第六話 背信の愛 その一
ここから第六話が始まります!今回はレヴィン中心の話ですが、アシュリー&エミリアも出てきます。どちらかというと、シリアスです。
ですが、この話と次の第七話は、私が長期休載に陥った元凶の作品でもあります。もう、最低の出来で、とても皆様の前に出すことはできない、と……。その後、一生懸命直したつもりなのですが、やっぱり克服できず、駄目駄目の作品になってしまいました。長い割に、底が浅い、と……。第七話の方はそんなに長くはないのですが、この第六話はほんとに長い!申し訳ない思いでいっぱいなのですが、しばし我慢してお付き合いいただけると嬉しいです!
コツンコツンと靴音が響く。部屋の中央には憔悴した面持ちで顔をうつむける一人の女性が。その女性の周りを、どこか苛立たしげな表情で二人の男性が、このかき消し難い気持ちを紛らわせるかの如く忙しなく歩いている。
「いい加減に口を割ったらどうだ。お前の所業を見たという人がいるんだ」
「私は何もしていません。ごくごく普通のルシェフ国民です。なのにどうしてこんな目に遭わねばならないのか……」
そう、ここは日の光さえ届かない、王宮地下の尋問室だった。階上の華やかさとはかけ離れた陰鬱なこの場所で、今まさしくその部屋が存在する理由である尋問が行われていた。尋問官は二人、苛立たしげに動き回っているこの男性達である。そして尋問を受けている女性は何本かの蝋燭の灯だけがともるこの暗い部屋の中心で、後ろ手に縛られた状態で椅子に座らされていた。
「証拠を……証拠を見せてください……私がその、ルシェフの工作員だという証拠を」
連日の追及に疲れ果てたのだろう、ぐったりとした表情を見せるこの女性。そう、それはエミリアを拉致したあの女性だった。だが、あの時のふてぶてしいともいえる勝気な態度は全く影を消し、変わって力無く肩を落として言葉を漏らす、いじらしい姿がそこにあった。それは全く別人といってもいい程のものであり……。
「私の名はエレーナ=バツィン、ルシェフ在住の画家です。絵のモチーフを探してこの国へきたと、何度説明したら分かるんですか! 泊まっていたのは街の森ホテル、入国許可証もちゃんと揃っているではありませんか、何か不備でもあるのですか!」
真摯な眼差しでそう訴える自称エレーナ。そして、その言葉が出るたび、返答に困り、口をつぐんでしまう尋問官達なのであって……。
そう、確かにそのホテルに、エレーナ=バツィンという女性が宿泊していたということは、後の調べで分かっている。入国許可証も押収して本人ということを確かめている。街のスケッチが何枚もホテルから押収されていることから、絵描きということも嘘ではないと見ている。だが……本当にそう言う人物がルシェフに存在するかどうかは、ルシェフに問い合わせてみなければ分からないのだ。この女性が本当にルシェフの手の者だとすれば、信頼性のある答えが返ってくるとは思えないし、そうなると入国許可証だって、精巧に作られた偽物と考えられないことも無いのだ。
尋問は疑惑を残したまま袋小路にはまり、事態は進展をみせなかった。そう、女性の言葉を信じれば王子の言葉を疑うことになるし、かといってもしこの女性の言葉が真実だとしたら、無実のものを攻め立てていることになる。いや、女性のこの悲壮感あふれる訴えを前にすれば、気持ちが揺らいでしまっても不思議ではないだろう。もうここまでくると良心との戦いといってもよかった。
「君に拉致されたと言っている者がいるんだよ。この証言を否定するというのか?」
「その者こそ一体誰なんです? ここに呼んで、証言させてください!」
そう叫び、哀れを誘うように、涙を浮かべるエレーナ。それを見て、尋問官は更に困惑を深め、思わずため息をついてしまうのであった。
そう、王子は何故か引き渡してきた人物の名を明かさない。これが尋問官たちにとって最も頭の痛い部分なのであった。せめてその人物とやらに話が聞ければもっと事は簡単だろうに、そうすることができないのであるから。揺らいではいけない。だが、そう思いつつも状況がそれを許さず、尋問官たちの気持ちは振り子のようにぐらぐらと揺れてしまうのだった。どうしても埋めることの出来ない大きな穴。そこに決定的な証拠を提示することが出来ない今、どう考えてもこちらの方が不利であった。あとは王宮の者達の調べに掛けるしかない、が……。
「私はきっと嵌められたのです。その引き渡してきたと言う者に。私が拉致したのではなく、向こうが私を拉致したのです。道を歩いていたら突然襲われて、何がなんだか分からない内にこんなことに巻き込まれて……殿下もきっと、その者に騙されているに違いありません! どうか、殿下にそうお伝えください! そして、この私を助けてくださるようお願いを!」
やはり自分達は甘いのだろうか、この言い分を無下に突っぱねることも出来ず、尋問官達は唯困ったように顔を見合わせるばかりなのであった。
短くてすみません!序章、といった感じです!




