第二話 人と人との狭間で その九
エミリアが王宮で、王を前にして絶望に浸っていたその時、あのスズメは漸く目的の場所、森の中の魔法使いの屋敷に到着していた。そして、既に屋敷に辿り着いていた魔法使いに、目の前で起こった出来事をまくし立てるような勢いで報告していた。
勿論内容はエミリアのこと。とらえられ、引きずられ、泣き、喚き、暴れながら、どうやら王宮に連れて行かれるらしいことを。そしてこう頼んだ、彼女を助けて欲しいと。
「ピーピーピッピーピーチク、パーチク。ピピッピーパーチクチク、ピー」
だがそれに魔法使いはうるさそうに顔を歪めて耳を塞ぐと、
「エミリアのおかれている状況はわかった。だが、何故私が助けなければいけない? 本来なら私は部外者だ。私が手を出すいわれは無い。大体、ここより家を選んだのは彼女の方じゃないか。人を置き去りにしておいて、この結果は自業自得というものだ」
「ピーチク、パーチク、ピーピーチクピー!」
「非道、冷血漢? ふん、どうとでも言え」
「ピーチクピーチク、パーチクパーチク、ピッピッピッピーチク、パーチクチク!」
だが、何を言われてもスズメは引く気がないようだった。更に勢いをまして、魔法使いを攻め立てる。その声は連射される銃撃音のようでもあり、あまりのけたたましさに、
「ああ、うるさいな!」
思わす魔法使いはそう吐き出す。だが、やはりスズメはやめなかった。
「ピーピーチクチクパーチクチク。ピーピーピッピピーパーチクチク!」
薄情者、冷酷、鬼畜、不人情、しみったれ、無慈悲、酷薄、唐変木!
「何を言われても、私は動かないぞ!」
「ピーチク、パーチク、ピーピーチク。チクチクパーチクピーチクチク」
無情、冷淡、悪魔、非情、人でなし、人非人、恩知らず……。
「……焼き鳥にされたいか」
「パーチク、ピーピーチクパーチクチクピー!」
犬畜生、極悪、意気地なし、卑怯者、腰抜けの甘党!
「……」
甘党、の言葉に、魔法使いの目には剣呑な色がにじみ出た。その眼差しだけで焼き鳥にしてしまいそうな熱を持ったまま、魔法使いはスズメを引っつかむと……。
短くてスミマセン!次回は長い予定です。