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イネアさんの異世界冒険記  作者: 秋月イネア
2、テッドの章
6/9

3 やっとスタートラインだ

一話あたり少ないと思ったので詰めました。2話~3話が新しい話になります。

 あれから、街道整備をはじめとした肉体労働をいっぱいやった。

 伐採のお手伝い、貯水池作り、田畑拡張のための荒野均し、家屋建築の手伝い、外堀りの造営等などである。

 

 朝、出発前に準備運動と称して体操及び走り込みも始まった。

 夕方、食事前にクールダウンだとか言って、柔軟体操をさせられた。

 

 

 そして2年経過した。してしまった。

 これで僕も15歳となり、成人というわけだ。

「それで、次の仕事は何をすればいい?」

「暫くはお休みよ」

 いつもの腹黒杖術士が言ってくる。なにかあるのかと身構えてしまう。

 

「まずは、武器屋と防具屋巡りね。」

「え?」

 なんで武器屋とか行くんだろう。


「何を呆けているのやら。」

 何のために武器屋に行くのだろうか。

「体の基礎体力はついたんだから、次は実戦に決まってるでしょう!」

 最初、この女が何を言ってるかわからなかった。

 だがそれもすぐに思い出す。

 

 そうだ!!冒険者になるんだった!

 つまり、やっとスタートラインに来たということか。

 

「計50万リーン貯蓄おめでとう。」

 中金貨1枚である。大金だ。

 

「やっと、スタートラインなのかぁ・・・」

「という訳で、武器屋へ行くわよ」

 遂に念願がかなう。僕は意気揚々と武器屋へ向かった。

 

 

 

 

「こんにちはー」

「へいいらっしゃい」

 武器屋の店員が入ってきた僕らを一瞥して挨拶する。

 武器屋といっても武器だけを売っているわけではない。

 武器のほかに農具とか、雑貨とかも取り扱っている。

 

「このくらいの長さがいいかな?」

 かの魔法使い殿は、キョロ見する僕を尻目に目当てのブツを物色し始めた。

「ねえねえ、こっちの剣のほうがよくない?格好良いし持ちやすい。」

 なんとなく、槍ではなく剣にするように誘導してみる。

 やっぱりなんか、剣のほうが格好良いよね!

 

「ハァ…ド素人が剣なんて振っても、ゴブリン一匹倒せるわけないでしょ、いいから槍にしときなさい。」

 僕は一蹴されて涙目になる。

 やっぱり槍がいいのかなぁ。

 

「狭いところでは剣を使うんだけど、こっちの短い方にしてね。」

 ショートソードだ~~。

 なんか長剣と違ってダサい気がするんだよね。

「だったらこっちの剣の方が」

「長すぎるって言ってるでしょう。」

 御無体すぎる。

 結局僕の意見はあんまり通らず、僕が槍の中から選んだものと、ショートソードから選んだものに決定した。



「これ、会計したいんですけど」

「おや、ありがとうございます。槍が17万リーンに、ショートソードが9万リーンですかね。」

「いや、槍はわかるけどこのショートソードに9万は無いでしょう。」

「そう仰られましてもね。こうして値が付いている以上はこのお値段でないと。」

「5万リーンくらいじゃない?質的に」

「いえ、私は雇われ店員でして、お値引き交渉は出来ないことになっていまして。」

「4万?」

「ですから、」

「ほう、3万で良いという事ですか?」

「ですからお値引きは出来ないと、工房の方と契約でそうなっておりますので。」

「キックバックが入ってくるのも契約だものね。」

 なんか良くわからない交渉を始めた。

 この辺の商店では値引きしない変わりにふっかけないとかいう法令ができてて、公正価格で売りましょうっていうのが標語になっていた筈だ。

 故に値引き交渉も起こらない。

 

 関わらないように、ロングソードでも眺めていよう。

 

 ~2時間経過~

「ふぅ、いい買い物になった。」

「棒しか持ってない奴に負けた…」

 なにやら勝負が終わったらしい。

 

「あ、それでお幾らお払いすればいいのですか?」

 元値でも十分にやっていけたが、値引きは彼女の趣味なのだろう。

 そう思うことにした。

「10万5690リーンよ」

 なっ!!!!!

 

 ちょっと、どうやったら半額以下になるんだよってば!

 

 僕は慣れに慣れた平静な顔で驚きを隠し、代金を支払った。

 

 槍と小剣と棒と小木剣を手に入れた。

 あれ?増えてる?

