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みのりはパリジャン

「なんやぁ、こはるぅ、舐めてんのかワレー。」



『どうしたどうした。』



「ワテは、みのりやー!」



『…えぇ?

みのりは東京生まれ東京育ちやんか。

どうしたん、たこ焼きで白飯いってもうたんか?』



「いや、方言使った事ないなって。」



『びっくりしたわ。

みのりのそんな姿、おにいやったら卒倒してたわ。

私もオカンが大阪人だから伝染ってるだけで、大阪出身やないんやけどね。


だから本来の関西弁とは違うかもしれんのよ。』



「そうなんだ。

イギリスで育ったから英語喋るんじゃなくて、実家が英語教室だから英語喋れるみたいな?」



『まぁ、そうかな。


でも同じ関西弁教室の息子のおにいは意識して関西弁を封印してん。

普段は関西弁では喋らんねんな、おにいは。』



「なんでやねん。」



『…おぉ、ナイスなんでやねん。


えーとな、ある日急に、もしかしてモテへんのは関西弁のせいなんちゃうかって思ったんやて。


アホちゃうって話やけど、ちょっと分かんねん。

関西弁ってだけでガサツに感じるやん?』



「身近な関西弁話者がそもそもガサツだから偏見とかじゃないんだけど。」



『あ?』



「こはるの事じゃないよ。

父さんの友達にも関西弁の人が居て、その人はちょっとコミュニケーションが雑なんだ。」



『へぇ〜そうなんや。

どんな人なん?』



「どんな人って…もう結構お爺ちゃんだからなぁ。

あ、リンねぇ分かる?

前に会ったことあったよね。」



『あぁ、あの信じられんくらい美人さんの、みのりの親戚やろ?うん、分かるわ。

憧れるわぁ、背ぇ高くてすらっとしてて。

実際モデルかなんかやってんねんやろ?凄いなぁ。


ハーフなんやったっけ。』



「そうなんだよ。

お父さんがセルビア人。」



『はぁ、通りでなぁ。

じゃあリンねぇちゃんのお母さんが関西弁なん?』



「いや、お父さんが関西弁。」



『なんでやねん。

セルビア人なんやろ?

標準語から学べや。』



「そんな事言われても。

始めの教材が関西弁だったんじゃない?

たまに聞くじゃん、お笑いを見て日本語覚えました的な。」



『そのパターンもあるなぁ。

あれ、リンちゃんは呪いの様な関西弁使ってへんよな。

なんでなんやろ。

…やっぱプリンセスな見た目で生まれたら、呪いとかも弾くんやろか。


不公平やわ。』



「あー、単純にリンねぇがお父さんとそこまで一緒に過ごしてないんだと思うよ。

海外で働いてて、リンねぇも僕も、お互いの家に預け、預けられしてたからさ。」



『ええなぁ、羨ましいわ、フィクションの世界やん。

小さい頃からハーフの幼馴染が身近に居たら感覚バグりそうやな。


可愛いの基準が高くなりすぎるわ。


そういえばみのりもクウォーターかなんかやっけ、塩顔極めてる分際で。』



「酷いな。

こはるだって秋っぽくない顔してる癖に。」



『秋っぽい顔ってなんやねん。

そもそもこはるやで?

春じゃなくて?』



「小春って秋のことでしょ?

暖かい、春の様な日差しの秋。」



『…えっ。

私、春生まれだから小春なんやけど…。』



「奇遇だね。

僕も秋生まれだから実りの秋からとってみのりらしいよ。」



『いやいや、それはええやん。

意味と名前がバッチリあってるから。


私の場合はフレンチのお店でピザをメインメニューにしてる様なもんやん。』



「誤差誤差。」



『どこでポジティブ出してんねん。

それも外国の血がなせる技か。』



「そうは言っても8分の1だからね。

お父さんがクウォーター、僕はハーフクウォーター。

だから塩顔って言われても、そうだねとしか思わないよ。


大して混じってないんだから。」



『そうなんか。

えー何処のお国が混じっとんの?

