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七つの星の英雄~僕は罪人~   作者: ミシェロ
第9章「僕はシオン」
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「私の戦」

「散開!」


 その声と共にわたくしの目の前にはリラーシアさんが剣を構えこちらを狙います。対峙している合間に他の敵がミカロを狙おうとします、が、彼女はそんな周囲に惑うことなく姿を消しました。


 シオンさまをお願いいたします。彼を救えるのはもうあなただけなのですわ、ミカロ。



☆☆☆



 私が戻ってきたのはホテルのベッドだった。シオンの姿はない。今日は休みにするってエイビスが言っていたはずだから、きっとここのどこかにいるはず。


 私は毛布を隣に放り投げてバッグから端末デバイスを探した。あれさえあればシオ......お兄ちゃんと電話で話せるはず! 


もう名前なんてどっちでもいい! シオンお兄ちゃんは私のお兄ちゃん。何言っているんだろう私。今はそれどころじゃないのに。


 私が端末を見つけたときには私の体を照らしていた太陽は位置を動かしていた。つながらない。やっぱり番号が違う。それどころか充電切れかけている! 何やってんの前の私、こんなときにと恨めしいところだったけれど、それは心の中にひっそりとしまった。


 私は駆け出し外へと走り出す。もちろん毛布なんて後! 今はシオン、お兄ちゃんのために考えを止めてなんていられない。


 私が外へ出たとき、そこには4人の人がいた。銀髪は膝の位置までたなびかせ白色の白衣に身を包み私に銃を突き付ける眉は丸く、大きくぱっちりとした目の女性。


彼女を守るように隣の位置を外れず首筋の位置までの茶髪にまるで画家みたいに周りに色が付いている白衣。いつも見ていたはずの笑顔とは違いこちらを睨むような眉と目付きの女性。


 仁王立ちで私を見つめる荒々しい雰囲気を見せる男と刀をもって懐中時計を眺める落ち着いた雰囲気を見せる男性。


後の二人は逆光でよく見えないけれど、その実力は嫌でもわかった。全員の強さを足したら、きっと今の私の実力のミファ3人分ぐらいになるかな。


 けれど私の憶えのない記憶が教えてくれた。この先にシオンがいるのだと。昔の失敗を泣いていることしかできなかった私をシオンが慰めてくれた。そのときに見えた景色が、海が夕日色に染まっていく絵がすごく好きだった。


 こんなところで止まっているわけにはいかないよね。


「ヴィエンジュ、お願い!」


 私が彼女を見たとき、そこには体全体が青く染まった彼女の姿があった。私は歯を食いしばって彼女たちを睨んだ。それでも彼女たちの表情は変わらなかった。


「さっき部屋を調べたときにはいなかったけど、やっぱり隠れたのね。相変わらず、どたばた劇を繰り返すと思っていたけど、今回ばかりは見逃せないよ」


「うん、シェト。ミカロ・タミア、あなたを拘束......あれ?」


 人の話なんて聞いていられない。私はイツキを召喚して浜辺に飛び込んでいく。刀を持った男の人がすぐそこまで迫ってきている。腰巻ベルトをした男の姿。お兄ちゃん。私はまた間違いを頭に浮かべた。


「お、ミカロ!」


 私はシオンに抱き着いた。もう離したくない。だから離れないでほしい。楽しかったことも、悲しかったことも、うれしかったことも、恥ずかしかったことも全部忘れたくない。私の記憶全部がシオンの中にとけ込んでほしかった。


 けれどシオンの中に入ったのは青玉だけだった。


「電駆鼠!」


 銃から鼠が発射された。間に合わない。私はイツキで守る前に鼠に噛まれた。イツキは私を守ろうと動いたけど、それは刀男の一閃によって阻害された。


 心臓が誰かにつぶされるような感覚。痛い。痛くて今にも寝っ転がりたいぐらい。シオンは倒れたまま。まだ記憶の整理が......


誰の能力なの? 教えてくれるはずないか、はは。


 そのとき私の肩は優しくたたかれた。一緒にお風呂に入ったり、大声で怒鳴っちゃったり、ときどき一緒に綺麗なものを見たり。そんな彼が戻ってきてくれたことを私はうれしく思った。



☆★☆



 わたくしは留まることなくリラーシアさんに連撃を続けます。隙となる部分を攻撃してはそこを守られ、それによって生まれた隙を突いては守られ......


