゴブリンたちはよそ者であるマサキたちが街に入っても警戒している様子は見られない。

 言語理解できるマサキたちがゴブリンの会話に聞き耳を立てれば、日常的な会話か、仕事的な話ばかりで、彼らが知識を持って生活しているのが聞き取れた。

 ゴブリンをイメージするなら裸で腰巻にこん棒か何かを持っているイメージだろうか?しかし、彼らは普通に服を着て仕事で使う鍬や斧、狩りをする弓矢や縄を持っている。

 そこには魔王によって辺境に追いやられた惨めさは感じ取れない。それでもイマリの言葉を信じているマサキ達から見れば、苦労して生活しているように見えてしまう。


「貧しい暮らしぶりだな」


農夫のような恰好をしたゴブリンや裸にシャツだけという簡易なゴブリンの衣装に生活水準を判断したのだろう。


「そうです。魔王はこうやって階級制度を設けて、身分の低い者たちを虐げているのです」


 マサキの言葉を増長するように、イマリはマサキ達を煽っていた。階級制度は実際に存在するがそれは、それぞれの種族を守るために作られたものだ。


 街に入ってからゴブリンたちはマサキたちを気にしないように過ごしている。しかし、その陰でマサキ達を監視する者たちがいた。


「あれはノーマルか?」

「わかりませぬ。ノーマルならば頭に何も存在しないはずですが」


 年老いたゴブリンの周りに数名の若いゴブリンたちが円を作っている。


「機械族ならば関節を見ればわかるのだが」

「どちらも隠しているようですね」

「ああ。だが、ノーマルに似た雰囲気を持っている」

「長老」

「うむ。キング様にお知らせしておけ」


 トシが使う気配察知は、効果範囲が存在する。効果範囲は半径三メートル以内であり、トシが歩く円範囲なのだが、ゴブリンたちは街に入る前からマサキ達のことを警戒していた。


「ワシらだけでは手に負えんかもしれん。一応亜人種の幹部にも連絡をしておけ」

「わかりました。手分けして報告に走らせます」


 五名ほどのゴブリンが家の中ら飛び出していく。戦いに生き抜いたゴブリンたちは平和ボケなどしていない。彼らは常に弱者として、誰に従うべきか、そしてどうすれば生き残れるのか考え続けている。

 だからこそ、見知らぬ誰かの存在に敏感であり、甘い考えなど一切持たない。


「余計なことしてくれなければよいが。奴らが現れた方角が危険じゃな。かつてノーマルの拠点があった城。ワイル王国は滅んだはずじゃな」


 ゴブリンの長老はマサキ達が察知できない範囲外からマサキ達を見つめ、事件が起こらないことを願った。

いつも読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