 

「刃が欠けた時のメンテナンスとかでまたいらしてくださーい。」

 店番のおっちゃんがの顔が、もう買いに来るなと言っていた。

 

 しかし40万近く残ってるぞ、すごいな値引き。

 

「さーて、次は防具屋ね!」

 彼女に任せておけばなんとかなるだろう。

 

 

 

 結局、皮鎧を9万で買った。

 

 

 

 

 さて、皮鎧着て槍装備して門の外に出たわけだが。

「えっと、これからどうするの?」

「いきなり戦えって言っても、やれるわけないから。」

 うん、当然だね。

 ゴブリンと一対一でも勝てる気がしないし。

 

「まず基本的な槍の取り回しから始めようか。」

「あ、その前に、どうして槍にしたの?素人ならとっつきやすいって話だったけど。」

 話の腰を折ったようで少しだけ不機嫌になる黒ローブ少女。

 

「説明しよう…」

 彼女は、僕の槍を手に取り、穂先を僕の方に向け構えた。

 

「これを持つ敵に攻撃しようと思ったら、攻撃するには少し体まで遠いなって思わない?」

 確かに、目の前の穂先は邪魔だ。

「逆にコレは?」

 槍を置いてショートソードを持ち替えて、目の前に構える。

「これはどう?」

 槍に比べて近くなった気がする。

 

「どっちが先制攻撃できるか分かるわよね?」

「そりゃあ、長いほうが先にできる。」

 でも潜り込まれたら終りだとも聞いたことがある。


「ド素人がゴブリンと戦うとき、先制攻撃できるに越したことはないのよ。」

 なるほど、そういうお話もあるのか。


「逆に相手からすると、潜り込まなければならない訳だから、その分だけ不利よね。」

 なるほど、有利な点を先に貰おうということか。


「そんな訳で基本的な取り回しね。」

 イネアちゃんは魔法使いなのに槍も扱える。多彩なんだなと思う反面、回復魔法しか見たこと無いなぁと思っていた。

 

「以上が槍の基本的な取り回しね。小剣は槍がなんとかなってからにしましょう。」

 いきなり複数できないものね。


「ふーむ。基本的なかぁ。応用技もあるの?」

「あるけど詳しくない。それに基本で十分だし基本もなってないのに応用とか鼻で笑っちゃうけど?」

 笑われる所だった。

 しかし、基本的なものなら、そう難しい事でも無いと思うんだがなぁ。

 

「じゃ、とりあえず突き1000回。漫然とやるのではなくて、ちゃんと殺せる威力じゃないとカウントしないわよ。」

 1000!?

 難しくはない。でもその回数は難しいだろう!?

 

「つべこべ言わずにやる!」

 くっそ、やっぱりこいつ悪魔だ!黒ローブの悪魔だ!!

 

 

 

 

 結局、総計5000回以上突きをやって開放される。

 既に夕方である。

 威力に達しない突きはカウントしてもらえなかったからだ。マジでやるんだもんな。

 おかげで後半はなんとかなったが、腕が痛くて手が上がらない。

 

「腕が上がらない?でもちゃんと落とさずにやれたわね、よくやったわ。」

 一緒に5000回以上突きをやってましたが、そちらは汗もかかずにやっていましたね。

 同じように棒を槍として、突きをやっていた。一緒の回数だったから同じく5000回以上だ。

 

「次はって言うんでしょう?」

 いやあ、もうだいたいパターンは解ってるんだ。

 まあ、腕が限界でもう落としそうではある。

 もう夕方だし。

 

「次は払い、と言いたいところだけど。」

 ん?他になにがあるのかな?

「お客さんだからね、まあ、一対一でやってみなさいな。」

 え、なに?お客さん?

 

 この意地悪な黒ローブが見ている方に視線を向けると、棍棒を装備したゴブリンが6体やってくる。

 え、まさか、

 

「五体程間引いてあげるね。」

 僕の方に一体ほど押し付けると、残り五体を瞬殺する。ぜんぶ突きで、だ。

 

 う、うおおおおお!

 く、来る!!!

 

 えっと、よし、さっきまでやってた突きがあるじゃないか。

 僕はバクバクと高鳴る心臓を放置して、ゴブリンの脳天をめがけて―――

 今だ!

 射程も十分、さっきの殺す気的な威力も十分だ

 やれる!!

 

「ギ!」

 ゴブリンは僕の突きを持っていた盾でいなすと、棍棒を振りかぶる。

 なにーーーーーーー!

