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異世界に飛ばされたロボット  作者: フィーネ・ラグサズ
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乱入

彼は突然の状況の変化に困惑していた。

仲間とのデータリンクは途切れ、飛ばしていたはずのドローンとのリンクも切れてしまった。

頼れるのは機体に内蔵されたセンサーだけだった。

ゆっくりと体を動かし周囲を確認する。

石畳の道は今まで歩いたことがなかった。

彼のカメラが灰色の建築物をとらえた。

形状は古代の防御建築物の城に近い。

しかし、記録の上では基地付近に城は存在しない。

それは石畳も同様だった。

状況が不明の場合は情報を収集せよ、と彼の頭脳には刻まれていた。

敵と遭遇した場合は倒せ、とも。

彼は城に向けて歩き出した。

城というには大きく、街がひとつ入っているようだった。

改めて内蔵のデータベースを検索し、かつて人類が作った城塞都市に近いと結論づけた。

味方であれば回収班が、敵なら迎撃があるはずだが何もない。

彼は足を早めた。

大きな門が見えた。

門の左右には武器を持った兵士が立っている。

武器は槍で兵士が身にまとっているのは鎧だ。

銃器類ではない。

今まで見たことの無いタイプの人間に彼は敵か味方かの判断を保留にした。

少なくとも彼らの装備では自分の機能を低下させることはできない、と判断した。

彼が近づくと、兵士たちが音を発した。

声だとわかるが意味まではわからない。

データベースに記録されているあらゆる言語と異なる。

状況から身分を証明せよ、と推測はできた。

強行突破も可能だが敵を増やすのは得策ではない。

まして、ここは未知の土地だ。

上から別の兵士の声が聞こえた。

続いて金属をぶつける音が3回続いた。

彼の動きを止めていた兵士たちはチェーンを回し扉を閉め始めた。

警報、防御の動作から推測するに何か危機が迫りつつあると彼は理解した。

背部に搭載していたドローンを1機、打ち上げる。

ドローンとの通信はクリアだ。

森林地帯をゆるやかに蛇行しながら石畳の道が続いているのが見える。

その道を15mほどの獣が走っていた。

それは時速40kmの速度でこちらに接近しつつあった。

ボディに一切の異常はなく、戦闘可能であると確認し、彼は威力偵察を行うことにした。

彼の様子に兵士たちが何かいっているが理解はできない。

獣の姿を彼のカメラがとらえた。

ライオンを巨大化したような形であったが、背中には水晶の柱が見える。

減速する様子もなく、こちらに突撃してくる。

敵味方識別をエネミーへ。

ジェネレータ出力最大、全武装をアクティブに。

右膝をつき、右腕に搭載されているレールガンを展開し、射撃した。

音速を超えた弾丸が獣の頭部に向けて――弾かれた。

続けて撃ちこむが同様に弾かれる。

射撃のタイミングで背部の水晶状の物体が光ったことから、バリアがあると彼は仮定した。

バリアに対し有効的なのは近接戦闘だ。

彼はレールガンを畳み、獣に向けて走りだした。

獣はそれでも速度を緩めない。

獣の表面には古傷が認められた。

戦い慣れしていると彼は判断してからさらに速度をあげ、正面から激突した。

噛みくだこうと開かれた口を両手でおさえ、両足はアンカーを打ち込み減速を試みる。

全身の熱が増え、冷却機構が全開になり、足元では石畳がアンカーに削られ飛沫をあげる。

その間、何度も獣は彼を噛み砕こうとしたが、それはできなかった。

獣がそれを出来ないと理解したのか、上半身を振って彼を振り払った。

彼の体は空に舞い、雷が彼の体にあたった。

保護機構が彼自身を守ったものの、レールガンが破損した。

彼はプロトコルに従い手動でレールガンを取り外す。

再び水晶が発光し、電流が彼を襲った。

身体能力そのものは脅威ではないが、あの水晶は高脅威だ。

これ以上の偵察は危険だと彼は判断した。

再び水晶が光ったその瞬間、彼は左手に持っていたレールガンを獣に向けて投げた。

稲妻がレールガンに命中し、砲身が爆発した。

が、彼に稲妻は届かなかった。

レールガンの破片の横をすり抜けて彼は水晶に足を向け、アンカーを展開し、背部のイオンスラスターを使い加速する。

アンカーが快音とともに水晶を砕いた。

悲鳴に似た咆哮をあげる獣に彼は両腕に内蔵された高振動ブレードで追撃をかける。

狙うは肋の間だ。

丈夫な毛皮と分厚い皮下脂肪を貫き、ブレードの先が心臓に届いた。

大量の血が吹き出し、彼の体を濡らすが、彼は肋骨にあわせて腕を開き、獣を両断した。

咆哮が止む。

獣の瞳孔が開いているか確認する。

完全に開いており、体温も下がっていることから機能を停止していると彼は判断し、戦闘モードを解除した。

戻ってきたドローンを右手に載せ、背部に装着しようとしたところで、門番をしていた兵士たちが走ってきた。

兵士たちは獣の死骸と彼を眺めてから、死骸に近づき、死んでいるこを確認して大きな声をあげた。

歓喜の声だと彼は判断した。

その様子を彼が観察していると兵士の一人が液体の入った桶を持ってやってきた。

水だ。

何か行った後、桶の水を彼に浴びせた

血が洗い流されていく。

彼には理解できなかったが、兵士たちは口々に英雄だと素晴らしい働きだと褒めていた。

街も討伐部隊を編成し、討伐を目指していたが、素早い動きと魔法に翻弄されていたのだ。

それを一人で倒した彼が街を救った異国の騎士として街中に知られるまでそう時間はかからなかった。

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