ソルト共和国?』



「アメリカだよ。

どこさソルト共和国って。

塩顔の民族が住んでんの?


ひいじいちゃんがアメリカ人だったのさ。

僕が物心つくころには亡くなっていたけどね。」



『ひいおじいちゃんなら年齢的にしゃあないわなぁ。


でも国際結婚とかドラマチックやねぇ。

どうやって出会ったとか聞いた?

ひいじいちゃんって事は50年以上前かぁ、米軍の軍人さんだったとか?』



「ううん。

たしか…こっちで学びたい事があって来日したんだけど、その教室の娘さんがひいばあちゃんなんだっけかな。」



『うわぁ、ええなぁ、キュンとするわ。

他人の出会いの話とか。


へぇ〜。

何学びに来たん?』



「空手だって。」



『はぁ、格闘技が好きなんや。

その頃にも空手は海渡ってたんやなぁ。

ロマンがロマンスをよんできたって訳か。』



「なんかブルースリーに憧れてたんだって。」



『何やそれ、リーはカンフーやろ?

ジークンドーやん。

空手一つも関係ないやん。』



「知らなかったんだって。

勘違いして、その事実を知った頃にはもう後戻りできないくらい愛してしまっていたんだって、空手も、ひいばあちゃんも。」



『おぉ…!

気持ちのええ話や。

ひいじいちゃん、漢やな、漢字の漢と書いて漢やわ。


ゴリゴリマッチョの空手家外国人と、蝶よ花よと育てられた師範の娘。


昭和空手家浪漫譚やわ。』



「ちょっとイメージのすり合わせが必要だね。

とりあえずひいじいちゃんは、ゴリゴリのマッチョではないんだよ。」



『アメリカ人なのに?

アメリカ人なんて三度の飯より筋肉やろ。

唯一神のキリスト教徒でも、マッスルの神だけは認める民族やろ?』



「そう、アメリカ人なのに細身だったんだ。


あ、スマホにひいじいちゃんの写真あるよ。

ばあちゃんが面白いからって高画質にして保存し続けてるんだよね。」



『自分の親の姿がおもろいってなんやねん。

見してみ。


…いや、これは女の人やろ?

めちゃくちゃ美人さんやな。


あ、これ、ばあちゃんか。

ハーフって事やもんな。

美人やなぁ、リンちゃんに負けず劣らず美人やわ。』



「ううん、これがひいじいちゃん。」



『ズルいわ。

こんなんおもろい。


えぇ?男?空手家?アメリカ人?


何を無駄遣いしとんねん。

神が与えた才能は、人を殴り殴られする為のもんやないやろ絶対。』



「所がこのギャップが上手い事作用して、お弟子さんは絶えなかったんだって。

じいちゃんも言ってたよ。

初対面で空手を教わることになったんだけど、美人過ぎて断れなかった、ドキドキしたって。」



『義理の父親に持つ感想じゃないわ。

ないけど、これは仕方ないなぁ。


みのりパパもめっちゃイケメンやったやろ?

血筋やなぁ。

みのりは満場一致とまではいかないけど、まぁ、可愛い方やし。』



「可愛いはやだなぁ。」



『おにいが可愛い可愛い言うとるわ。』



「だから僕はそれを聞いてどう思えばいいのさ。


まぁ、そんなんでね、生まれが東京で、育ちはパリだから、方言を習得するタイミングなんてなかったんだよ。」



『育ちは!パリ!

言ってみたいセリフ72位やわ、それは!』



「71位は?」



『俺に任せて先に行け、かな。』



「じゃあ結構上位か…。

育ちって言っても3歳までだからね。

それぐらいからはずっとこはると一緒にいるじゃん。」



『そうやなぁ。

じゃあ、フランス語も喋れんのけ?』



「Merci comme toujours, Koharu. Je t'aime.」



『メルカリって言うた?』



「うん。」



『メルカリと、こはるだけ分かったわ。

…私のこと売ろうとしてる?』



「ううん。」



『ならええわ。』


挿絵(By みてみん)

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