15卒、就活解禁。そして14卒の物語が始まる。
クリスマスに恋人がいないと嘆くサラリーマンがいて、クリスマスなのに内定が無いと天を仰ぎ涙を零す14卒無い内定がいる。もちろん14卒にも恋人はいないのだが、それよりも遥かに内定の無いことの方が深刻なのだ。サンタクロースが内定を運んできてくれたら、ボクはトナカイにだって靴下にだって喜んでなるだろう。
さて、「14卒、無い内定。」はタイトル通り、筆者の無い内定な日々を綴るほのぼの系サスペンスだ。一応、前作「ぼっちの就活日記」の続編である。とはいえ、続きもののストーリーでもなんでもなく、ただの日記のようなものなので、どこから読み始めても大丈夫。
また、前作から応援してくださった読者の方々には、未だに内定が取れずにいるこんな状況となってしまい申し訳なく、頭の上がらない想いだ。小説を書く暇があったら履歴書なりエントリーシートなり書けやーいと突っ込まれる方もおられるだろう。そんな感じで温かく見守ってくだされば筆者としては幸いである。
今年の夏頃から、ボクは新卒応援ハローワークに行って求人を探す生活を続けていた。ハローワークには毎日たくさんの新着求人が来る。その中から自分の将来働く企業を見つけるのは、まるで宝探しのようでワクワクした。館内にはクラシックのBGMが流れており、ゆったりとした雰囲気のなか就活生たちは一時でも心を休めることができた。――それも、過去の話。
今では求人が明らかに減ってきている。周りの就活生たちの目がどんどん闇に沈んでゆく。ハローワークの職員さんの表情が心なしか憐れみのそれへと変化している。
2013年12月、クリスマスへのカウントダウンの始まる頃、ボクはようやく事態の異常性に気がついた。
もしかして、12月にもなって内定が決まっていないのは、やばいのではないか、と。
不安の渦巻くなか、ボクはツイッターで情報収集を始める。同じ就活生のフォロワーさんからリプライが来ていた。
『15卒の奴が、来る……逃げろ……はやく逃げるんだ……』
不審に思いつつも、2ch掲示板の《就職板》を覗いてみると、
『14卒が15卒の就活生にアドバイスするスレ』
『14卒の奴ら内定先自慢して15卒の奴焦らそうぜwww』
みたいなスレが並んでいて背筋がぞっとした。
久々に大学へ行ってみると、自分以外のゼミ生はみんな内定が決まっていることが判明した。
おいおい、これじゃあボクはまるで、まるで……。
震えが、止まらなかった。
氷の塊のなかに閉じ込められたような閉塞感、漆黒に惑う冷凍イカの瞳、声にならない叫び。
自分だけではない、日本中の14卒無い内定がこのような悲しみの淵にあるのだとすれば、ボクは再び物語を紡がなくてはならない。救済のための自己物語を――。
2013年12月――15卒の就職活動が《解禁》され、無い内定の14卒は社会の闇へと《埋葬》される。
およそ物語は、そんな絶望的な状況から始まる。