「う、うわああああ」

 振り下ろされる棍棒を転がる事で避ける。

 そんな隙だらけの状況を見逃すゴブリンではないのだろう。

 更なる一撃を加えるべく、棍棒を振り上げる。

 

 槍は手放してはいないが、攻撃するには、一旦引かなければならない。

 

 もう一撃を後ろに飛ぶように逃れ、再び槍を構える。

 構え終わったとしても、気にせずゴブリンは来る。

 

「くそ!」

 僕は突きを出そうとして、さっきいなされた記憶が邪魔をして突かずに一歩退く。

 ピクッと動いた槍にゴブリンが反応したのか、突こうとしたソレを盾で防ごうとした。

 

 あれ、今胴体が隙なんじゃ。

 

 顔の前に盾を構えているので見え無いのかもしれない思い、僕はゴブリンの胴体に向けて槍で突く。

 今度こそ!!

 

 一歩退いたため、威力が減っている。

 だがそれでもゴブリンに一撃加えることには成功した。

「よし」

 だがそれもそこまで、盾を構えていた腕で槍を握ると、ゴブリンが棍棒を振りかぶる。

 

 逃げ…!

 槍を引こうとしてもゴブリンに押さえられてて動かず、そのため体が硬直して逃げることもできず。

 

 あ、あれ?

 

 僕は顔に棍棒を食らって意識が暗転した。



「弱いなぁ君は」

 知ってる。

 というか武器にも慣れてない奴に何をさせるんだ。

 

 死んでいる、と言うことはないと思っていたので、死の恐怖は無かった。

 痛かったけど。

 

 でも侮りは大きかったと言ってもいい。

 超強いとは思っているが、こんな小さな女の子が平然と瞬殺するような雑魚に、まさか苦戦することもないだろうと思っていたのだ。

 ゴブリンをかなりの雑魚だと思っていた。

 

 でも実際は、その雑魚より僕はよっぽど弱い。

 

 

 確かに先制攻撃できた。

 ピクッと反応させて盾を構えさせたら胴体も隙だらけになったので、先に一撃は加えられた。

 でも負けたのは僕だった。

 

 うーん。なぜ負けたんだろう。

「まあ、暫くは基礎訓練ねぇ。」

 面目ない話だが、武器の扱いもやはり必要になるんだろうな。

「このあたりの街道は、よくゴブリンが出るし、その他の魔物もそれなりに出るから、まあ暫くはここらで訓練ね。」

 動きとしては、負けている要素はなかった筈だ。

 やはり槍を押さえられたのが原因か。

 

「聞いてるの!?」

「あ、は、ハイ!」

 少し自分の世界に入り込んでいたようだ。

 

 

「ちなみに、惜しかったなーなんて思っているなら、思い上がりだから捨てなさい。」

 見ぬかれていたようだ。


「いや、なんか悔しくて。」

「突きを1000回練習した程度でゴブリンが倒せるわけ無いでしょう?」

 はい、そうでしたね。

 

 でも、鍛えていくのは、随分と時間のかかる話になるのだなぁと漠然と思ったのだ。

 

「あと、突きは引くまでが突きだからね。当たったからって引かなければ、さっきみたいになるよ。」

「ハイ。」

 まだ始めて一日目だ。がんばろう。

 

 

「さて、ここ二年間、宿には泊まったけどずっと外で仕事して野宿してたわよね。」

「ええまあ」

 

「というわけで、ここが私の仮住まいです。」

 そこには一軒家があった。

 少し古びた家だが、庭付きのしっかりした家だ。

 

 庭は草がボーボーで出れたものではないが。

 

「明日から依頼は受けないで、基本的な戦闘訓練だからここで寝泊まりしていいわ。」

 買ったのだろうか。

「ありがとうございます。」

 お昼も食べてないからお腹すいた。ごはん食べたい。

 

 その家には個室が5つあり、リビングとキッチンは別についていた。

 お風呂がないのが欠点だと言っていたが、そんな貴族的なものがこんな家にあるわけがないだろうに。

 

 ご飯はパンにスープ。それにサラダと称した草。

 ドレッシングと称したもので生の葉っぱを食べさせられたが、まあ贅沢は言えないのでそのまま食べた。

 そして与えられた部屋に着くと、ベッドに倒れこみ、寝た。

 

 

 

 気が付くと翌朝になっていた。

 腕が筋肉痛で痛い。

 1000回振り回すより、ゴブリン倒しまくった方が経験値になっていいのだろうけど、その一匹目にも勝てない。

 まずは槍に慣れるべきなのだろう。

 

