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七つの星の英雄~僕は罪人~   作者: ミシェロ
第4章 「星女狩り」
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第25話

できれば巡り合いたかったのかもしれない。突然鉄拳が飛んでくる女性を基本に思っていたけれど、彼女に出会えてよかったとそう思った。


「2人共行くよ!まだやることがいっぱい残ってるんだから!」


 僕たちは触れ合っていた手を離しミカロに続いた。緑髪の彼女......せめて名前を知らないと呼びにくい。僕と彼女は軽く自己紹介をし握手を交わした。彼女の名前はエイビス・ラターシャ。彼女の手は簡単に潰れてしまうように柔らかくけれど力がともっている気がした。


まさか彼女も星を? いや、そんなことない。こんなに血も知らなそうで可憐な女の子が星を持っているはずがない。僕は彼女の首の傾げる姿に笑顔で返す。


 ――殺気。ミカロを守るように前線へと移動した僕の目の前には、左手に何かを持っているかのように隠し、タキシードを着る僕らと同じ未熟な女性の姿があった。


「シオン・ユズキ。まさかあなたと出会うとは思いませんでした。」


「シオン、知り合い?」


「どうも悪い人にだけよく知られているみたいです。先に出口に向かってください。後で追いつきますから」


 彼女たちは僕の指示に従い駆け出す。その瞬間女性は隠していた左手を出そうとしたのを僕は見逃さなかった。正面攻撃で集中を逸らし壁の弾ける音がした。彼女の舌打ち音が響く。それと同時に僕の一撃は不発に終わった。その瞬間、僕は自分の身を初めてあんじた。


 すぐに壁から壁へと飛び移り敵の考えをかく乱する。僕の目の前の壁から弾ける音がした瞬間、僕の足は素直に地に着くことを選んでしまった。


「まさかこれで終わりではありませんよね?」


 当然! そういうように僕は彼女にとびきりの笑顔を見せ武装発光ウェポンライトを使用して彼女の背中を取る。そのまま飛びかかり彼女を打ち上......


 彼女は目を閉じた状態で僕から距離を取った。まるで上からすべてを見下ろしているかのように、彼女は正確に僕が飛び出さないと攻撃のできない距離まで移動した。リラーシアさんとは少し違う戦い方。どうする?


 ――殺気。それだけ僕の唯一の救いだった。壁の弾ける前に敵の攻撃を把握し距離を詰める。けれど彼女は目を閉じた状態でも距離を等間隔で取った。実力が浮かんで読み取れてしまう。そんな考えをしていた瞬間、僕は目の前に映った彼女に反応できなかった。


 死。最悪それを覚悟した。目前に矢が割り込んでくるまでは。僕らは互いに距離を取る。そして女性の目が開いた。



☆☆☆



 私達はシオンに戦いを任せて出口に走り出していた。けど、彼女がどうしても自分の服でないと調子が出ないって言うから、わかりやすく書かれてあった没収部屋というところにたどり着いた。


そこにはちゃんと彼女の服もあったみたいで彼女は私の予備服を返し着替えを再開した。


「全く驚きましたわ。ちっとも体に合いませんもの。問題はあなたの個人的なものにありそうですけれど」


「仕方ないじゃない。個人差よ個人差! 服が着れただけでもありがたく思いなさいよ」


「ずいぶんと上から目線で物事を言うのですね。いったいあなたは何者でいるつもりなのですか。はぁ」


 なんか話すのが嫌になってきちゃった。本当は彼女とも友達になりたいんだけどなぁ。どうしていつも喧嘩っぽくなっちゃうんだろ。はぁ。


 シオン大丈夫かな。加勢したいところだけど彼女の救出が先。シオンなら持ちこたえてくれるはずだよね。信じてるから。


 彼女は服を着替え終えて、いかにもお花畑にいるのが似合いそうな白黒のワンピース姿になった。早く彼女をそこに戻してあげたい。そう思った。


「さて、シオンさまのところに戻りましょうか」


「ちょっ!? 自分が何言ってるかわかってるの?」


「あなたに同じ問をかけようと思っていたところですわ。おおよそわたくしだけでも救おうと考えていたようですが、リラーシアさんのように頭の固いお方ですわね。わたくしもあなたがたと同じクエスターですわよ。同胞を見殺しにしてまで生きたいとはわたくしは思っておりませんので」


 私は笑顔で右手を握りしめた。今行くからね、シオン!


