動き出した異世界人 1
ミツナリが魔王の下へ転送された日から二週間が経とうとしていた。
ミツナリがいなくなった後、クラスメイトはバラバラの行動をとるようになっていた。
最初から別行動を取ると言っていたフルヤとニイミは宣言通り拠点を後にし。ミツナリと同じように他の場所へ転移していなくなってしまったのだ。
残ったマサキ達は拠点作り、マサキと共に旅立つ者、拠点に残る者で別れることとなった。
「シンタロウ、そろそろ私達も行きましょう」
そして、マサキもまた最果ての地から旅立つときがやってきた。
「ああ、ここにも愛着が湧いてきたとこだったんだけどな」
「そうね。でも、私達がやらなくちゃこの世界は滅んでしまうわ」
「そうです。マスター。ここからが始まりです」
マサキの言葉に応えたハーヴィーとイマリと共に、旅に出ることを決めたのは七人のクラスメイトとイマリだった。
七人のクラスメイはトシ以外全員が女性であり、マサキを好きな女子が五人と、過保護の女子が一人というマサキの味方ばかりだった。
「イマリさん。どちらに向かえばいいかわかっているのかしら?」
先頭を歩くのはクロハナ・サキだ。サキもマサキを好きな一人であり、マサキのことを放っておけない弟的存在として認識している。
そのため、リーダー的な態度で率先してチームをまとめる役目を担っていた。
「はい。まずは、人が居る場所を目指しましょう。人と言ってもノーマルではありませんので、皆さんの姿は警戒の対象になると思います。
十分に気を付けてください。それと、この地を出れば人に敵対するモンスターがうじゃうじゃしています。警戒を怠らずに」
イマリの指摘を受けて緊張した面持ちになる一同だが、異世界に召喚されてから彼らも遊んでいたわけではない。己のスキルを知り、イマリの手ほどきによって戦い方を学んだのだ。
ここにいるマサキを入れた九人はクラスメイトの中では精鋭と呼べるまでには成長を遂げていた。
「大丈夫だ。警戒は俺がする」
サムライの職業を持っているトシは気配察知というスキルを持っている。生き物や敵意を向けてくる相手を姿が見えなくても察知することができるのだ。
「まっ、守りは任せてください」
ドモリながらも声を発したのは、人一番大きな乳袋持つ眼鏡少女で、名前をミナミノ シズカという。
彼女はおっとりした性格であり、ドジを踏むことも多い。ドジを踏んで転びそうになったとき、マサキに助けられることが多く、いつの間にかマサキを好きになっていたヒロインの一人だ。
マサキとしてはラッキースケベ要因であり、胸にダイブしてみたり、スカートと掴んで下ろされたいと、ミツナリは彼女をエアーバックと呼んでいる。
そんな彼女はガードと呼ばれる職業で、防御に特化したスキルを持っていた。
「トシ、頼んだ。シズカもありがとな」
マサキが二人に礼を述べると、膨れた顔をしてハーヴィーがマサキの腕に自分の腕を絡める。
「むーまた、シズカと話している」
「そんなことねぇよ」
シズカは防御専門なので、勇者を守る立場にある。そのため一番近くにいることが多いのだ。逆にハーヴィーは攻撃特化型であり、超お嬢様として様々な習い事をしていたハーヴィーは家事以外のどんなことも出来てしまう。
そして、この世界で得たスキルは肉体強化や武器強化など。戦うためにあるようなスキルばかりなのだ。
「私は敵が現れないとやることないけどね」
ハーヴィーのスキルは敵が居なければ活躍の場がない。だが、ハーヴィーの友人であり、護衛を務めるシノノメ・ツバサがハーヴィーの分まで家事全般から全員のサポートまでしてしまう。ツバサはハーヴィーの家に代々務める護衛兼従者なのだ。
「敵が現れても私が蹴散らしてごらんにいれます。お嬢様はゆっくりなさってください」
「ありがとう。ツバサ」
二人は幼い時から友人関係でもあるので仲がいい。因みにハーヴィーは知らないが、ツバサもマサキを好きな一人であり、主を守ろうとするたびにマサキとの親密度が増しているのだ。
主の彼氏に片思いをする悲恋の少女というわけだ。
「ほら、アイも何か主張しなさいよ」
「えぇ、無理だよ。みんな積極的過ぎだよ」
最後尾でモジモジとしている彼女は、学園の可愛いランキング一位を二年連続手に入れたカワイ・アイだ。アイは身長百四十八センチしかなく。小柄で小動物のような見た目をしている。
そして、その友人であり保護者を自称しているマナカ・メグは高身長で運動部のエースなのだ。
「私なんてたいした力になれないよ」
「そんなことないでしょう。あんた自分の職業わかってんの?」
ちなみにメグはゲームオタクでもあり、ジョブやスキルにも早いうちに順応した。そんなメグがおすアイの職業は、ヒーラーと呼ばれる回復職なのだ。
RPGで絶対に必要な職業の一つと言えるヒーラーは、クラスメイトのなかでアイしかいなかったので、ニイミからもしつこく勧誘されていた。
しかし、アイが選んだのはマサキだった。
「わかんないよ。私ゲームとかやらないもん。メグだって知ってるでしょ」
「ハァー、私がヒーラーの大切さを教えてあげるわ」
そういって二人は歩きながらヒーラーについて、主にメグが語っていた。
「夜も更けてきましたね。この辺りで休息を取りましょう」
イマリの声で全員が歩みを止める。現代人である彼らに野宿はかなりキツイ。だが、そこは機械族でありイマリのスキルがある。
彼女はノーマルのサポートとして作られた存在なのだ。ノーマルも魔工学を発展させることで、便利な世の中に慣れていた。
そのため機械族を作る際に、ノーマルの助けができるように様々な機能を付けた。
その一つとしてイマリは折り畳み式のテントを魔力によって圧縮した袋に持ち歩いていた。
「用意ができました」
イマリが用意してくれたのは、グランピングのような用意されたテントの中にソファーやベッドが置かれていた。
さらに男女別れられるように、テントも大小で二つ用意されていた。
「見張りは私がやりますので、皆さんは休んでください」
こうして、マサキ達の旅は始まりを告げた。
いつも読んで頂きありがとうございます。