 確かに槍は、先制攻撃になる。

 だがもしかすると、イネアちゃんから見て、僕には槍の才能があるのかもしれない。

 朝食後にでも聞いてみよう。

 

 

「はァ?才能?無い無い。一切無い。欠片も無いわよ才能。」

「じゃあ剣のほうが…」

「剣じゃもっと訓練時間かかるのよ、馬鹿じゃないの。」

 

 身も蓋もなかった。

「じゃあ剣の」

「無い。」

 剣の才能も無いらしい。

 

 ご飯が終わると、先日の場所に行き、突きのおさらいと称して100回やった。

 その後、払い。そして斬りつけを1000回づつ練習した。

 うん、5000回以上づつだったね。なんか夜になってた。

 

 

 外で練習していると雑多な魔物がやってくる。ゴブリンが多いが、狼や一角兎、クロウラー、ビックフライなどだ。

 

 合間合間に一匹づつ相手させられるが、いまのことろ全敗である。

 兎にすら負けた時は、腹を抱えて笑われたが。

 

 そして突きも払いも斬りも、各5千回に増える。

 うん、1000程度じゃまったくなんともならないんだ。5千回繰り返してなんとかなるんだろう。

 合計15000回。一回あたり2秒としても8時間20分くらいかかる。朝8時からやってう休みなしで16時20分。お昼ごはんとか休憩入れると18時になる。

 素振りの訓練だけで一日が終わる。

 もっと頑張らねば。

 

 

 

 そんなこんなを繰り返すこと三日目。

 

 次もゴブリンが相手だ。どっから湧いてくるんだろうね。

 

 ゴブリンは、相手も槍な時があったが、今回は剣を持っていた。

 慎重にまずは相手の足を払い、行動を制限する。

 近づけないようにしつつ転ばせるわけだ。

 その作戦は上手くいった。

 転んだら後はもう突いて突いて突きまくるのみ。

 

 はぁー槍素晴らしい!

 一方的に攻撃できるなんて!

 

 ゴブリンは倒れたたまま動かなくなっていた。

 経験値を手に入れた!

 

 

「おめでとう、初勝利だね。」

 なんとなく、嬉しかった。

「次は魔石の採り方ね。」

 そう言うと、手慣れた手つきで、自分が倒したゴブリンから魔石を抜き取っていく。

 僕もナイフを持って、心臓付近にある魔石を…

 苦労してとった。

 うん、最初だからね、大変だった。

 

 多分だけど、剣だったら今でも苦戦していたんだろうな。うんうん。

 槍で良かったーと僕は単純に喜んだ。

 

 もちろん、僕の訓練は増えました。

 今度は各2万回づつです。

 まあ、暇だからやれますけどね!!

 

 次もゴブリン相手だったら余裕だぜ!

 

 

 

 そんな事を考えていた僕は、色々浅はかだった。

 

「次のゴブリンはこいつです、がんばって!」

 黒ローブの悪魔が、紹介してくれる次なる敵…それは!?

 

 あ、なんか飛んできた

 

 すとんっと、僕のお腹に矢が吸い込まれる様に命中する。

「うがーーー」

 いた、いてーーーーーーー

 

 鎧がなかったら、もっと深く刺さってた。

 

 痛がって相手を見てなかったので、二射目は防いでくれた。

「とりあえず、そのままでいいから、やって来い!」

 お腹に矢が生えたまま、僕は遠くから射るゴブリンに向き合う。

 

 矢を放ったのが見えたので、横に飛び退く。

 速度的に避けれる。

 僕は避けれると思い走りだす。

 

 避けれるぞ!

 ゴブリンが弓を番え、引いいて…放った!避け!!!れない!!

 飛び退いたが肩に刺さる。

 痛すぎる!!

 

 おのれーーー!

 右肩だったので、右手に力が入りづらいが、槍の射程に入ったのでゴブリンを突く。

 

 盾など持っていないようなのでその辺は楽に倒せた。

 

 でも二発被弾。

 痛い。

 

「どうだね、ゴブリンハンター君。」

 悔しいが何も言えない。


「あ!!!そうだそうだ、いやそうじゃない。」

「ん?」

 そうだよ、聞く相手は此処に居た!


