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七つの星の英雄~僕は罪人~   作者: ミシェロ
第11章「セプタージュ」
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第119話「双闘」

前回のあらすじ

・F.Z.、炎帝と協力して課題に挑むことになった。

・ヒラユギに宣戦されるも、敵を半数にすることができた。

「次だ。常に動かねば勝てないぞ」


「わかってます」


 ヒラユギが振りかぶるのを無視し、緑髪の彼女に接近する。その間を侵食する重圧。隣で彼女が両手を僕に構える。誤解を納得してか、心がいつもより軽い。怖いものがないからだろうか。


「せいっ!」


 重圧をはき出し既にステージの端。さすがにもう一度放つのは失礼か。足で腹を押し、波紋が広がる。緑の彼女は僕に背を向けたまま。F.Z.さんも奇襲はガードされてしまったか。ヒラユギはシェトランテと戦っている。攻めるなら他にない好機だ。


 振り下ろすと刀は跳ねのけようと力を込めてくる。思わず顔がニヤけてしまう。


「なめるな」


 F.Z.さんがエイビスの横を突くが、後退して空振りに終わった。バルフリートの姿に体を屈めるも、狙いは僕を外れる。


「二人は任せます」


「そこまで言うのだから未練はもちろんないのだろう。わかった。五分やる」


 それだけあれば十分だ。風を全身にまとい、両手斧を振り上げる。彼女は後ろに下がる。横から接近し高速で刀を僕の体に刻んでいく。手慣れているような仕草だ。


 横の大振りにはさすがに距離を取りそのスキを機に急接近する。彼女の姿がない。刀を鞘にしまい、歩き出す。


「風閃・空螺!」


 ギリギリ体には当たっていない。彼女も風だったのか。汗が嫌に気になってしまう。両手の風を足に集束させる。踏み出すとエイビスは笑った。刀を通りすぎ彼女の肩を背中から取り、叩きつけ両手斧で薙ぎ払う。後で怒られそうだが、波音立つ今は何も言うまい。


 大岩が落下したような衝撃音。後ろにいたのはさっきまでいなかったミカロ。作戦を考えなおしたいが、そんな時間もないか。


 おまけに刀を持つ聖霊の姿。名前は知らないが、それを手に取らない余裕がある。


「こいつらを叩く。これ以上交代されても面倒だ」


「誰だかわからないけど、イツキを使うときの私は優しくないからね」


「キミの言う通りになればそれが最高だけど、そうはいかなそうだ。北の千本卿。彼女はなかなか有名どころだからね」


 F.Z.は聖霊に飛びかかったかと思いきや斬撃をかわし、男の足元を狙う。片手でミカロを抱き寄せ空に逃げる。今確実に当たったはずだが、傷の類は見られない。


「一門・騒乱神儀」


 彼女に手伝ってもらう必要もない。残った風で全てかたをつける。ミカロたちの位置へと昇り、両手斧で突く。イツキは防御した。空中では当然か。押し込んでも返される勢い。彼女の鉄扇子が太陽を反射させる。


「天嵐」


 F.Z.さんの攻撃も当たらない。男は動くことなく防御に注力するミカロを見るだけ。笑顔に焦りは見えない。


 イツキは止まらず刀を弾丸のように打つ。星霊ならこうはいかないのに、ずいぶんと困ったもんだ。両手斧で押さえ弾き落とす。再生すると分かっていても首を斬ってしまう。見えないはずの刀を拾い、構え直し僕に手を差し出す。


