交流
「ねえねえ、どこから来たの?」
「その鎧は何でできてるの?」
「お腹すいた? 何か食べる?」
と子供が矢継早に話しかけているが、銀色の騎士は声を発するどころか身動き一つしなかった。
「うーん」
「言葉がわからないのかなぁ」
などと子供たちはそれぞれに結論を出して騎士で遊び始めた。
大人たちはその様子をそれぞれの仕事をしながら見守っていた。
騎士は怒るわけでもなく、積極的に構うこともなく、子供たちに遊びに付き合っているようだった。
一人の子供が騎士の背中を登り始めた。
表面がすべるらしく、足や手を小刻みに動かして、頂上である頭を目指している。
頭までもう少しのところで子供の体がすっと落ちる。
「あ」
次の瞬間、子供は騎士の腕に抱かれていた。
彼が動いたと身にまとっていた青色のマントが靡いているからわかるが、それがなければ動いたのかわからなかっただろう。
それぐらいの動きだった。
やや時間をあけてから子供は騎士の腕から降りて、
「ごめんなさいっ」
と頭を下げた。
騎士はそれをしばらく見てから、子供に背を向けて座りなおし、肩を指さす。
「肩車?」
騎士は応じないが子供はそれを肯定だととらえたらしい。
ゆっくりと子供は騎士の肩に乗った。
子供が乗ったのを確認すると騎士はゆっくりと立ち上がった。
肩の上の子供が歓喜の声をあげる。
騎士は広場をまわりがよく見えるように静かに、ゆっくりと歩いた。
一周が終わると子供を下した。
別の子供が乗せて、というと騎士は先と同じように子供を乗せて歩いた。
希望する子供たち全員を肩車し終わると騎士は再び、マントを羽織り、片膝をついた状態で動きを止めた。
今日、異国から来た騎士が行ったのは子供を肩車にして広場を回ることだけだった。
魔獣を両断した寡黙な騎士という噂に優しいと加わった日でもあった。