「その前にわたくしの星を一緒に探していただけませんこと? どうやら服から抜き取られてしまったようで......」


 私の勢いは空振りしたけど今はそんなこと気にしてる場合じゃない! ちょっと不安だけど彼女にも加勢してもらわないと! なぜだかそうでもしないと今回は対等に戦えない。そんな気がした。



☆☆☆



 僕は深緑髪の彼女に感謝し敵に突き進む。彼女にとどめを刺せるよう攻撃後即座に距離を取るが、敵は不思議な態勢を何度も取り確実に矢を回避していく。とはいえ策もこれしかない。考えようにも壁の弾け体の押される不思議な攻撃の前には考える時間を与えてくれる気がしなかった。


 衝撃波? いやそれだったら僕はとっくに壁にたたきつけられているはずだ。わざわざ全身を飛び上がらせて矢を避ける意味はない。


 風? それにしては勢いがありすぎる。屋外ならともかくここは生物の体内。うまく風が起こってくれるはずもない。


 悩みの種が尽きない。僕は敵に攻撃を紙一重にかわされ彼女の手を向けられた瞬間、壁の破片から作られた煙の中から青い光を放った矢が飛び込んできた。


 彼女は背中に目があるように一歩でそれをかわし僕に襲い掛かる。鉾を回し矢の方向を再度彼女に変えた。その瞬間青い光は檻の形に広がり彼女を事実閉じ込める。僕は煙を掃いアスタロトさんと合流する。


 同時に彼女の檻は青い光でいっぱいになった。彼女の服は黒ずみ彼女自身も倒れた。


「実験用に使ってみたけどシェトランテの考えはピンポイントで戦闘に役立つわね。とはいえ狙いがブレやすいけど」


 しぇとらんて? 誰だ? 


いや気にしている場合じゃない。彼女は即座に檻を粉々にし僕たちを睨んだ。策を立てるのに十分な時間を得た僕は彼女に笑みを返した。


 ――死。それが頭を巡った。僕たちが気づくよりも早く、彼女は僕に拳をたたきつけた。耳のはち切れそうな音とともに僕はアスタロトさんから遠ざけられた。抵抗もむなしく僕は扉に突っ込んだ。


 敵の姿はない。よかった。ん、なんだこれ。足元がやけに柔らかい。それに左手になんだか癖になりそうなぷにぷにとした感触がある。煙が透明となり白と黒のワンピースが見えたとき、僕は身体を固まらせた。僕はエイビスさんを飛び込み際に押し倒してしまったようだ。しかもセクハラまでして。


「シオンさまは大胆ですわね」


「い、いやそういうわけじゃ」


「シオンのヘンターイっ!」


 僕の考えは吹き飛びただ2人に頭を下げるほかなかった。いやこんなことしている場合じゃない! そう思っていても銀髪の彼女は僕を睨みつけまた謝罪を強要した。


 僕は3人の女性に目を向けられていた。しかも困ったことにどれもうれしくない。僕は縮こまっていた。銀髪の彼女は僕に睨む目つきをし、深緑髪の彼女は僕が故意にやったという目をし、明緑髪の彼女はなぜか目を輝かせていた。


 僕にはこの手段しかない。話題ずらし。


「彼女を倒したんですねアスタロトさん。さすがですね」


「……知らないわよ。アンタを吹き飛ばしたと思ったら、そのまま気絶したのよ。まぁしばらくは起きないとは思うけど、時間の問題ね」


「そうですか」


 2人の表情も距離も変わりはない。アスタロトさんは認めるほかない。けれどミカロは僕のことをわかっているはずだ! 


 手を許可なく握ったことに怒っているのか? それとも病院でのこと? 


どちらにしろ、どうしてそこまで僕をゴミのような目で見れる!


「……見たでしょ?」


 彼女は僕から目を逸らし、根を尋ねる。彼女はミカロに変わりなかった。自分のことのように話す彼女の優しさを感じる。


 僕は彼女の鉄槌を受ける。そう直感した。


「はい」


 明緑髪の彼女は口の前に手を添え、僕は銀髪の彼女に目を閉じるよう言われる。自分がどうなるのかわかっていても、身体はそれを拒もうと、避けようと発想を生み出す。捨てる。思いつく。捨てる。


 頭に一閃が突き抜ける。言い過ぎか。電気が通り過ぎたような感覚だ。


 遠くから彼女の声が聞こえる。


「わざとじゃないから、これで許してあげる」


 彼女の優しさを感じた。おでこが少し熱い。


「イチャつき終わった?」


「イチャついてない!」


「どっちでもいいわよ。ここからはツーマンセルで動くわ。その方が三首犬ケルベロスにとって楽になるだろうし」


 初めてアスタロトさんの優しさを知れた。それを特にミカロに見せてくれれば......と思ってしまう。たぶん無理の一言で壊されそうだ。


 右腕に柔らかい感触が戻る。明緑髪の女性が目を輝かせ僕の元に戻ってきた。


「わたくしはシオンさまとお組致しますわ」


「シオンとアスタロトの方が“近”と“遠”で互いに距離を保てるからそっちの方がいいんじゃない?」


「さりげなく勝手にくっつけんじゃないわよ。アンタも十分“遠”の部類でしょうが」


「私はまだ彼女と話してるから、やりやすさがあると思って」


「乱暴な女性には興味はありませんの。申し訳ありませんがミカロはアスタロトさんにお任せいたしますわ。あなたでないと心のままに何をするかわかりませんもの」


 ミカロの表情がさっきよりも険しくなった気がした。できることならその場から離れたいくらいだ。女性話に混ざれるほど、戦闘以外の度胸は人並み以下だ。


 僕はエイビスさんと共に駆け出した。こうなったら喧嘩を始める前に納得してもらうしかない。周囲が紫色に光る部屋に入るまで、僕と彼女の手をつないでいたことを忘れていた。


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