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七つの星の英雄~僕は罪人~   作者: ミシェロ
第12章「二十歳の約束」
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第127話「帰宅」

前回のあらすじ

・全員で北の大陸へと進むはずだったが、ミカロを助けるために別行動を取ることに。

 アシュリータ大陸誓約第五条第一項:不自由伴わぬ男女は20の歳を終えるまでに結婚、もしくはその確定事項を提出しなければならない。遵守できない場合は各政府の元、結婚相手を決定する。


 残りは後二カ月ほどある。が、彼女にとっては今決めなければならない。重圧となっているのか眠り顔もしかめ面だ。肩を寄せるだけで許してほしい。


---


「わかった。みんなは先にフェテルゼウスさんの町まで向かってほしい。あの人が待っているはずだから。リーダーはエイビスに任せるよ」


「はい、かしこまりました。シオンさま、ミカロもお気を付けて」


「心配いらないよ。すぐに終わらせて来る」


---


 ミカロの家に行くのは久しぶりだ。彼らも力をつけていることだろう。期待するだけ無駄だが。


 何かを振り払ったようなしぐさ。手伝ってみるか。飛び上がり僕を見る。手を離してこない。


「……見てた?」


「うん、不安そうにしていたら誰だってそうするよ。緊張はほぐれてないみたいだね」


「ちょっとだけ。でも大丈夫だから。ちょっと飲み物買って来るよ」


 さすがに野暮か。やめておこう。まだ話してはくれない、か。


 信号音。いや、赤い点滅が激しい。まさか。


「くっ!」


 腕輪が砕けた。目線。クラッカーが鳴った程度。声を出す必要なんてなかった。


 紙切れ。QRコード。現在地が映ったりはしないよな。


 冷たい!


「さっきのお返し。でも私の奢りだから一石二鳥でしょ?」


「そう、だね」


 やられてばっかりだな。いつか反撃しないと。


「それ、手紙?」


「ああ。シェトランテの腕輪から出てきたんだ」


「盗聴は解除されたみたいだね。よかったー。結構疲れたよ。でもあのときも聞かれていたはずなのに、どうして何もしてこなかったんだろう?」


 誰かが僕らを監視しようとしているのは予測していた。シェトランテがやらなくとも、ヒラユギが代わりにやることは明白。


 そこで紙を使ってミカロに指示をした。監視カメラも踏まえて魔法陣のついでに。


とはいえ僕らが出ていくのを黙ってみていた。腑に落ちない。



 シオン・ユズキへ

 どんな計画を立てているのかは知らない。けどアンタを見ていたら自分も力になれないかと思ったの。そこであの脅し。監視っていう名目を持っておけば、嫌でも私のところ呼ぶことができるし、何より怪しまれることもない。悪くない作戦だったと思わない? 小指に聞いてほしいくらいだわ。

 創造の一族として、協力はできない。けど応援くらいはしてあげるわよ。

シェトランテ



「わかってたよ。あの人の目、心配しているときのものだったから。救うのは難しいよね」


「正星議院はまだだ。それにヒラユギが飛んでくるかもしれない。目の前にだけ集中しよう」


 敷地を覆う端の見えない鉄柵。相変わらず広い。今度は戦うことなく通してくれればいいが。


「私の名前はミカロ・タミア。パパに会わせてほしいの」


「では声紋認証を」


 あえて僕の道を槍で塞ぐ。もう何年も家に戻っていないとあれば、そうなるか。


-認証シマシタ-


「入れ」


「ごめんね。うちって入るときにはいつもあんな感じなの」


「そうなんだ。厳重だね」


 出たくなるに決まっている。一週間でお腹いっぱいだな。


「お姉ちゃーん!」


「フロー、久しぶり! 元気だった?」


「うん! お姉ちゃんも帰ってきてくれてなによりだよ。この人は彼氏さんかな?」


「それはまた今度。ちょっと話をしてこなきゃいけないから、私の部屋で待ってて」


「わかった」


 最上階の隅。メイドが扉を開けると、そこには二人の男。立っているのは誰だ?


