ゴーストライターという生き方
4月も半ばとなり、ツイッターでは新入社員ネタの呟きが増えてきた。ボクはフォロワーさんたちの社畜ツイートを冷凍イカの瞳で眺めている。
14卒無い内定、友達もいないボクにはしかし、仕事があった。
ゴーストライターである。
ゴーストライターの仕事はいくらでもあった。
ボクは今までアフィリエイト事業法人の下でバイトしていたこともあって、商品紹介記事とSEO対策用のライティングは手慣れたものだった。クラウドソーシングと呼ばれるネット上での業務委託求人サービスを利用すれば、ライターを必要としているクライアントさんはいくらでも見つかった。
手数料等を差し引けば、1文字単価は0.1円から0.2円ほどである。
だから、1日に2万文字程度書けば1ヶ月で10万円くらいの収入にはなる。
1日2万文字など不可能と思われるかもしれないが、実際に慣れてみれば大したことがないと分かるだろう。アフィリエイト用の記事はそれほどテンプレ化されているのだ。
「小説家になろう」に例えれば、1日中異世界ハーレムを書いていたとしてもネタが尽きたりキーボードを打つ手が止まったりしないのと同じである。
言葉に囚われた者の因果なのか、ボクは当面、フリーランスとしてゴーストライターの仕事を続けることになりそうだ。
その一方で、ライター業務と並列してアフィリエイトサイトの作成も行っていた。
もっともアフィリエイトはそう簡単に収益の上がるビジネスではない。少なくともまとまった報酬が振り込まれるようになるのは1年以上先だ。
(ゆえに、池田に提出した事業報告書には、初年度のアフィ収益目標を0円にすると書いた。検索エンジンからサイトが評価されるためには相応の時間の積み重ねが必要なのだ)
これで本当に良かったのだろうかという疑問は常に付きまとう。
特にゴーストのバイトをしていた期間は「嘘を付く仕事」への葛藤があった。
そして皮肉なことに、本来ならば「創作をする場」である小説投稿サイトにおいて本当の気持ちを書き綴ることができ、精神的にとても救われた。
現実世界よりも、創作世界の方がはるかに真実らしい想いを伝えられることが不思議だった。
もしも、この文章を読んでくれている15卒、16卒、あるいは次世代の就活生の人たちがいるのなら「就職活動に失敗したとしても何とか生きてゆく道はある、らしい」ということは伝えておきたい。
だからどうか、ぼっちの就職活動がこんな終わり方となってしまっても、絶望しないでほしい。
ナメクジのように日陰を這ってでも、ボクは、生きてゆく。
それがぼっちとしての、無い内定としての、せめてもの抵抗だと思う。
「14卒、無い内定。――ぼっちの就活日記」は次回で最終話である。
連載期間が長くなってしまって、申し訳ない。
ここまで読んでくださったことに心から感謝したい。