「ゴブリンの持つ、剣とか槍とか弓への対処法を教えてくれてもいいでしょうか!」

 そうだよ、最初から聞けばよかった。

 そうしたらこんな苦労もないのに。

 

「んーーー」

 何か思い悩むように上を向いて考えている。

 やはり教育方針的な何かで放置していたのだろうか。

 いやそれだったら思い知ったよ、助けておくれよ。

 

「私ね、戦い苦手なのよ。」

 なーーーーーーにを言ってるんだこの撲殺女は!!!

 

「そんな訳あるかーーーー!」

 僕は咄嗟に否定する。

「いや、苦手なのよホントホント」

「戦いが苦手ならなんであんなにゴブリンを狩れるんだよ!」

 あんなに強くて、戦いが苦手とかわけわからない。

「あ、うん。私ね、【蹂躙】するのは得意でも、同じくらいの強さの相手と競うような感じの【戦い】が苦手なのよ。」

 あーー。あれ?

 どういう事?

 苦戦した事がないって事?

「え、じゃあ今までのって戦いじゃないの?」

「ええ、紛うことなき蹂躙ね。狩りと言ってもいいし、虐殺と呼んでもいい。私が一方的に攻撃して倒してるだけだから。」

 おぉ。こいつは強すぎの弊害か。

 

「今まで【戦い】をした経験は?」

 もしかしたら無いのかもしれない。

 

「そりゃあ、あるわよ。」

 ああ良かった。あるんだ。

「まあ、私が戦える相手なんて、そう数が居ないけどね。」

「そんなにホイホイ居てたまるか。」

 あーで、それで戦いが苦手だとどうなるんだ?


「どうして、弓とか槍とか剣相手の対応方法は教えられないので?」

 まあどうせ、ぶっ飛んだ内容なんだろう。

「剣、とりあえずぶん殴っとけば勝てる。槍、邪魔な穂先なんて気にせずとりあえず殴る。弓、矢とか飛んでくるけど止まってるようなもんだし、とりあえず近づいて殴る。」

 えー

 なんだそれ。

「というのが私の中の対応方法なわけですよ。」

 ダイナミック過ぎる対応方法に、慣れたはずの僕も唖然とする。


「そういうわけで、戦いの中でどうにか頑張って見つけてね!」

 そう言うと矢の返しを気にせずおもいっきり、ソレを引き抜くと回復魔法で治してくれる。

 って

「ギャーーー―」

 痛いよ!!!!

 

「回復なら任せろー、バリバリー」

 なんかノリノリの黒ローブの悪魔を余所に、僕は開き直って訓練を続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 それから一週間

 ゴブリンにも安定して勝ち続け、狼にも勝てるようになった。

 経験値も順調に入ってくる。

 クロウラーは初期の頃から遠くから突き刺すだけでいい、良い練習相手だった。経験値も美味しい。

 ビックフライは素早いが、ハネをどうにかできれば後は楽だった。

 そういうわけで、町のそばにいる魔物には一対一で普通に勝てるようになった。

 

 当然村人Lvも10になり、教会で戦士(槍術士の前職)にチェンジする。

 これで戦士を20にあげれば槍術士を上げれるようになる。

 基礎ステータスも大幅に上がった。

 

テッド

職業:戦士Lv1 体力:12 敏捷:11 知力:8 生命力:12 魔力:0

特性:痛覚耐久Lv1

技能:槍Lv3 羊飼いLv5 鉈Lv2

 

 13歳の時と比べるまでもないがかなり強くなったと思う。

 

 でも訓練すら終わってない僕は、まだ駆け出しすら名乗れないな。

 スタートラインを超えて、やっと訓練期間に来たのだ。焦らず行こう。

 

「ふむ、練習はこのまま一ヶ月はやろう。次の月から本格的に活動開始ね。」

 ゴブリンを倒せるようになって、順調に戦いに慣れたからだろう。

 来月には本格始動か。楽しみだな。

 


 

 

 

 

 それから一ヶ月、必死に練習した。

 もちろん、ゴブリン相手の相手もした。

 

 途中から二対一にされたりする。慣れると三体一にされた。それくらいが僕のここ一ヶ月の成果だった。

 その後言われた

 曰く、「今後は魔法使いの立ち回りで活動するからそのつもりで。」

 

 いや確かに、回復魔法しか使ってなかったけどさ。つまり、もう、杖でゴブリンを撲殺しないという事らしい。

 

「パーティープレイを心がけましょう。」

 僕が前衛で、撲殺魔、ちがった。イネアちゃんが後衛という事ですね。

 

 やっと冒険らしい冒険が始まるのかぁ。

 

 

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