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Border Violators  作者: 月見里 翔
第一章 発端
10/14

通信回復

 向こうでリンとランが、トワを囲んでわいわいやっている。


 夕飯が終わり、そろそろ寝ようかという時間。しかし、寝ろと言われた途端にテンションが上がってしまうのが、子供というものらしい。仕事が終わりに近づいているのも手伝って、誰も相手にしてくれないので、かわいそうに、物言わぬ彼が格好の標的になってしまったのだった。


 ほっぺをつまんでみたり、髪をひっぱってみたり、医者の真似をして脈をとってみたり。しまいには、思いっきり飛びついて、仰向きに倒してしまった。

 ところが、どんな体勢で倒そうともすぐに起き上がってきてしまうので、面白がって何度も飛びつく。


「こら!やめないか!」


 見かねたルロイが慌てて止めに入った。デイルが寝込んでいた間に、ルロイはすっかりリンとランの面倒をみることに慣れてしまったようだ。心なしか、動作が前より老け込んだ気がする。

 デイルは一部始終を見ていたが、疲労していて参戦する気になれなかった。さすがに二日も寝込んだ後に山歩きというのは堪えた。あちこちから骨のきしむ音が聞こえてきそうだ。


 なんだかんだでひとまず大人しいランの方を取り押さえたルロイは、彼女をデイルに預け、やっかいなリンの方に取りかかろうと振り向いた。


「いたいっ!」


 その時ふいに、あの澄んだ声で小さく悲鳴があがった。

 デイルが見た時には、リンがぱっとトワから飛びのいているところだった。


「あっ!口をきいたぞ!」


 ルロイが驚いて声をあげた。

 デイルが疲れているのも忘れて駆け寄ると、トワは涙目で頬をさすりながら悪態をついている。


「痛いじゃないか……。なんてことするんだ、まったく」


 リンとランが、こぞって刺激を与え続けたのが良かったのだろうか。ともかく、人間らしい表情が戻ってきている。


「見えてる?」


 トワの前で手をひらひらさせてみる。トワは不思議そうに目の前を行き来する手を目で追い、「見えてるけど……」と言った。大丈夫そうだ。デイルは、ほっと胸をなでおろした。

一体先ほどまでのは何だったのだろう。




「うあああ!いたいいたいいたい!いたあい……!」


 デイルの思考は、リンのつんざくような叫び声と、ふたを蹴破って流れ込んできた恐怖や痛みに突如破られた。


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