 彼女は笑顔を見せ、僕に触れ消えた。けれど光は姿を消していない。全身にまとわり付いたまま動かない。


「銀髪は任せる。もう一人は我が倒す」


「風嵐の加護を与えよ。ミファ=ラグシェル!」


 踏み出した一歩に驚くのはいつ以来だろう。気づけばミカロの隣。彼女は手加減をしたのか。嫌いだけれど悪くない。本音を打ち明けることができる世界は素晴らしい。


「伊月斬!」


 彼女は倒れながら笑い、僕に手を振った。返せない自分が恥ずかしい。


 しまった、威力のことを考えていなかった。落ちたミカロのところだけ赤く染まっていく。姿を消し、その部分だけ空洞になった。中身は何もない。もう一人の能力なのか。


「あやつが関係のない者をわざわざ助けるとはな。面白いこともあるものだ」


「そんな偶然が起こるとでも? 我がその女を攻撃しようとしたのだが、邪魔が入った。ただそれだけじゃ」


 珍しく血走りかけた。まだまだ落ち着きが足りないか。いや、ここまで言われて冷静でいられる者の方が狂っているのか。


「ずいぶんと恨まれているようだな」


「慣れているのであまり気にしないでください。それより残りの人を頼みます」


 ヒラユギに接近するなり、狙っていたように弾丸と剣が振りかかる。後退するとやはりもう一方は桃髪の彼女だった。


「覚悟はわかった。だが、正面から戦うのが全てではない。それを私が教えてやる」


「お前には面倒な借りがあるからな。仇で返させてもらう」


 昨日のことをまだ気にしているのか。そんな暇があるなんてうらやましい限りだ。


「あとの二人は我が倒す。そこの三人は任せる」


 シャルマーナさんのところへと飛び出し、ヒラユギに両手斧を構える。桃髪の彼女が視界を遮る。振り掃うとそこには僕から目を逸らし弾丸を防ぐ姿。気に入らないのか歯は食いしばったままだ。


「余裕そうだな」


 女性のわりに勢い強い。敵になることは想定していなかったわけじゃないが、やけに彼女の情報だけは少なかった。さすがに本線に出過ぎたか。


「これじゃ戦えそうもない。各々殲滅しよう」


「命令するな屑がっ!」


 怒りの矛先は僕を通り過ぎ彼女の方向。弾丸男は笑った。ほんの数秒でも止まっていれば吸収できるが、形のない弾丸ではそれも意味がない。それに戦っている中で唯一能力がわかっていない。


 ステージ端に逃げ、彼は距離を少しずつ近づけていく。隙は今しかない。風1つ分を右足に集束して放つ。


 無音の衝撃波。水の壁が間を阻害する。けれど分かった。それなら戦い慣れている。


「くっ」


 懐に侵入し腹を狙う。それを避けようと弾丸を放つも、砲撃するよりも先に方向を変えてしまえば打っても意味がない。小さな傷が駆け上り、動きが止まる。敵が大きくて助かった。終わりだ。


「風牙鳴動!」


 バルフリートは知っていたかのように嗤う。右手には黒く染まった球体。今を逃せば勝ち目はない。


「がああああっ!」


 波の響く音。助かった。いや、彼の目的は果たされたのかもしれない。右手外側二本の動く感触がしない。地面を見るとこんにちは。最高だね。


 その正面でシャルルフォーゼさんの髪を掴み、腹を貫くヒラユギ。僕だったらあそこまで優しくはないだろうな。


「回収はしておく。棄権すれば何とかなるかもしれないが、どうする?」


 首を横に振り、ガーゼを二本に巻き付ける。ここで逃げたら努力の意味もない。それに彼女に一位だと証明できない。


 なによりシャルマーナさんの計らいか、目の前にいたのは金髪の彼女だった。


「いくら友達だからって手加減しないよ」


「わかっているさ、時間もないしな」


 幾巻しても血の終わりが見えない。あわよくば勝負で決着をつけるか。


「こんなの本気を出さなくても私達の勝ちは確定でしょ。そっちは疲労が溜まっているはずだもの」


 挨拶代わりに飛来する黒柱。弾いてみるが、左に傾く。これじゃ消耗戦だ。飛び上がるとまた虎が姿を見せる。金を食べているかのように固い。はなから真面目に戦うつもりもなさそうだ。


「シオンどけ。七門開堂・天下!」


 巨大な剣が現れたように見えたが、その姿がない。虎は光に消え去り彼女に両手斧を突き付ける。自分ごと黒柱で囲み彼女の顔前でそれを留める。


「八門開堂」


 力が抜けていく。時間が足りなかったか。くそっ、チャンスを溝に捨てた……

Twitter「@misyero1」で更新情報を確認できます。

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