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七つの星の英雄~僕は罪人~   作者: ミシェロ
第4章 「星女狩り」
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第24話

 シオンは気が付けばミカロのため、透明な石で円状につながれ真ん中に位置する赤く光る石の“幸運のブレスレット”を買ってしまっていた。おまけに自分のためにもう1つ。


 女性はこういった類のものが好きだと聞くけれど、効力がある気がしない。むしろ悪いことが起こる気すらする。


 気にしたら負けだ。シオンは彼女の目に入るよう、ブレスレットを掲げ駆け出す。


「シオ――」


 その瞬間、ミカロの姿が岩に変わった。……違う。シオンの頬に赤い液体が飛びつくのも気にせず、目前の岩を破壊する。いない。ミカロはどこに行った。どこに消えた。シオンは彼女の名を喉が枯れるほどに大きな声で呼び、叫んだ。けれど返事はない。


 シオンは彼女はおろか町の住民たちも姿を消していることに気づき、辺りの異変に気が付く。


 深呼吸を行い、考えをリセットする。心が和らぐ。……金髪の女の子が目の前に姿を見せた。シオンにとっては異質でも、安堵でもあった。顔は帽子で隠れている。けれどこの際誰でもいい。いったい何が起こっているんだ。シオンは彼女に近づいた。


「シオン君ひどい。彼女とはもう会えないよ? シオン君のために助けてくれたのに、かわいそうだなぁ。きっと怒ってたけど言えなかっただろうね。だって今のシオン君に価値を感じないなんて言えないもんね」


「ミカロはいるさ。誰だか知らないけど、ここから出る方法を教えてくれないかな?」


「心の中で生きてるってこと? それは思い込み、言い訳に過ぎないよ。暴れもしないし反対もしてこない。シオン君の妄想だよ」


 誰だ。まるで僕のことを、心を知っているかのように僕の心を口にした。


「どうして彼女はシオン君を助けてくれようとしたのか、聞かないと後悔するよ?」


「それはどういう意味だ……くっ!」


 彼女の体が光輝いた。その瞬間、僕の前に彼女の銀髪が映りこんだ。


「わっ!」


「うわっ!」


「もー、大丈夫?」


 僕の前にミカロがいる。全身から力が抜けていく。僕は迷いなく彼女の手を取る。彼女にブレスレットを渡すと、彼女は太陽にそれを照らし、色の変化を楽しんでいるようだった。


「おそろいだね!」


 彼女の言葉と共に、僕に映るものは星の輝く空に姿を変えた。桃色に光る建物。男女のカップルたちが次々にそこへと向かっていく。


 これは夢、なのか?


僕の隣には手を背に隠しその建物を見つめる彼女の姿があった。 


「終電、乗り遅れちゃったね。仕方ないか、シオン......行かない?」


 僕は首を横に振った。そういうのは記憶の次だ。今はそれより――


 彼女は僕の右腕に寄り添い、柔らかい感触が考えを奪う。


「私じゃ......魅力ないかな?」


 上目遣い。これは本当に彼女なのか?


「……僕は……」


「シオンさまー!」


 僕は目を開き、新たな光を取り入れた。そこには、緑髪があった。



☆☆☆



「何か言いたげだけど?」


「いえなんでもないです! 説明を続けてください!」


「……それでここは......」


 ほっ。危ない。ここはトラブルを避けて彼女と協力しよう。自爆してはもったいない。僕たちはセレサリアさんの他チームとの交流という申し出を受けアスタロトさんと共に合同チームを組むことになった。


 僕は凛華の修研者フラソンマードの4人かと思ったが、アスタロトさんだったので少し安心した。前回は共闘したようなものだし。性格を把握できていることは問題なかった。


 合同チームかときかれれば少し疑問を隠せないけど。


「シオン、話聞いてる?」


「は、はい! 大丈夫です!」


 ミカロはアスタロトの隣で納得のいかない顔で僕のことを怪しげな目で見つめてきた。

話に集中していなかったのは事実だ。落ち着こう。


 僕たちは今回敵に奇襲を仕掛ける。内容は“捕らえられている人物・悪魔獣の解放とそして元凶の排除”。アスタロトさん独自と言えばいいのか、彼女以外に味方の悪魔はたぶんいない。だからこそそれを見つけられる彼女が誘われたのだろう。


