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真実

 よう、現魔王のオオカネ・ミツナリだ。今日はお前たちにこの世界の歴史について講義してやる。ようく耳かっぽじって聞きやがれ。


「ジュリ様、お願いします」


 緑色の髪に白いワンピースを来た美少女の髪を梳きながら、優しく頭を撫でてあげる。


「何々。何の話?でも、なんだか面白そう」


 十歳ぐらいの少女の見た目をしているが、この子こそが世界樹そのものであり、世界樹の人格なのだ。


「前回の続きなんですが、俺って召喚された異世界人なんですよ」

「前に言ってたね」

「はい。それで俺と一緒に召喚されたクラスメイトの中に勇者の職業を持っている奴がいて、そいつが機械族のM-109に世界樹を救うように言われていた世界樹、つまりジュリ様を救いにここに向かってるんですよ」


 魔王爺に紹介されてジュリ様と初めて会ったときに話したことをもう一度話した。そして、ここからが俺が知ることになる真実だ。


「うわー機械族ってあの鋼で出来た人たちだよね。あの人たち最悪だから嫌い」

「最悪?」

「そう、だって勝手に木は切るし、魔力の消費が他の人たちより多いし、存在するだけで、僕にとっては有害なんだよ」

「そのM-109さんが……てなわけで、聖水を与えて世界樹を救うようにと言ってまして」


 詳しい説明を読みたい人は、最初の方へ戻って読んでくれ。


「機械族が言う聖水ってあれでしょ。なんだったかな?確か灯油?ガソリン?とにかくよく燃える奴でしょ」


 ああ、言われてみれば機械族の聖水がどういうものか聞いてなかった。ということはイマリが語っていた救いとは世界樹を燃やすことなのか?なんと恐ろしいことを考えているのか。


「なるほど、あとジュリ様から見たノーマルってどんな存在だったんですか?」


 ここから歴史の勉強だ。よく聞いとけよ。


「ノーマルか、あの子たちもなかなか我儘な子だよね。


 最初は冒険するのを楽しんでいただけだったのに、だんだん数が増えると、どの種族よりも多くなるし、変に頭がいいからさ。

 魔工学だっけ?生活に魔力を使う消費が多くなっていったの。でも、僕から生まれる魔力って有限なんだよね。それを無茶に使うから消費が激しいわけだよ。数が多いから余計に多く使うし、本当に我儘だよね。


 それなのにもっと魔力使おうとして、他の種族分の魔力を独り占めしようしたんだよ。独り占めするために他の種族に乱暴なこともするし大変だったよね。ベルちゃんが止めてくれて本当によかったよ。


 あっでも、ノーマルの子たちにも、いい子はいるからいじめはダメだよ」


 ジュリ様の愚痴を聞いてわかっただろ。ノーマルが自分たちの利益だけを求めてやり過ぎたって話だ。やり過ぎたノーマルを魔王爺が退治して今に至るわけだ。

 これは補足だが、ノーマルが作り出す魔工学は自然を破壊し汚染を進めていたのだ。さらに機械族が生まれたことで、自然破壊は加速していったそうだ。ノーマルの悪行は滅びないと止まらなかったのだろうな。

 今のこの世界は自然と、自然に優しい魔工が融合した世界であり、世界樹を大切にする種族だけが生き残っている。優しい世界になったそうだ。


「ジュリ様、肩をお借りしてもいいですか?」

「また見たいの?」

「はい。この世界を見たいんです」


 ジュリ様にお願いして世界樹の高い位置へと連れて行ってもらう。世界樹を守るように建てられた建物は、世界樹の間に天井を作っていない。空へと向かって伸びる世界樹から見下ろす街は本当に美しい。

 魔工で作り出された光は街全体を包み込む。街の中には自然が共存していて、石造りの家と、家々の間に植えられた木々が光に照らされ幻想的な輝きを放っている。


「綺麗だ」

「ふふふ。ミツナリは本当にこの景色が好きだね」

「ええ、この世界に来て初めてよかったと思いましたから」

「そっか。きっとこの世界を作った人も好きだったんだろうね」

「この世界を作った人?」


 イマリが言っていた竜の試験を受けた異世界人を思い出す。そのときの異世界人はチート能力すら持ってなかったと言っていた。剣一本でのし上がるなど、いったいどれだけの苦労をしたのか、俺には想像もできない。


「私も会ったのは一度だけ。あの人は冒険好きで私に会ったとき、お礼を言ったの」

「お礼?」

「そう、君がいるからこの世界は成り立っているって。本当にありがとうって」


 ジュリ様は楽しそうな思い出を語るようにニコニコと笑っていた。


「でもね。私もその人に感謝してるの、きっとその人のお陰で私は生まれたんだよ。だから、私にとってあの人はお父さんだったんだ」

「お父さんですか」

「うん。少年みたいな人だけどね。ミツナリのお父さんはどんな人?」


 ジュリ様と世界樹の上から夜景を眺めて故郷の話や、家族を語り合った。 

いつも読んで頂きありがとうございます。

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