第49話
「フォメアそんなに怒んなよ~。あれはなりいきでそうなっただけだっつーの。
そのおかげで俺は危機を救われたんだから、別に問題ねぇだろ?」
「怒ってはいない。なりいきはともかく、お前もミカロでいうシオンの件は文句が言えないということだ。
女性が男を連れてくるのはまだギリギリセーフかもしれないが、男が女性を連れてくるのはだいぶ問題ではないか?
飢えているのがどっちかわかったものではないな」
「別にナンパなんかしちゃいねぇよ!
友達みてぇなもんだ。ちょっと敵の中では特殊かもしれねぇけどよ」
「フローとファイスは友達―!」
俺はそれなりにフローとは何も問題がねぇことを言ったが、フォメアはうなずいてはくれなかった。
……まぁそうか。確かに信頼できる敵と組もうなんて無茶なマネをあいつはしねぇからな。
とりあえずここはフローをなんとかしねぇとか。
俺はフローの方を向いてこいつの今のどうやって大人の姿になったのかを教えてもらうことにした。
こいつは俺のことを見るなり、嬉しそうに俺を見て飛び跳ねた。
自然と跳ねる胸が目についちまう。
こんなときにエイビスがいればどうにかなんだけどな。
「フロー。その姿どうにかなんねぇのか?」
「ん? 元のフローの方がよかった?」
「ああ。その方がいろいろと困らなくて済むからな」
「……わかった」
フローは少しむくれたが、俺の言うことをしっかり聞いて元の姿に戻った。
けど結局、さっきまでは何が起こっていたのか俺にはわかんねぇ。
どうして大人の姿になれた? まさかそれがフローの能力なのか?
いや、今も輝いちゃいねぇ。
つーことはアイテムか何かを使っている、ということなのか?
「はい! 戻ったよー!」
「お、おう......」
フローは難なく元の俺のへその位置に顔がある身長に戻り、俺やフォメアに笑顔を見せてくれた。
フォメアは少し納得がいってねぇみたいだけど、驚いて何か考えているときみてぇに右手を顎に置いたから、まぁ問題ねぇだろう。
とりあえず、まずフローのことは解決しとくか。
じゃねぇとフォメアが戦いに集中できなさそうだしな。
「フロー? さっきの変身みたいなのはどうやってやったんだ?
正直なとこ、あれがお前の本当の姿なのか?」
フローは俺の言葉を聞くと首を左右に振って俺に意思を返してきた。
「ううん、違うよ。あれは私が考えた私の理想の大人の姿で、本当にそうかはわかんないの。
確かベルセイムは蜃気楼って呼んでたよ。私の風の力でたいきのみつどがどうたらこうたら......」
フローは俺に“しんきろう”ってやつがどんな訳でできていんのかをたぶん言いたかっただろうが、さっぱり理解出来ねぇ。
たいきっていうのがよくわかんねぇしな。
まぁミカロなら余裕なことだろうけどな。俺はそういう専門用語はよくわからねぇ。
俺は先へと歩いていくフォメアにまた近づいて話を聞くことにした。
「フォメアは原理がわかったか?」
「その現象が発生する理由をそこまで理解する必要はない。
お前の場合、その話の前段階を話すのに時間がかかって仕方ないからな。
要は変身術とでも覚えておけばいい。
正直なところ、他にも原理の理解のできない現象は俺たちの間でもよく発生しているしな」
俺はフォメアの言葉に反対しようとは思えなかった。
言い方は少し悪いように思うが、それだけ時間ももったいねぇってことだ。
まぁここは納得するほかねぇか。
とりあえず変身したときの触れた感じは今のフローとは少し違っていた。
つーことは夢を見させられている状態、みてぇなもんか。
厄介な技だけど、仲間なら別に困りはしねぇよな。
「それにしても黒メガネのお兄さん、よくここがわかったねー。
4階は他の人の目には見えないようにパパのアイテムで隠してあるのに」
「ああ。だが物体感知センサーが変なバグを起こしたのだ。
故障かと思ったが、3階の上部分にだけバグが発生するので、透明な部分を手や足で探ってみたところ、たまたま階段があったわけだ。
ファイスが部屋にいると思ったのはそこで音が発生したからだ。
まさかクエスト中に呑気にナンパしているとは思わなかったがな」
「だからナンパじゃねぇっつの! フローは友達だバカ野郎!」
「ナンパって何、ファイス?」
「んーピーマンみたいな苦いやつだよ!」
「へー、そうなんだー。」
なんで納得してくれたのかわかんねぇけど、フローは何度も上下にうなずいたので、とりあえず俺は右手の甲で冷や汗をぬぐった。
ふー。まったく、なんでメガネのやつはいろいろと爆弾発言を平気でやってのけるのだ。
ロリコンでも目当てでもねぇ。ただのたまたま出会っただけだ。
とりあえず互いに協力関係にもあるわけだし、とりあえずミカロの父親を早く探すとするか。
「ファイス、黒メガネさんの名前は?」
「フォメアっていうんだ。人を寄せ付けたくねぇみたいなキツくて鋭い感じの目だけど、そんなに悪いやつじゃねぇから、話しかけてやってくれ」
「うん! よろしくフォメアー!」
「……ああ」
俺はとりあえずこの後をどうするか、4階を歩きながらフォメアと話し合うことにした。
ま、フローに聞けば一発かもしれねぇけど、こっちにはこっちの考えがあるからな。
「どうする? このまま進むか?」
「ああ。シオンやエイビスがやられているとは考えたくはないが、まだ敵は多いかもしれない。
とりあえずはこのまま進むしかないだろう。
それと......」
フォメアは後ろをチラ見してまた前を向き直した。
フローのことが気になるのか?
まぁいつか裏切るのではないか、って考えるのも無理ねぇけど。
「フローがどうかしたか?」
「まさかチームに加えるというわけじゃないだろうな?
さすがのエイビスも納得はしてくれないと思うが」
「いや、それはねぇよ。アイツはミカロの妹だしな。
ここにいた方が安全だし、無理に戦う必要もねぇだろうしな」
フォメアは両方の肩を勢いよく落としたと思えば、すぐに目をぱちくりさせた。
ミカロに妹がいるっていうのはやっぱり誰もが驚くことだ。
ミカロが2人に分身しただけでも恐ろしいし。
何人がチョップをくらうかわかったものじゃねぇ。
「ミカロに妹がいたのか!?」
フォメアは久しぶりに大きな声を出し、フローにも嫌でもわかるように顔をじっくりと見てミカロと似ているところを探していた。
俺はそんなフォメアの大声を注意したが、返事は帰ってこなかった。
フローは初対面のフォメアに怖くなったのか、俺の右足まで走ってきて姿を俺の足の後ろに隠した。
「ああ。やっぱ驚かねぇやつはいねぇよな。
俺はフローがミカロみてぇにならないことを願ってるけどな」
「えー、フローはお嬢様みたいになりたい! ドレスを着てた姿とかすっごくきれいなんだよ!」
ミカロがドレス、かー。まぁ話さなきゃ似合うだろうが、 怒ったらいつもみてぇな状況になるだろうな。
まぁ俺を勝手に原因に仕立てあげようとするわけだろうけど。
「ファイス、今フローを見たのだが......」
「やっと見つけたである。そろそろ鎖についてもらうとしようか」
俺たちが中央の広場に位置する場所にやって来たとき、また青メガネと赤メガネが姿を見せた。
まぁ赤メガネはよく見えねぇけど。
フォメアもフローもいるから、負けるわけにはいかねぇな。
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