 その集団の名前は“星女狩り”。僕たちは砂漠地帯へと移動しアスタロトさんの指示があるまで砂を巧みに利用して、彼女の合図の待つことのできる場所で時間をつぶしていた。


 ミカロはアスタロトと一緒に行動したいと言っていたけれど、人間は感知されやすいということで即刻却下された。彼女は何度も頼み込んだが認められることはなかった。


そういえばなんだかんだでミカロは久しぶりに他に女性がいる状態でクエストに挑むのか。確かに少しワクワクしているのも無理はないか。


 それにしても熱い。裸足だったら飛び上がってしまいそうなほどに靴を履いていてもストレートに熱が僕にジワジワと伝わってくる。


 砂漠だと体力を失いやすいのでそういった場では携帯食料を持っていくのだが、場所のこともあり固形物のクッキーのタイプのみにされてしまった。


 本当はカレーとかが良かったりするんだけど、水の少ない場でタブーなのは当然だ。持って行って食べられないのが一番情けない。とはいえ現状口がパサパサなのはなんとも言い難いけれど。


「来た!」


 アスタロトさんが棒切れほどのサイズなのでなんとも見えにくい状況だけれど、双眼鏡を使えば少しだけ彼女の興奮に納得できる気がした。


 見えたのは紫色の三首犬ケルベロス。あの大きさだと4mくらいはあるかな。本でしか見たことなかったけど、本当にいたのか。いやアスタロトさんが存在する時点でみんないるのか。少し不安だ。


 同時に僕は変現して食料を喉に押し込んだ。三首犬の一角が彼女に向かって大きな口を近づけた。彼の考えを理解できた僕は鉾の光を用意する。彼女の目の前に口を開いた瞬間発動。武装......


「ん、詰まりもの? まったくあんた本当に何でも食うわね。ちょっと待ってなさい今取るから」


 僕は勢いよく砂に突っ込んで姿をくらました。なんだそれ!? 悪魔冗談デビルジョークか何か? ともかく浅はかな考えで突き進んできた自分が恥ずかしい......


 シオン大丈夫!? 無線の質問に僕は素直に問題ないと送る。ファイスには笑われたけど気にしない。もう何も言わないでほしいと願うほかない。


 アスタロトさんに厄介物を取ってもらった彼はうれしそうに大きな頬を彼女に擦り合わせた。彼女は否定しようとしたが仕方なく受け入れていた。そのときの笑顔は僕にとって彼女を魅力的に映した。


 それに気づかれて睨まれたのは気にしないでおこう。ミカロも賛成してくれるだろう。


 僕たちは番犬のガードを難なくかわし敵の本拠地へと侵入した。粘膜が気になる。まさか部屋全体がこうなっているのだろうかと少し心配だ。


 僕の心配はやっぱり空振りに終わり、部屋の部分にはきちんとタイルが敷かれていた。別に気にしてはいない。僕の考えはよく外れるんだ。


 フォメアには番犬さんのことと万が一のために外で待機してもらい、残りの僕たちは暴れる組だ。できれば隠密に、ということで僕とミカロがとらわれている人物の救出に、アスタロトさん、ファイスとナクルスが敵の排除を担当することになった。


 それを聞くと僕たちは口を閉じて捜索を開始した。部屋の中、牢屋、そして厨ぼ......はミカロに止められた。やっぱり水多めに持って来ればよかったな。おかげで喉がカラカラだ。


 仕方ないなぁ。と彼女は自分の水を分けてくれた。喉に潤いが戻る。あれ? これって......


「シオン!」


 彼女の指さす先には人の足が見えた。僕たちは急行し牢屋を破壊する。そこには頬の削れているように見える緑髪の女性がいた。彼女は僕たちを見るなり笑顔になった。彼女にはミカロが服と食料を渡し脱出の準備を始めた。


 まずい、そろそろ日が上がる。敵に見つかるとかなり厄介だ。早いところ彼女を移動させ......


「シオン、覗き禁止!」


「す、すみませんっ!」


 彼女の水筒をもろに顔面に喰らってしまった。これだけだと少し情けないので水を飲んで仕返しした。ちょっとくだらないと思ったけど僕の気分が晴れればこれでいいのだ。が、それも彼女の鉄拳によって正義に返された。


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