 ここは彼女に何かしらの負荷を与えて、隙をより大きく作る必要がありますわね。リームさんとわたくし、リラーシアさんと黒い男性を囲んだ桃色の球空間。ここなら吹き飛ばされる心配もありませんし、地の利も互いに同じ。


 私は剣を突き付けリラーシアさんに一直線に飛び上がりました。けれどその瞬間、わたくしは黒い手に手足をふさがれました。


「天元時空・夜叉蕪木ヤサカブキ!」


 緑色に光り神秘的にも見える光景。けれど1つ文句を言うとすれば、その姿にわたくしの血は全く似合いませんこと。


 どこから血が流れようと、シオンさまのために眠っているわけには参りませんもの。


「エイビス大丈夫?」


「問題ありませんわ。シオンさまならきっと後退してください、そういうかもしれませんが、今戦えるのはわたくししかいませんもの」


 視界は定まらない。足も安定しない。腕も動かそうとするたび痛みが走る。けれど不思議なことがわたくしの中で起きているんですの。


シオンさまの笑顔を取り戻したい。そう思うだけでわたくしの心の中に勇気と知恵が沸き上がって来ますの。


 やはり恋とは不思議なものですわ。


「先ほどは致命傷です。それで倒れればそれまでとしたかったところですが、仕方ありません。最悪死別もよしとしましょう。その覚悟が彼女にはおありですから」


「反対といいたいところだが、確かにそうでもしないと止まらないようだ。認めよう」


「情けをかけてくれるとは、やはり甘いですわね。それでこそ正星議院の方というところでしょうか。今更それでは相手になりませんの。わたくしは明日を目指しているのです。例え死せずしてもよい心のないあなた方にわたくしたちが負けるはずありませんもの」


 彼らは眉間を顰め、わたくしに飛びかかりました。この瞬間を待っていたのです。今はなぜか姿なきヒラユギさんから教わった攻撃を使うときが。



★★☆



「ミカロ、やろうか」


「シオン!」


「シェトランテは任せるよ!」


「うん!」


 うれしい! 私のおかげで、エイビスのおかげで、Shineさんのおかげでシオンの記憶が戻った! 


でも本当にシオンの記憶が戻ったのかな? うんうんそんなこと今気にしている場合じゃない! まずはこの戦いを終わらせないと!


 私がイツキに指示をしようとした瞬間、シオンは隣の石垣に飛び込んだ。まさかまだ記憶が安定してない? それともまだ後遺症みたいなのが残ってて......


 イツキが私の肩を掴んだ。


「あの刀、時間を操っている。体の動き方が明らかにおかしい」


「時間を操るって、そんなのわかっても誰にも止められないんじゃない?」


「起爆性の攻撃を与えればどうにかなる。時間を止めることはたぶんできないはずだから」


 そっか。さすがイツキ! 珍しい自分で考えられる聖霊さん! 私はシオンと交代して刀の男性を狙......


 私の身体を銃が貫いた。はは、せっかくシオンの記憶を戻せたのに、敵の倒し方も少しはわかったのに、私がこれじゃあ仕方ないよね。


 私は自分が地面に倒れるのを抵抗できなかった。けれど星は解かなかった。イツキならこの場の全員を倒せる。シオンを守るためにも私は諦められなかった。たとえ私がどうなっても構わない。


 私がシオンに笑顔を送ったとき、シオンの顔は今まで見たことにないくらい、歯を砕くように食いしばり目に力をこめ眉をひそめていた。


 その瞬間、シオンの姿が消えた。どこ? 彼を探した瞬間、銀髪の女の子の隣に来た刀の男が壁にたたきつけられた。


 シェトランテが異変に気が付いて私を攻撃しようとした瞬間、弾丸を彼女に弾くシオンの姿が見えた。


 シオンは私をお姫様だっこしてくれた。バカ。戦ってる合間なのになにしてくれてんの? そう言いたかったけど、私から出てきたのはそれをうれしく思う感涙だけだった。


「ミカロが何を......」


 怒りのこもった彼の声とともに、彼はその場に倒れた。私は彼に触ろうと動いたけどその瞬間、極度の眠気が襲い掛かった。血まで出て本当なら痛みの方が勝っているはずなのに......


 だめだよ。今眠ったら私達は何のために頑張ってるの。シオンへの想いはその程度なの? 違うでしょ。もう離したくないの。だから世界が相手になるとしても、ここにいるんでしょ。けど、夢は私から地を奪い、後は飲み込むだけだった。彼の背を最後にそれはごくりと私を飲み込んだ。


Twitter「@misyero1」で更新情報を確認できます。

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