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七つの星の英雄~僕は罪人~   作者: ミシェロ
第11章「セプタージュ」
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第126話「寝水」

前回のあらすじ

・最後の一人となるも、最前線機関には加入しなかった。

・ミカロと恋人になった。

「フェーゼちゃん、男に不慣れだからね。嫌悪したいであげてね」


「炎帝さんを見習うよ。それとありがとう、いろいろ相談して気分が悪くならなかった?」


「これからより苦しい戦いに挑むことに比べれば、シオン君ほどじゃないよ」


「どうかな。そっちは大変そうだけどね」


「それも承知の上だよ。あそこの角でミカロちゃんが休憩しているから、行ってあげなよ素敵な彼氏さん」


 両手にグラスを持ち、進む。妙に緊張が走る。考えすぎか。


 緑髪が見えた。


「あ」


「……」


 セインはシャルルフォーゼさんと会話中。やってくれたな。わかった。これくらいなんとかしてみせるさ。


「昔のこと、今でもときどき思い出すんだ。僕が一人外で遊んでいたら、キミが現れた。きっと相手役として呼ばれたのかな。そのときはセインとも会えなかったから、より楽しかった。次に会ったのは、奪還したとき。覚えてはいなかったけど、恩返しになれたかな」


 彼女がこくりと頷く。眼は合わせてこない。


「どんな出来事があったのかは知らない。でも、外を見る機会が少なかったと思うんだ。優雅で料理も洗濯もできて日々勉強する行動力がある。傍にいてくれたら僕にとってうれしくても、エイビスの邪魔になってしまう。一緒に来てくれなくても構わない。僕は」


「せっかくのご提案ですが、わたくしはシオンさまたちと行動を共にいたします。確かに見てみたい景色、料理などはありますが、自分と同じ命運をもう生み出したくはないのです。例え無鉄砲な言動だと分かっていても」


 それでこそエイビスだ。肩の力も消えた。


「シオンさま、少し失礼してもよろしいでしょうか?」


「構わないよ」


 理解しているとさすがに言いづらいか。僕を見るなり彼女は腕に力を入れた。自分を見ているみたいだ。


「いるかい?」


「うん、ありがと。ウルカ、調査みたいに質問してきたよ。あの人に彼氏ができたら反撃してやるんだから」


 一気飲み。根ほり葉ほり聞かれたんだろう。助かった。さすがに話し疲れたか。


「ねぇ、どうして助けに来てくれなかったの? ずーっと待ってたんだよぉ?」


「ほら、ミカロが倒した二人組に用があって、助けに行けなかったんだよ」


「でもセプタージュのときはチームでもないのに助けに来てくれたじゃん! ウソツキ!」


 なんか変だな。力を感じない。


「そんなこと言うお口はー、こうして塞いじゃいまーす」


 頬に右手。誰だ、中身を入れ替えたやつは。


 頭を掴む右手。爪がくい込んでいる。体がない。


「ダメぇ。シオンは私のだからー」


「まさかアンタ、これでナニしようとしてんの?」


「ご、誤解ですよ。ミカロが確認しないで飲んだみたいで」


「へー、ベッドに誘い込んでどさくさに紛れて。ずいぶん良い、ゴミぶんじゃない。なんだかウラヤマシイワ」


「話聞いてます!?」


 瓶を口に突っ込み、苦い味わいが流れていく。終わればさすがに気にしないだろう。


 浮かんでいるみたいな感じだ。それに疲れが起きてきている。


「そんじゃ第二ラウンダァー! なに無視してんの。そんなときにはスポドリでも飲んでしゃっきりしなさいよ」


「ちょっとシャル、やりすぎ! 大丈夫シオン君? シオン君!」



★★☆



 真っ暗だ。心地いい。誰かが運んでくれたのか。セインかな。後で礼を。


 同じベッドにミカロ。しまった。今の声で目が開いた。


 昨日のように頬に手を添え、唇を近づける。柑橘の匂いがする。一度だけなのが乏しい。


「シオンの計画が終わるまでは封印してもいいかな。嫌じゃないけど、みんなの迷惑になるかもしれないし」


「いいよ。ミカロが好まないことをするはずないだろう?」


「変に格好つけなかったら、良い言葉なのになぁ」


「じゃあ契約のキスを」


「……うん」


 着替えを済ませるなりノックの音。さすがにセインたちとは違うか。


「待たせたね」


「いえ、二人には色々と特別な準備が必要ですから」


「それ、みんなに言わないでよ。そういうやつ嫌いなの。また昨日みたいにされても困るし」


「かしこまりましたわ。皆さん御集まりですので、急ぎましょう」


 入り口に五人の姿。始めるか。


 袖。ミカロの手。


「私、家に戻って話さなくちゃいけないことがあるの」


 今日は二十を過ぎた彼女の誕生日。心が落ち着かない。

Twitter「@misyero1」で更新情報を確認できます。

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