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七つの星の英雄~僕は罪人~   作者: ミシェロ
第11章「セプタージュ」
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第114話「試戦」

前回のあらすじ

・シェトランテと合流し、敵を倒すことに。

・勝利の影響かモニターは外れたが視界不良に変わりない。


「シオン君、どこにいるの?」


 初めて二足をかみしめた赤ちゃんのように手探りで小刻みに動くセイン。僕を探しているのだろうが、いきなり触ったら二の舞になるような気がしてうかつに手が出せない。


「モニターがなくなったから、僕から触るよ」


「ふわっ! シオン君だよね? なんで取れたんだろう?」


「あの怪物を倒せたからだろうね。といっても霧だらけで何も見えないや。モニターを付けている方が集中できるよ」


「そっか。どこ触ってるのシオン君!」


「握手を忘れたんですか。変なこと言わないでください」


 指を撫でるたびに電気が通ったように動くセインの姿はなんとも面白い。けどあんまりふざけていると噛みついてきそうだ。これくらいで止めておこう。後で復讐がてらに誘拐されないよう注意しないと。


 シェトランテの姿が消えている。もしかすればセインは弊害だと思ったのだろう。好都合だ。正面は怪物の体で塞がれているから後ろに進む。出会わないといいが、そんな平和なわけもないよな。


「シオン君、私に考えがあるんだけど」


「どんな作戦だい?」


 セインと一緒に戦えるのはなんとも新鮮でセプタージュであること忘れてしまえるほど享楽がある。だからこそ聞きたい。なんで僕が彼女を肩車しなくちゃならないんだ。


「これ必要なのかい? ヒラユギにすぐ見つかるよ」


「これならシオンがピンチでも無理なく走ったり歩いたりできるかなと」


 わからなくもないが、セインの利が大きく見えるのは気のせいだろう。久々に大きなため息が姿を現す。他に視界明瞭な人がいたら、たぶん笑いながら来るだろうなぁ。


 戦法・おんぶの陣とか書かれて四十九日の話題にさらされそうだ。ミカロに隙は作りたくない。


 進んだ先、まるで救難信号のように点滅を繰り返す光。僕のように目で警戒できるならまだしも、そうでなければ開戦の火蓋を開けていただろう。


 あの光、どこかで見たことがあるような気がする。閃いた。彼女しかいない。視点を増やすことのできる召喚術者。心配なんていらなかったな。


「ずいぶんと不思議な恰好をしているな。死傷者はあまり動かさない方がよい」


 赤鈴の一本刀に自信のある仁王立ち姿にモニターから溢れ出す赤髪の女性。そして聞き覚えのある歳籠った女性にしては低い声。F.Z.さんだ。モニターで見えるはずもないのにこうも不安のない姿はなんとも考えなしにも冷静沈着に見える。


「私は動けます。ただ前が見えないから危なっかしくて」


「ということはそこの者はモニターが外れたのか。運よく鍵で開けたようで何より」


「ええ。おかげ様で」


 ここはあえて嘘をついておく。怪物を倒したら外れたと言えば、すぐにでも探しに行ってしまうから音が拡散して仕方ない。セインも何か付け加えようとはしない。


「F.Z.さん。鍵を交換してみませんか?」


「いいだろう。我もそう思っていたところだ」


 互いの掌に鍵を置き、反対の手で取る。裏切るかと思ったが、よく見れば鍵の形は一緒だ。やっぱりこれは鍵穴のためにあるわけじゃなかったのか。周囲にも石らしきものはないから、これが二つの意味で鍵だったわけだ。


 回らない鉄の音が鳴る。


「合わん。もしかすれば何種類かあって揃えれば開けられるかもしれん。貴様らには退場してもらおうか。どの道敵であることに変わりはないのだからな」


 僕の心を読んだわけじゃなさそうだ。面倒なことに行動に曖昧さなく刀を抜く。ヒラユギのように線状で僕らが見えているんだろう。


「ゆくぞ」


 モニター越しで姿が見えているのではないかというぐらいに振り回すような使いこなし。セインが入ろうにも音が鳴らないようガードされると攻撃を逸らしていく。それに僕が攻撃をしても下がろうとしない。珍しく傷を気にしないタイプだ。セインの前で下がるわけにもいかず、僕も彼女も擦り傷だらけだ。


「二門開堂・剣世」


 彼女の頭上を浮かぶ五本の剣。持って使うようには思えない。ますます彼女に有利な課題だな。


刀たちは後退の道を塞ぎ、F.Zさんは正面の僕を狙う。彼女が刀にぶつかるときは下がるが、僕にはおかまいなしに動かない。まだ彼女の指示で機能しているだけまともか。


「光封鎖!」


 刀ごと彼女を鎖で囲み、その端をセインが引く。手の風を両手斧に移し太ももの魔法陣に触れる。鎖もろとも宙へと巻き上げ、ガードする刀ごとまとめて叩き飛ばす。そして着地の手前、薙ぎ払う。


「風来天牙!」


 刀を犠牲に衝撃を押さえると彼女は血の顔で剣を取る。さっきの攻撃で誰かに気づかれていなければいいが、そんな幸運があるわけもないか。


「やはり二対一ではなんとも不利か。大量の邪魔も入りこんできたようじゃ」


 怪物というには少し似合わないが、人型に練り固まったツタ生物。音を出すたびに不利になるのかもしれない。


「無理に手を出すな。間違えて斬るなど刀使いとして恥じゃからな。四門開白・守破離!」


 刀は何百にも増殖し、その一振りはウィップモンスターに火がつき力なく倒れてゆく。通り道にも火が付いた。二百体以上はいる。どうやって消せば。


「ハートフルレイン!」


 大雨、いや滝ともいうべき豪雨を前に僕らは立ち尽くす。セインは僕と背中を合わせ、F.Z.さんは不機嫌なしかめ面で青いオーラを放つ剣を持った。血の顔も消えている。演技にしてはやけにご丁寧だ。姿を見せた青髪の女性も爆発寸前のようにやけに拳に力が入っている。


「火なんて使ったらダメだよ! あやうく火事になるところだったよ!」


「当然消すつもりで水龍を構えていたのだがな。ウルカ、貴様は本当に我への挑発が好きなようだ。礼に紫電を喰らわせてやろう」


 彼女は背中を向けると、ウルカさんは後退していく。両手を挙げるも電流ほとばしる剣の音を前に全力疾走していく。この時ばかりはミカロが急に怒る気持ちがわからなくもない。


「行こうShine。とにかく服をかわかさないと」


「うん。ウルカはいいの?」


「F.Z.さんが収まるまでは待つしかないさ」


 紫電の声は聞こえてこない。運よく行き止まりのところに来られたが、安全とは程遠いよな。背中を合わせ、セインがボタンを外していく。


「見ないでよ」


「見てないよ。数歩先しか姿がわからないからね」


「エッチ」


「だから見てないって」


 Shineが熱を放つ。光はいろいろと便利だなぁ。今度紅茶の水でも温めてもらおうかな。白シャツからいきなり黒色が現れたことは言わないでおこう。


「シオン君はどうするの?」


「悪いけどウルカさんを助けに行くよ。F.Z.さんは冗談が得意だといいけど」


「わかった。私は一人で頑張ってみるよ。出会った時は戦うからね」


「ああ。それじゃ離れるよ」


「うん」


 バイクで走行をすれば嫌でも誰かと遭遇できそうだが、さすがにそんな無理はできないか。周囲が見えるわけでもない。

Twitter「@misyero1」で更新情報を確認できます。

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