「久しぶり、パパ」


「どうやら捜索の手を回す必要もなかったな。かれこれ10年ぶりだな。元気にしていたか、我が妻よ?」


 手を握ってきた。少し震えている。


「つまらない冗談はやめて。私にはもう大切な人がいるの」


「私は一向に構わんが、誰しも戦争の引き金を引きたくはあるまい。この許嫁書が見えないのか?」


 確かに書いてある。名前はワスポールというのか。


 手が離れた。止まっていない。


「シオンと話をさせて」


「いいだろう」


 嗤い顔。結果は見えている、か。


 扉のすぐ近く。聞かれそうだが、自分の部屋にフローを案内したばかりだ。


「なんとか話してみるよ。サインだって私のものじゃないし。だからシオンは部屋で待ってて。フローが退屈しているだろうから」


「わかった。気長に待つよ」


 素直に言いたくはないか。僕もそうだった。


手を腰に組んで震えるのを隠して決断したことだ。なんとかしてみせるさ。解放してくれて助かったよ。


 ミカロの部屋。文句の言いようがない。二年経ったとはいえ、さすがにまだ子供なのか、床で本を見るのが好きらしい。


「何か面白いものでも見つかったかい?」


「お兄さん! お姉ちゃんはどこ?」


「今は遠いところだよ。けど、すぐに助けるよ。なんたって恋人だからね」


 沈黙。言うべきじゃなかった。


「あなたがシオンさん?」


「そうだよ。誰から教えてもらったんだい?」


「パパから! お婿さんになる人って言ってたよ」


 咳きこみ。読まれていたにしては気味が悪い。


「そう、なんだ。フロー、一緒に協力してほしい。ミカロを助けたいんだ」


「いいよ。約束を守ってくれたらね」


 おかしい。言葉が大人びた。


「私を外に連れて行ってくれること。それが条件だよ」


 多いことに越したことはないが、この際仕方ない。ウルカさんが怒りそうだ。


「わかった。以降」


「ありがとー! それとこの部屋の鍵あげる」


 猫みたいだな。ミカロより器用だ。


 鍵。扉には穴がなかった。


「どうして隠れるの。堂々と出ればいいじゃん。シオンさんはともかく、私は守護者だよ?」


「フローだから危険なんだ。誘拐とか言われて捕らえられる算段にはまる」


「それもそうだね」


 階段を降りた反対側。裏口。これも計算済みか。


 開かない。まさか間違えたのか?


「裏口は指紋錠になっているんだ。キミならともかく、フローなら何度でも開けられるよ」


 桃和服の女性。名前は忘れた。なぜか上からの態度に見える。


「サイズを間違えた指輪でも買いに行くのかな? ミカロ様もさぞ幸せだろう」


「違うよカキョウ。あんなやつお姉ちゃんに似合う人じゃないから」


「フロー。言って良いことと悪いことがあるぞ。彼がどうあろうと」


「待った。結婚するのは僕じゃない、腹の潤った男だよ。行こうフロー」


 協力を仰ぎたいが、彼女の父親が彼らの命みたいなものだ。無理だろう。


「それで、どうするのシオンさん?」


「イチかバチかだけど、知り合いに頼むしかない。強引なのは嫌いだけどね」


 二人のメイド。動きが妙だ。腰が低い。


「フロー、下がっていろ!」


「二人相手は無茶だよ。私も戦うよ」


 小型ナイフ。動きが早い。


「ビガータイフーン!」


 服が飛んでいく。見覚えがある。あのメイドさんでなくてよかった。


「なんで攻撃開始しようとしたの? あの両手斧が見えなかったワケ?」


「しょうがないだろ。そうでもしなきゃ今頃真っ二つだったお前も風のおかげで命拾いしたな」


 仮装のような角の女。黒髪にナイフを足に備えた男。運がいい。

Twitter「@misyero1」で更新情報を確認できます。

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