ピンチをチャンスに。
「「「百合ノ条家だって?!」」」
「うわっ! 皆ハモってる」
百合ノ条家と言えば、あのグループ『プリンセスローズY・S・S』のリーダー百合ノ条結莉の家だ。しかも来週の日曜日って俺たちが対決する日だし。
「秀少女、来れるかい?」
「駄目だ。秀はいけない。それに凛お前は来るな。良いな絶対にだぞ」
「はぁ? それは無理だね。あ、分かった。知元私達の出番を奪い取る気だな! そうはさせないよ」
「何でそうなるんだよ。ちげーよ!」
「じゃあなんなんだい」
「そ、それは……」
一瞬期待したが知元はいい言い分けが思いつかないようだ。俺も少し考えてみたが思いつかない。それに、凛先輩は何を言っても駄目そうだ。
「何にも言えないではないか」
「五月蠅い。お前らになんかに犯人が捕まえられるものか」
「なんだと!どういう意味だ」
「そのまんまだ。じゃあ、パンはパンでも食べられないパンはなんだ?」
「フライパンだろう」
「馬鹿、消費期限切れのパンに決まってるだろう」
「何だと!?」
また、くだらない争いが始まった。またこれの繰り返しか。未だ言い争ってるし。
そういえばこういうときは、紫亜がいつも何か言って助けてくれるのを思い出して紫亜を見たけど紫亜も困った顔をしていた。ん? 口元が若干笑っている。なんで?
「お兄ちゃん、凛先輩、秀遅刻しちゃうよ。はやく行こう」
「え? 紫亜?」
「ほら、もうあと五分で付かないとだし」
「うんそうだけど」
「走るよ」
と言って紫亜は走り出す。それに続いて俺たちも走り出す。確かに周りにいる生徒は少ないがまだ走らなくても間に合う気がする。紫亜なりの考えが有るのだろうか。横を見ると知元も不思議そうな顔をしている。兄弟でも分からないか。
学校に入って下駄箱の前に行くと紫亜と二人きり状態になった。紫亜はそれを狙っていたように話しかけて来た。
「秀これは使えると思わない?」
「どういうこと?」
「もしかしたら、戦わなくて良くなるかも」
「え?」
「詳しくは放課後の会議で話す」
よくわからないまま紫亜は行ってしまった。




