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14卒、無い内定。――ぼっちの就活日記  作者: 五条ダン
第一章 新たなる選択肢
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新卒者就職応援プロジェクト、説明会。

 梅田某所ビルで、新卒者就職応援プロジェクトの説明会が開かれた。


『服装自由』の事前通知にも関わらず、集まった学生はみな漆黒のリクルートスーツに包まれていた。などと客観的に描写しているがボク自身もリクルートスーツ姿である。こんなことならコスプレをしてこれば良かったなと思いつつも、生真面目に30分前には会場に着いてしまった。


 ボクたち就活生は、ビル1階フロアにある雑談?ルームのような場所で待機させられた。幾何学的に配列された自動販売機と、円形のテーブルが7台。円卓にはそれぞれ4脚の椅子が備えられており、集まった学生は各々の好きな場所へと座った。

 着席したテーブルにはボクの他には女子学生が3人座り「こんにちは」と挨拶したきり皆無言になった。向かい合った女性は視線をテーブルの上に硬く縛りつけ、気まずそうにしていた。誰一人、視線を合わそうとせず、互いの顔を見ようとはしなかった。


 説明会開始までの待ち時間、長い沈黙。

 何なのだこの空気は……。


 小さな円卓に寄り添うようにして、計15人の就活生がバラバラの方向を見つめる。観測したところ、男性は4人、女性は11人だった。さておき、誰もしゃべらない。


 会話がない、言葉がない、人間がいない。

 ただただ不気味な空間が、ねっとりとした暖房の空気に流されて漂うだけであった。



『君たち! そんなだから内定が取れないのだろうよ!! もっと周りに目を向けて、コミュニケーションを取ろうよ!!! ボクたちは仲間じゃないか!!!!』

 ボクは心のなかで叫んだ。



 しかしボクは、人間と話さない日々があまりにも長すぎたので、誰かに声をかける勇気がこれっぽっちもなかった。臆病者だ。作家を目指す人間として、せっかくの機会を得て、まともに取材もできないなんて。


 自己嫌悪で鬱々としていたらやがて時間が来て、ボクらは上階のフロアへと移動することになった。ほっとした溜息があちこちから漏れる。


 そして、およそ2時間半ほどで《説明会》と《キャリアカウンセリング》と《職場見学の設定》が終わり、ボクは大阪を後にした。終わり。



 とするのも素っ気無いのでもう少し詳しく。

 ボクはとある清掃会社へ実習希望を出したのだが、キャリアカウンセラーの人はのんびりとした声で「ああ、ここはアルバイト(の従業員)がほとんどだねぇ……」と言った。


 実習時間は1日4時間を希望していたのだが「いやぁ……4時間じゃなかなか(企業が)受け入れてくれんよ」と言われたので8時間に変更することとなった。


 説明会の内容に関して特記事項はこのくらいだが、予想していたとおり《新卒者就職応援プロジェクト》の説明会は、建前と本音が交差する感じのところである。



 それでも、何もしないよりかはマシなのだろう。



 帰り道、ビジネスシューズの靴底がもげた。


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